自身の基準
凛花は今日もスパスパ煙草を吸うステフを横目に酒を飲む
「ねえ」
「あんた、煙草ばっか吸ってるけど体になんも影響ないの?」
「酒ばかりの女に心配されてもな....」
「百薬の長ですから」
笑いながら答える
「煙草や麻薬、俺の体には毒認定され中和されるっぽいな」
ステフはベランダで煙を吐く。
凛花がちらっと見る。
「はぁ~、公害では無敵だ」
ステフは短く言う。
「だからニコチンの効果が実感できない。もはや動作と煙の香りを楽しんでる感覚だ」
「それでアルコールだけは弱いってバランス悪すぎる」
「だから色々自分に効く物を作っていた時にやらかしたんだ」
「おいー」
1840年イギリスでは貿易の話で持ちきりだった。
「銀が減っている」
男が言う。
「貿易かぁ、この頃は盛んに行われてそう」
ステフは頷く。
「売るものがない、だから銀を出していた」
ある日。
一人の男が話しかけてくる。
「相談がある」
男は、イギリス東インド会社の関係者だった。
凛花が言う。
「なんで関係者と知り合いなんだよ」
男は続ける。
「どうすればいいと思う?」
「こっちの物が売れない、このままでは銀が出過ぎてしまう」
ステフは少し考える。
「流行の物を売ればいいだろう」
「今何が清で流行っている?」
男は顎に指をあて答える
「嗜好品が流行っていると聞いているが....例えばアヘンとか」
「それを売ればいいだろう。」
「確かインドでケシが栽培されてると聞いたことがある」
男が神妙な顔をする
「栽培はできても加工が上手くいってないんだ。供給が追い付かない」
少し間が空きステフは答える。
「俺なら作れるが」
凛花が即反応する。
「やめろぉぉ!なんでそんな軽く言う」
ステフは淡々と言う。
「俺からすれば煙草と一緒だ」
「当時は人体に影響が起きる認識はなかったんだ」
「いや試せばわかるでしょ普通」
「試したが俺に効果はなかった」
凛花は頭を抱える
「昔から触れていた、薬にもなるし」
「使い方次第だ」
「お前基準にしてたら人類滅びそう」
男は興奮した様子で言う
「頼んでいいか!?」
それからステフはアヘン作りに従事しインドへ向かう
アヘンが作られ、清へ運ばれる。
銀は戻り綿が売れる
凛花が小さく言う。
「三角貿易ってやつか…」
やがて悪魔の様な所業の連鎖が生まれ、人々は狂い衰退していく
行きつく先は.....
「アヘン戦争か.....」
凛花が黙り静かな時間が流れていく
凛花はたっぷりと息を吸いこみ
「お前やってくれたなぁ」
ステフは短く答える。
「一因だ」
凛花は深くため息をつく。
「一因がでか過ぎるって…」
ステフは何かを悟ったように言葉を漏らす
「この時だ」
凛花が顔を上げる。
「ん?」
「基準にするなと思った」
「自分を?」
ステフは頷く。
「人は同じじゃない」
「耐えられるものも違う」
風が流れる。
「安易に言うべきではないなと」
凛花は何も言わない。
少しだけ、真面目な顔になる。
「……うん」
「その後どうなったの?」
「グラバー商会の雑用だ」
「あ~、それで龍馬とも会うことになるのね」
「第二の国を生み出さない為にと思ってな」
「酒でやらかして学んでないけどな」
軽い一言が、一つの国の運命を変えていた。




