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凛花の屈辱

ベランダのドアが乱暴に開く。


「なんでさ」


「なんで悪くもない私が」


「あの仕事も出来ない元請ってだけの若造に頭下げなきゃいけないの?」


荒い息をたてながら酒を一気に飲み干す凛花


「屈辱なんだけど」


隣のベランダ。

ステフはいつも通りいる。


「そうだな」


凛花がイラついたまま続ける。


「ほんと意味わかんない」


少し間。


「元請だからって調子乗りやがってよぉ、そうだ!今度の飲み会誘って、潰してその辺捨てて帰るか!」

目をキラキラさせながら物騒なことを言う凛花を悲しい目で見るステフ

この女なら本当にやりかねない


ステフは煙を吐く。

「似た話がある」


凛花の眉が上がる

「酒飲ませて潰す話?」


ステフは無視して続ける。


「ハインリヒ4世」


凛花の眉間にしわが寄る。


「誰それ」


「王だ、頭を下げさせた」


凛花は相槌をうつ

「ふーん」


「行けと言ったのは俺だ」


凛花が完全に振り向く。


「は??あんた気は確か?王様に向かって....」


ステフは淡々と話し始める。


雪が降り。


冷たい空気。


「なぜ俺が頭を下げる」


王は苛立っている。



凛花が反応する

「そりゃそうなるよね」


ステフは言う。


「当時は教皇の方が上だ」


凛花が顔をしかめる。


「王より?」


ステフは頷く。


「時代だ」


「力のバランスが違う」


ハインリヒは睨む。


「王は俺だ」


ステフは否定しない。


「だが、従わなければ滅びます」


言葉が出ない王にステフは続ける


「勝てない相手に意地を張ってはいけません」


「頭を下げ、まずは力を蓄えねば」


凛花がぽつりと言う。

「……現実的すぎる」


ハインリヒは歯を食いしばる。


そして——


「……分かった」


雪の中


三日


待つ。


頭を下げ続ける。


凛花が顔をしかめる。


「うわ…」


「それはきつい」


「親に反省しなさいと言われてる子の様だったな」


「お前見て楽しんでただろ」


やがて許され、王は戻った。


凛花が言う。


「じゃあ成功じゃん」


ステフは首を振る。


「長くは持たなかった」


凛花が黙る。


「結局、対立は続いた」


「根本は変わらない」


少し間があく


「だから」


「恨まれた、誤り損だと」


凛花が即反応する。


「え、お前が?」


ステフは頷く。


「ばちくそに」


凛花が思わず笑う。


「そこだけ軽いな!!」


凛花はため息をつく。

「なんかさ」


「この話に比べたら私の弱くない?」


ステフは煙を吐く。

「時には感情を押し殺してやらねばならない日もある」

「それがたまたま今日だっただけだ」


「そーね、王の立場考えると私の方がマシだしね」


今夜は少し冷えそうだ。

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