飲みでの軽口
夜は少し重たい空気だった。
凛花はベランダに出てすぐ言う。
「なぁなぁ」
「こいつやべぇって思ったやついる?私は断然上司」
ステフは即答する
「あいつしかいない」
凛花が笑う。
「答えるの早いて、ゼミでやった所だったんか」
「ドン引きした」
凛花が止まる。
「お前が?」
ステフは頷く。
「珍しいな」
あの頃のローマ
豪華すぎる宮殿。
笑い声。
酒。
無駄に派手な装飾。
「財政はどうでもいい」
「気に入らないやつは処刑」
凛花が顔をしかめる。
「うわぁ…」
「自分を神として崇拝させる」
「神殿も建てる」
凛花が言う。
「もうお腹いっぱい」
ステフは続ける。
「馬を執政官にしようとしていた」
凛花が吹き出す。
「いや意味分からん!!」
ステフは淡々と言う。
「本人は本気だった」
凛花は頭を押さえる。
「怖すぎるて」
「その頃、俺は近衛隊の末端をやっていた」
「近くかーい、てか前政治やってなかった?しかも戦争嫌いなくせになぜ兵隊を.....」
「金払いがいい」
「意外と現実的な理由だった」
場面が変わる。
夜。
兵士たちが集まっている。
酒。
愚痴。
「もう無理だ」
「いつ殺されるか分からん」
空気は重い。
凛花が小さく言う。
「そらそうや」
その中で、誰かが言う。
「いっそ……殺した方がいいんじゃないか?」
一瞬の沈黙。
そして——
「ははは」
笑いが起きる。
「それな」
「それが一番早い」
軽いノリ。
凛花が言う。
「飲み会のテンションやん」
ステフもその場にいる。
「確かに、その方が楽だ」
適当に言う。
凛花が即ツッコむ。
「あーまたそんな適当な事言って」
場は少し盛り上がる。
「やるか?」
「やれたらな」
冗談の空気。
だが——
その会話を、後ろで聞いていた男がいる。
静かに、誰も気付かない。
男は呟く
「……そうか」
凛花が小さく言う。
「嫌な予感」
ステフは続ける。
「数日後だ」
空気が変わる。
「本当にやった」
「言わんこっちゃない!」
ステフは短く言う。
「暗殺された」
「飲みのノリでしょ!?」
「のはずだった、しかし俺の当時の上司もかなりやられてたみたいでな」
凛花がステフを見る。
「お前さ、やらかしたなぁ」
ステフは煙を吐く。
「俺は悪くないぞ」
凛花は呆れる。
「軽口で皇帝が死ぬ世の中か」
「で?あんたはどうしてたの」
ステフは少しだけ目を細める。
「ドン引きした」
凛花は声を出して笑う。
「2回目だ」
ステフは頷く。
「一度目はあいつに」
「二度目は、周りに」
凛花はため息をつく。
「昔の人たち極端すぎる、なんかさ」
凛花が続ける
「狂ってるやつも怖いけど」
ステフを見る。
「それに普通に乗るやつも怖いな」
「あぁ、その後暗殺した奴も皇帝殺しの罪で死んだしな」
「報われねぇ....」




