どちらが得か
凛花は最近歴史に興味を持ち始めていた
それも自然だろう、隣にこんな歴史の生きた証人がいるのだから
今までの史実にこんな関わりを持っている奴がいて気にならない訳がない
「あいつ余計な事しかしてないけどなぁ」
「この私の飲んでる酒も海外から伝わったんだもんな、案外歴史って面白いよな」
一人寂しく部屋で酒を飲みながら呟く
凛花は思い出した様に立ち上がりベランダへと向かう
「ねえ、日本て江戸時代鎖国してたじゃん?急にでかい船何隻も来てさ当時は結構ヤバいよね」
「半ば強引に開国だもんね」
ステフはベランダで煙を吐く。
「そうだな」
凛花がちらっと見る。
「知ってたりする?」
「いたからな」
「もう驚かんよ」
やっぱりといった表情でステフを見ながら話を聞く
海の上に蒸気が上がり黒い船が数隻
その黒い塊は人々に恐怖を植え付けるには十分過ぎた
国交を断絶した国に開国させまいとこの小さな島国までやってきた男がいた
「日本に向かう」
男が言う。
黒船の長、ペリー。
凛花が小さく言う。
「来たなー」
ステフは甲板におり地上に降りる準備をしている
「お前そっち側かい、なんで乗ってるの」
凛花が聞く。
「言葉が分かるからだ」
「アメリカ人材不足なん?こんな奴に頼らないといけないとは.....」
「通訳だな」
凛花が呟く。
「便利すぎる存在だな」
「その日は体調が悪くてな」
「不老不死が体調崩すなや」
ステフは短く言う。
「寝ていない」
「イキり大学生かい」
「だから早く終わらせたかった」
凛花が呆れる。
「理由うっすいなー」
海の向こうに、何隻もの黒い船が並ぶ。
「黒い、船…」
ざわめく人々。
凛花が小さく言う。
「そりゃビビるわ」
会談。
幕府側の人間は緊張した空気で落ち着きがない
ペリーが口を開く。
穏やかに。
丁寧に。
「友好的な関係を——」
ステフが通訳する。
「見えるか?」
凛花が止まる。
「ん?」
ステフは淡々と言う。
「あの沖の黒い船が」
空気が凍る。
「ステフさん?」
ステフは続ける。
「馬鹿なことは考えない方がいい」
「国が滅ぶか」
少し間。
「交易して栄えるか、選べ」
ペリーはニコニコ
幕府側は対照的に青ざめている
幕府側はペリーの笑顔と言葉の温度差が激しすぎて最早不気味に見えていた
(早く開国した方が身の為デース)
ペリーの心の声が聞こえてくるようだ
凛花が顔を両手で塞ぐ
「言い方!!」
「圧が強すぎる!!」
ペリーは相変わらずニコニコ
交渉は進み、1年の猶予を経て開国へ。
場面が戻る。
凛花は呆れた顔で言う。
「ちょっと待って」
「それ、お前の威圧的なせいじゃん」
ステフは煙を吐く。
「遅かれ早かれだ」
凛花が詰め寄る。
「なんでそんな言い方したの?」
「ペリーニコニコだったんでしょ?」
ステフは答える。
「早く終わらせたかった」
「……は?」
「休みたかった」
「見て回りたかった」
凛花が不思議そうに聞く。
「何を」
ステフは答える。
「最後に来たのは織田信長の頃だ」
「おん、そんで?」
ステフは続ける。
「観光したかったんだ」
凛花はしばらく何も言えない。
「それで国開くなよ!!完全に私利私欲じゃねーか」
ステフは小さく笑う。
「結果的には良かっただろう」
凛花が即返す。
「結果論だろ!!」
「で、どーだった日本は?」
「あんまり変わって無かったな」
ただ途轍もなく恐い思いをしただけの当時の役人達だった




