24話 とある日の母セレシア
「カリナ。頼んだわよ、あの子は私そっくりだから、注意しないと大変なんだから。」
カリナはセレシアに良く呼び出されており、マリアの状況を報告しているのだ。
「はい、セレシア様。街に出た際もセリーヌさんにしっかり確認させています。また、セレシア様のご実家のオスカー様に頼んで、公衆浴場の現場の目の前に詰所を作って頂きました。私もなるべく近くに行き監視しますので、安心してください。」
「また、こんなものまで作って…。心配だわ〜。」
手に持っているのはマリアの現状報告の資料と新タイプの写真機だ。
マリアはいつのまにかマリンベル工務店を作っており、家の御用聞きだったカサンドラにも商会を作らせていた。
そのカサンドラ商会を通してマリアの趣味の物の販売までしている始末。
「もっとしっかりと確認しておくべきだったわ!」
もう、知る人ぞ知る人物になってしまっていたのだ。
未遂ではあるが、誘拐されそうなところを偶々に近くにいたオスカーの護衛騎士達に守られていたのだ。
そのこと知ったセレシアは青ざめて寝込んだくらいだ。
当のマリアは守られていた事に全く気付かずいる。
護身術を習わせてみたが、やる気は充分だが素質が全く無く、倒れるまでやっても体力も筋力も付かないようだ。
まるで私と同じなのだ。
性格も負けず嫌いで、姿まで小さい頃の私を見ているようにそっくりだ。
まさかここまでそっくりに育つとは思ってもみなかった。
「お父様にまるで若返ったようだと言われる位そっくりなのよ。」
「カサンドラを呼んで頂戴!視察に行くわ!」
そう言って外出用の化粧をし、馬車で向かう。
カサンドラ商会は今や1、2を争う商会までになっている。
ウェルズ家の贔屓から外れると潰れるかも知れないと言うくらいマリアにどっぷりだ。
なので、視察に行くとどんなに忙しくても会長が案内してくれて、呼べば直ぐに来てくれる。
今日は商会に卸してる工務店を一緒に見に行くのだ。
「あの子、自室にも魔道具溢れさせてたけど、工務店ではどれだけ酷いことになっているか…。怖いわ…。」
でも、お風呂と便器は良いものだわ。
マリアもお父様に懐いていて、家と同じものを実家にも付けてたわ。
家も随分と立派になったわ。
お茶会をやるって言うと、あっという間に返事が来るし、アマリエ様も助けてくれる。
「もう少し、家を広くしようかしら?」
「セレシア様!マリア様と同じですよ!」
セレシアはカリナの言葉に眉根を寄せ唸っている。
「カリナ!行くわよ!」
馬車に乗りマリンベル工務店の前に着く。
店はスラムの近くだ。
「また、あの子はなんて所に建てたの!危ないじゃない。」
セレシアは知らない。
マリアはスラム街が嫌いで、無くそうと思い仕事の斡旋も含めてここに建てたのだ。
なので、親方衆以外は割とスラム出身が多いのだ。
文字など勉強のために教科書を作り、寺小屋チックに店の裏手に作ってまずは勉強させている。
それほど難しい事を教えるわけではないので、親方達が順番に教えている。
たまにマリアが教鞭に立つ事もあるが、それをセレシアが知るのは近い将来のまだ先だ…。
「それにしても…、大きいわね。」
カリナは直ぐに店の人を呼んできて案内をさせる。
「セレシア様。店の中に入りましょう。」
入口を入り応接室に案内された。
応接室は高価なソファと机が置かれ、壁沿いに棚があり、その中にはブレスレット、ネックレス、リングとそれは豪華なデザインの装飾品、食器類並んでいた。
机の縁に魔石が置いてあるが何に使うかわからない。
眺めていると、使用人によりお茶が出された。
「あら?随分と儲かってるみたいね。」
出されたお茶は、家で使っているマリアが好きなものが出てきた。
待っていると親方が正装して現れた。
「セレシア様。ようこそいらっしゃいやした。今日はマリア様の作業場を重点的に見たいとかで…、まずはこちらをご覧くだせぇ。」
そう言い、親方は机の魔石に触れた。
部屋はやや暗くなり、魔石が光り空間に立体映像が映し出された。
映像は私そっくりで声はマリアであり、マリンベル工務店の紹介を始めた。
なにこれ!
またあの子は自重せずに、とんでもないものを作ったわね。
最近は魔法陣の本を取り寄せてしたみたいだけど、これはどんな仕組みなのかしら…。
「あの。質問よろしくて?」
「へい!なんでも聞いてくだせえ。」
「これはどのような仕組みでして?」
「すいやせん。私どもも説明は受けたんですが、高度過ぎてさっぱりでやした。なんとか魔石に記録した映像を投射して?声は壁沿いにあるあの四角いボックスから鳴っているようです。細かい説明はマリア様しかできやせん。」
「そう…、で、あの子は良くここで説明をしてるの?」
「へい。技術的な説明はマリア様がいらした時にお願いしてやす。たまに魔石を渡されてあそこに嵌めるように言われます。嵌めてみますか?」
「えぇ、お願い。」
親方は手近にあった魔石を嵌め、スイッチを押すとまた、立体映像が流れてくる。
この映像も私にそっくりで声はマリアである。
「セレシア様にはいつもご協力頂いているようで、非常に助かっています。」
私には全く身に覚えは無い。
この映像の人は私に似てるがマリアを大人にしたような姿のような気がする。
「カリナ。作業場を見せてもらおうかしら…。」
私の顔はたぶん引きつっている。
ふふふ、帰ったらあの子を懲らしめないとね。
早速、作業場に向かう。
作業場は整理されており、低めの作業机と椅子、少しの本が置かれた棚が置いてある。
部屋の隅には木箱が置いてあり、中身は大量の小さな魔石、鉄鉱石に石炭、薪が置かれていた。
「ふーん、ここには何も置いてないのね。試作品とかはどこかしら?」
そう呟くと親方が案内してくれた。
「こちらです。危ないものはありやせんのでどうぞ。」
扉には倉庫と書かれている。
扉は鍵がかかっていたが、親方が開けてくれた。
扉を開けると部屋が明るくなる。
壁が発行しているようだ。
中には棚が置かれており、棚には木箱が並んでいた。
木箱の中を見ると大量の綺麗な陶磁器が入っていた。他には魔石の嵌った指輪やネックレスやペンダント、ブレスレットにイヤリングと様々だ。
光輝くようにカットされたダイヤモンドも無造作に置かれている。
他にもルビーやサファイア、エメラルド、オパール、アレキサンドライトと多岐にわたる。
「なに?この宝石の山は!あの子は何をやってるの?」
「セレシア様、それはマリア様がお作りになった物で、買ってきたわけではありやせんぜ。」
「え?」
不思議である。
こんなものを作る?できるの?
「あっしらもビックリでしたよ。部屋にある木炭やら鉱石やらを持ってたと思ったらできてたんで…。」
「この事を知ってるのはどの位いますの?」
「私とカサンドラさんくらいですかね。」
「……。」
他には共用の工作所があり、作業員達が便器や写真機を流れ作業で組み立てをしている風景を視察した。
変わった物は壁に付与機というボックスがあり、そこに魔石を入れ魔力供給すると付与される素晴らしい道具があった。
「それにしても、ここは涼しいわね。」
「へい、各部屋にはエアコンなる魔道具が天井にくっついてまして、あれで室温調節をしてやす。」
「そんなものまで…。」
目眩がした。
「カリナ…、帰りましょう…。」
その日は帰って寝込んでしまった。




