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第28話 地下室できちゃいました

 まさか! まさか!

 まさかまさかまさかまさかまさか!

 幸村さんと同棲することになるなんて!


 一度ショップに戻ったカタリナは、ベッドが置いてあるコーナーを引き出し、ベッドの上に飛び乗って足をジタバタしていた。


 興奮。

 大興奮。


 初めて外に足を踏み出したことより、幸村と同じ場所で暮らせることに興奮を禁じえなかった。

 まさかこんなことになるなんて……


 それとカタリナはもう一つ、幸村が答えたことに胸をときめかせていた。

 それは、幸村がそういうつもり(・・・・・・・)だと答えたことだ。


 カタリナは幸村が自分のことを想ってくれている。

 そういうつもりと捉えていた。

 幸村の気持ちはそうなのだが、だが幸村本人はカタリナに妙な形で伝わっていることに気づいていない。

 

 しかし、どんな形にしろカタリナに幸村の気持ちは伝わってしまっている。

 そのことに喜びを爆発させるカタリナは、さきほどのやりとりを思い出し、ベッドの上で再び足をバタバタさせるのであった。


 このまま結婚なんて……え? そんなことありえるの?

 でも男女が同じ場所に住んでいたら、自然とそうなるわけで……

 だって本にもそう書いていたんだもん。


 店以外のことは初めての経験。

 まるで遠足の全日に眠れないような、そんな気分でこれからのことを想い馳せるカタリナ。

 まだどうなるかは分からない……けど、きっと楽しい毎日が続いていくんだ。

 ベッドの片隅に置いてあった料理本。

 幸村に料理を振る舞えるという現実がすぐそこに来ていることに、また胸を弾ませるのであった。


 ◇◇◇◇◇◇◇


「ねえねえユキムラ」

「どうした?」

「なんで地下室なんてできてるの?」


 小屋に入ってすぐ右手。

 そこに地下に続く階段があった。

 いつの間にできたのか、そんなことを考えたら頭がおかしくなってしまう。

 俺は何故ということは無視して、事実だけをフレアに伝える。


「お前とカタリナさんがここで住むことになったからな。地下室ぐらいなかったら狭いだろ?」

「え? あの人もここに住むの?」

 

 あからさまに嫌そうな顔をするフレア。

 だがこいつに拒否する権利などない。

 ここの家主は俺。

 ここのことは俺が全て決めるのだ。

 って、ここの家主は他にいるのかも知れないけど。


「お前はさっさと強くなって出て行けよ。俺はカタリナさんを養うのに手一杯なんだからな」

「えー。絶対手一杯じゃないでしょ。楽勝でしょ」


 楽勝ですよ。

 でも、君をいつまでも養うつもりなんてありませんから。


 しかし、カタリナさんを養う気は満々。

 彼女が息を引き取るその日まで、面倒を見るつもりだ。

 なんてことを言っているが、同棲なんていいものではないのだけれど。

 同棲というか同情。


 フレアに対してしたくなかった同情を、俺はカタリナさんにしてしまったというわけだ。

 だが後悔はしない。

 カタリナさんが少しでも幸せになってくれたらそれでいいのだ。

 ただ好きな女の幸せを願うのみ。

 あれ、俺っていい男すぎない?


 フレアは俺の顔を見てブーブー文句を言っている。

 しかしそんな顔で俺を見ても無駄だ。

 俺が同情するのはカタリナさんだけだからな。


「お前も生活が楽勝になるぐらい強くなれよ」

「楽勝になっても私はここで生活したいの!」

「なんで?」

「なんでって……そんなの分かるでしょ!」

 

 頬を染めて怒鳴るフレア。

 分かるでしょって言われても分からないから聞いてるんでしょ。

 こいつ、意思疎通が苦手なタイプか。

 俺も人と分かり合うのは苦手な方だから言えた立場じゃないけれど。


「あの、幸村さん」

「ああ、カタリナさん。おかえりなさい」


 光輝く扉から姿を現せるカタリナさん。

 一瞬、本物の天使かと思ったぐらい美しい。


 彼女もこちらに笑顔を向けるが……だが、フレアの顔を見るなり引きつった笑顔に変化させる。


「ああ……この子もいましたね」

「いたよ! ずっといたよ! ここ最近は、ずーっとユキムラといるよ!」

「そ、そう……でも、今日から私も一緒だから」


 冷たい笑顔を浮かべ、バチバチと熱く睨み合う二人。

 相性悪いのかな、この二人……


 俺は嘆息しながら、二人の間に入る。

 喧嘩はよくないです。


「カタリナさん。今日は狩りにでも行こうと考えているんです。フレアに強くなってもらって、自立してもらうつもりなんですよ」

「ああ、そうなんですね。それはいい考えです」

「いい考えじゃない! それは悪い考えだ!」

「悪くないと思うけど? だって自立するのは大事なことだし」

「あ、あんた自身はいいっていうの!?」

「だって私は、元々自立してるし。ただ幸村さんに誘ってもらったからここに来ただけです」

「じゃあ私も自立してからでも、ここにいていいってことだよね? そうだよね、ユキムラ?」


 カタリナさんだけ不公平だ。

 そんな顔をしてフレアは俺を睨み付ける。

 

 面倒になった俺は曖昧な笑みを向け、「そだねー」とだけ言っておいた。

 もちろん、置いておくつもりなんて毛頭ないけどな!

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