10話 我が家の湯浴み場
毎日体力をつけるべく、男子と一緒に補習をしていおり、補修が終わったら、男共は井戸の水をかぶって気持ち良さそうにしている。
女子は手拭いを湿らせて、こそこそ拭いている。
ここで湯浴みできるようにしたいな〜。
体をスッキリしたい! 魔法も少し覚えたし……お金も溜まってきたし……そろそろ、なんとかしよう!
マリアはついに浴場について決心を固めた。
温泉場を建てるべく、父に相談することに決めた。
その日の晩、食事中に父にその夢の話を切り出した。
「お父様…私、湯浴み場を建設したいと思います! どこかに良い場所はありませんか?」
アレフはいきなりのマリアの発言にびっくりしている。
「いきなり何を言っているんだい? 大体湯浴み場って言ったって、どうやってお湯を沸かすんだい?」
「それは大丈夫です!! まずはこの家に造って、お父様とお母様が納得したら……それでお願いします!」
遂に個人的な事業に、取り組むと誓うのであった。
「湯浴み場の候補地を探しておいてください! お金は私のを使って良いので、お願いします!」
娘に甘い父親であり、土地はあっても問題なさそうなので探してもらえることになった。
実を言うと写真機を作った際に、色々な技術申請も行なっていた。
魔石の加工方法である。
ひとつは柔らかくして形を変えること。
これにより今までは、魔石を利用することが出来なかったものでも使えるようになる。
もうひとつは、魔石を合成することだ。
この合成は単に2個の魔石を合成して、大きくするだけでなく、違う魔力を込めた魔石を合成することにより、複数の属性を付与した魔石を作ることができる画期的な技術だ。
庭の一角に作っても良いという事なので、将来拡張できるように端に作ることにした。
まずは実験の続きで、木桶を用意する。
木桶の底板を外し、その底板に強い炎をエンチャントする。
木桶を元に戻し、横板と魔力を繋げるように接続し、桶の上に魔石を繋げ、木桶の底にもう一枚、板を置く。
水を入れ魔石に魔力を充填すると、木桶の中の水は温かくなってきた。
熱くなりすぎる前に魔石を外すと、魔力供給が止まりそれ以上熱くなることは無かった。
今度は底板を半分にして、一つは炎を、もう一つは氷をエンチャントしてみて、それぞれに魔力を込めると、温度調節が出来るようになった。
次は魔石で試してみよう。
魔石に炎をエンチャントし、魔力を込めると火傷するくらい熱くなった。
熱くて触れなくなるので、魔力を充填した魔石を繋いでみると、うまく魔力が供給されているようで、魔石は熱いままだ。
水の中に入れてしばらくすると沸騰してきた。
次の魔石には水をエンチャントし、魔力供給用の魔石を繋ぐ。 すると、魔石から水が湧き出てきた。
そのまましばらく放置したが、なかなか水は止まらない。
止まるまで次の実験をしよう。
魔石を変形させ、二つの魔石を絡ませる。
一つ目は水、二つ目は炎をエンチャントし、その2つに魔力供給用の魔石1つを繋いでみる。
魔力を込めてみると、高温なお湯が出てきた。
「やったー!掛け流しができそうだぞ!」
いつまで水が出てくるのか分からなかったので、様子を見ていたところ、1日出続けていた。
早速、母に大工を呼んでもらい、十人くらい入れる巨大なお風呂を組んでもらった。
頼んだ業者が悪かったのか、大変に苦労した。
奴らがお風呂を作ろうとすると、普通に板を重ねるだけ……。
出来上がりを見た時は、思わず大工を怒鳴ってしまった。
しかも、鉄釘を使いやがった。
何がいけないかのか、怒りながら説明をしていた時に、実演と言うことで、魔法で水を入れた時には焦った。
木枠が水の圧力に耐えきれずにぶっ壊れたのだ。
あっという間に私は流された。
揉みくちゃになりながら、流され、溺れた。
気が付くと母がおり、大工を怒っていたので、私も続きでダメなところを怒りまくった。
ちなみに、大工たちはセレシアに正座させられている。
アリス案の檜風呂を製作するにあたって、親方達には水漏れしないようにする技術が無いことがわかったので、前世で覚えた矧ぎの技法を教えた。
釘なしで美しく組みたかったので木組み、他には継手、仕口と色々教えたところ、大工達は大変に感動していた。
この時から大工達は、マリアの事を姉御、姉さんと呼ぶようになるのだった。
苦労して組み上げた檜風呂、床はすのこ状にして排水も考えた。
お湯は掛け流しである。
魔力は毎日充填しないといけないが、お風呂の為なら何ともない。
壁にはテストで作った水と炎をエンチャントした魔石をセットし、木樋伝いにお湯を流し込む。
「完成だー!」「うぉー!」
大工達に支払いを済ませて、帰ってもらった。
さっそく入ってみよう…。
かぽ~ん……。 いい湯だ。 熱いと感じたら水を足せば良い。 広さも十分だ。
今は檜風呂風のものだが、岩風呂とかサウナとかも作りたい。
さっそく夜に家族みんなで入っている。
当然お父様も一緒だ。
「なぁ、アリス……これも技術登録するんだろう?」
「もちろんです。」
「「お姉さま凄いです!」」
弟達からコーラスで聞こえてくる。
うふふ、もっと褒めて~。
「湯浴み場の件だが、良い場所を譲って貰えることになったから、直ぐにでも建築が始められるぞ。」
マリアはお父様の顔を見た……、笑っている。
「お父様! ありがとうございます!」
「そこで言いにくいんだが……、その中に婚約についてもあるんだ……。」
びっくりして、お父様の顔を見た。
「マリアが嫌なら断ってもまだまだ大丈夫よ。 手伝ってあげるから頑張りましょう、アリス。」
お母様の顔も見た。
「お姉様、もう家を出られるのですか?」
「いなくなっちゃイヤー!」
みんなを見た。
嫌だ、まだまだこの家に住みたい。
「私は…ずっと……みんなと、離れたくない! うわーん。」
お母様の胸に抱きついて泣いた。
でも、貴族社会のこの時代、仕方がないのは分かっている。
過去に自分も同じように奥さんを貰っていたが、嫁に出す方は初めてだ。
こんな気持ちの家もあるのだなー。
せめて嫁ぐまでに…不自由なく暮らせるように……幸せに過ごせますように…。




