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39話 マリアの暇な訓練

 帰るとウェルズ家内はバタバタしていた。


「マリア様、セレシア様がお探しです。 至急お部屋に行ってください。」


 帰るなりお母様に呼ばれた。まだ、魔法の効果が残っておりマリアは元気だ。


「お母様、マリアです。」

「入りなさい。」


セレシアはマリアがドアを開けるなり、マリアを抱き寄せた。


「大丈夫だった? どこか怪我してない?」

「お母様、大丈夫です! 私には精霊の加護がありますので、ソーマがやっつけてくれました。」

「それと、エリス神の御守りもあります。」


マリアはリュックからタリスマンを出し、セレシアに見せた。


「マリア!」


 ギュッと抱きついてきたので、私はお母様の頭をよしよしした。


 しかし問題が発生した。

 私は問題が解決するまで自宅から出ることができなくなった。 学校も休みだ。

 当然私だけではなくエルマーとエミーリアも当分学校もお休みだ。


 今はエルマーとエミーリアに勉強を教えている。


「お姉様、ここわかんない。」

「うん? 足し算ね、算盤で教えるわ。」


 机の引き出しの中に眠っていた昔作った算盤を引っ張り出して机に置く。


「それ何? 見たことない。」

「これは算盤って言うのよ。 上の玉が数字の5で、下の玉1つが1よ。」

「なので、上の玉と下の玉全部で9になるの。」

「この左が10の位になるのよ。なので、今の9に1を足すと、左に玉が移動して10になるの。」


 マリアは玉を弾きながら足し算を教えていく。


「じゃあ、エミーリア。 やってみよっか。」


 席を立ち、エミーリアに椅子に座らせ、後ろからやり方を教える。


「5+6だから、まず上の玉を下に下げるのよ。 次に6だから6は5と1だから、下の玉を1増やして、上の玉を戻して左に繰り上げるのよ。 そうすると、11になるの。」


 パチパチと算盤を弾いていく。


「ほら、練習よ。 覚えると頭の中に算盤ができて計算が楽になるのよ。」


 エミーリアは算盤を弾いて足し算をやっている。


「お姉ちゃん、これで合ってる?」

「そうよ。 これで引き算とかもできるからエミーリアにあげるわ。」


 エミーリアの宿題を教えながら算盤も教える。

 算盤はこの街で使っているのを見たこと無いし、売っていない。

 まぁ、色々な計算方法があるので広めるつもりはあまり無い。


 宿題を終え、今度は魔法を教える事にした。


「エルマー! 魔法の練習するからいらっしゃい!」


 マリアはドアを開け、大きな声で呼びかける。

 しばらくするとエルマーがやってきたので魔法の練習を始める。


「2人とも、まずはライトを使ってみて。」

「「はい! お姉様!」」

『『光よ集いて我道を照らせ』』


 魔法語の発音は良い。 発光具合も良い。


「2人共、イメージもしっかりできているし、初級魔法は余裕そうね。」


 マリアは腕を組みうんうんうなづいている。

 次のステップは何をしようか少し考えたが、基礎トレーニングをする事にした。


「魔力操作の練習しましょう。」


 マリアは水晶玉サイズの魔石を引き出しから取り出した。


「やってみるから見ててね。」

「まず、手を触れて魔力をできる限り注ぎ込むのよ。」

「疲れるくらい注いだら、今度は魔石から魔力を自分の中に戻すのよ。」

「この戻すのが少しコツがいるから練習してね。」


 マリアは魔石に魔力を注いで、ほんのり光らせた後すぐに回収したようで、その光は無くなった。


「また手伝ってあげるからね。」


 魔石をエルマーとエミーリアに渡す。


「こらは魔力操作の訓練よ。 やってみて。」

「「はい」」


 2人は魔力充填も苦労しているようだ。

 まずはエルマーに教えることにする。


「エルマー、ちょっと触るわね。」


 後ろから覆いかぶさるように魔石に触れる。


「魔力操作をやってみるから感じてみてね。」

「はい。」


 マリアからほんのり香る香水が心地よく、エルマーは頬を赤らめている。


「どう? 私の魔力わかる?」

「わかります! 体の中を通って魔石に流れている感覚がわかります!」

「そのまま、魔石から回収するわね。」

「はい!」

「あぁ! 魔力が感じられます! わかります!」


 マリアは魔力がわかりやすいように、体全体を通して実演したのだ。

 終わったので、マリアは離れる。


「じゃあ、エルマーは今の感覚を忘れないように練習してね。」

「はい!」


 その間エミーリアは、エルマーとマリアの行為を羨ましげに見ていた。


「次はエミーリアね。」


 同じようにエミーリアにやってあげると嬉しそうにしている。 まるで尻尾が見えるようだ。


 訓練は結構辛いようでエルマーもエミーリアも魔力枯渇状態になっていた。

 私はトランスファーメンタルで枯渇を直してあげるが、何度かやると精神的に疲れたようだ。

 そりゃそうだ……。


 今回の強制訓練により、魔力操作はだいぶ上手になったようだ。

 私は個人的に剣術訓練をしたかったので、みんなを誘ったが、魔力操作訓練が苛烈をきわめたため、遠慮された。

 エルマーと勝負したかったのに……。



 仕方がないので護衛のセリーヌさんに稽古をつけてもらう。

 家の前の詰所にいるセリーヌに頼むと、時間が空いており付き合ってくれるというので、庭で訓練する事にした。


「ふふふっ。 学年一の武闘派マリアがあなたを倒してみせます。」


 口上を述べ剣を構える。


「ふふふ。 よく言いました。 相手になりましょう!」


武闘派では無いが、マリアは力は無いが小手先の技だけはそれなりに使える……と思う。


「では、尋常に勝負!」


 一気に踏み込み唐竹から攻めるが、当然あっさりと弾かれてしまった。

 弾かれた勢いを利用し切り上げるが大きな動作なのであっさり避けられる。


「どうしました! こんな攻撃当たるわけありませんよ!」


 セリーヌは剣圧を上げ切り下げる。

 あれは私の力では受けれない!

 マリアは後ろに大きく避けることにした。


「甘いですよ。 剣圧は飛ばせるんです!」


 避けた筈のマリアは肩に衝撃を受けた。

 そのまま体勢を崩し、後ろに飛ばされたが何とか着地し、マリアは魔法剣を使ってみることにした。


「私だって! 飛ばせるんだから!」


 マリアの木刀が燃え始める。


「フレイムスラッシュ!」


 袈裟斬りで炎を飛ばす。


「嘘! 魔法、剣!?」


 セリーヌは焦って躓き体勢を崩したが、何とか避けた。

 マリアは一気に間合いを詰める。


「覚悟!」


 セリーヌの呼吸が変わった。

 全く見えなかったが、剣を弾き飛ばされて、いつのまにか私は地面に寝転ばせられていた。


「あれ?」


 何が起きたのか全然分からない。

 目はいい方だと思っていたが、全く動きが見えなかった。

 これが本気の騎士か…。 でもこんなに強いんなら何であの時やられてたんだ?


「あの〜セリーヌさん。 1つ教えてください。」

「何でしょうか?」

「馬車で囲まれてた時、あっさり気絶してましたが、何でですか?」


セリーヌが石像のように固まった。


「えええ、えーと、アレはですね…。」


ギギギッと音が鳴りそうなくらい、ギクシャクした動きで喋っている。


「私、怖かったんですよ。 セリーヌさん倒れちゃったし、馬車が囲まれてガンガン叩かれてたし……なんとか出来そうな人私しかいなさそうだったし……。 ねぇ、セリーヌさん?」


黒いマリアが出てきている。


「すみませんでした! あの時は投石に気付かずに……いつのまにか気絶してました!」


セリーヌがジャンピング土下座をして、頭を擦り付けて謝っている。


「セリーヌさん、その呼吸? 私にも教えて欲しいんですけど。」

「アベリール流操気術の事ですか?」

「そう! その操気術!」

「別に秘密でもなんでも無いですよ。 多分騎士科の方なら授業で習いますから……。」

「えっ? 私学校で習えないのかな?」

「別に良いじゃ無いですか? 私が教えますし……。 旦那様も使えますよ。」

「お父様も使えるの? あのクソ親父め!」

「はははは。クソ親父ですか……。」

「あっ! 今の無し! セリーヌ、ごめんなさい。」


 慌ててマリアは縋り付き懇願している。

 目はうるうるさせて見ている。


「もう、仕方がないですね。 わたし、からは言いませんよ。」


 セリーヌはチラッと入り口の方を見たが、マリアは気付かなかった。

 そこにはカリナが、目を光らせて見ているのだが……。



 操気術とは生物が生まれながらに持っている"気"、又は"闘気"と呼ばれる生命エネルギーを意識的に作用させ、魔法のように使う技術である。

 普通に生きているだけだと、漏れ出ているものを内に留める。


 魔法は詠唱によりイメージを高め作用させるが、操気術は呼吸により気を操作する。

 主に使われるのが身体強化だ。

 体表面全体に気を纏わせれば防御力が上がり、目に気を集めれば、例えば遠くが見えたり、例えば動体視力が上がる。

 筋力だって上げれるのだ。


「凄い!! 私も剣を弾かれずに戦えそう!」


 セリーヌは苦笑いしている。


「魔法でも似たような事が出来ると思うのですが……知り合いの魔法使いが良く掛けてくれましたよ。」

「えっ?! 魔法? そういえばフィジカルエンチャントとかあったな。」


 マリアは顎に指を当てる、いつものポーズで考えている。


「魔法と操気術って効果が重なるの?」

「えぇ、重なりますよ。 反則的な強さになりますが、それに慣れると元に戻すのが大変になります。 体が重く感じるようになります。」

「操気術教えてください。」

「わかりました。」


 操気術を教えてもらう事にする。 何でも知っていれば応用が利くようになる。

 操気術は息吹が重要らしいが、まずは"気"を感じる必要がある。

 魔力が大きいと気を感じるのが大変らしい。 私は気が分からない。 どうも、魔力が邪魔で感じ取りにくい。


「セリーヌ。 私に気を流してみて。」


 セリーヌに流してもらい気に慣らしてみるが、なかなかに難しい。

 集中だ。

 目を瞑り、座り込み、気を感じるために五感を閉ざしていく。

 駄目だ、すぐには感じられそうに無い。


「ぷはー。セリーヌありがとう。後は気を感じる練習をするからできるようになったら呼びに行くわ。」

「そうですか?では私は戻ります。」


 セリーヌはお辞儀をして退出した。

 さて、私はどうしよう。 まずは、湯浴みして、ハーブを焚きながら集中しよう。


 湯浴みを済ませ、部屋に戻りマリアの好きなハーブを焚く。


「さっそくやってみましょう。」


 床で坐禅を組み、目を瞑りハーブを感じながらリラックスしていく。

 あぁ、色々な音が聞こえる。

 誰かが部屋の前を通り過ぎて行く足音、これはカリナね。 さあ、もっと深く集中しなきゃ。


 集中していくと呼吸が浅くなっていき、周りの音がどんどん聞こえなくなっていく。

 ああ、自分の心音がやたらに聞こえるようになった……。


 更に集中すると、座っている感覚もどんどん無くなっていく。

 全身に魔力が行き渡っているのが分かったのでそれを中央に押し戻す。


 もっと深く意識を沈めていくと、胸の辺りに何か感じるものがあった。 なにか温かく何処かで感じた事があるような気がする。

 ぽうっとロウソクの炎のような感じだ。

 胸の中心が温かい。 その温かさは肌を通し外にゆらゆらと漏れている。


あっ、何かわかった気がする。


マリアは取り敢えず"気"を感じる事ができたような気がした。

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