銀貨の重み
夜は少しだけ騒がしかった。
下の通りから、笑い声が上がってくる。
凛花はベランダに出ながら言う。
「はぁ、奢りスタバに目がくらんであんなの安請け合いするんじゃなかった....」
過去の自分に後悔する浮かない表情の凛花
ただより高い物はないとはよく言ったものだ
「接待なんて行きたくないよぉ!お酒は飲めるのはうれしいけど心の底から楽しめないんだよなぁ
気使うし」
状況を理解し煙草に火をつけるステフ
「コーヒー一杯で買収されたか」
「うん、割に合ってない。なんあらこの世で割に合う対価ってわずかな気がする」
煙を一度、長く吐く。
「……対価、か。」
凛花は顔をしかめる。
「その深刻そうな時は何かある時のお約束になってきてるね」
「ゆーてみ?聞いてあげるよ」
「お前ほど可愛くない内容ではあるが.....」
「あと言っておくが俺は直接関与はしていない」
しっかりと予防線を張るステフに対して話を催促する凛花
「前置きいいからはよ!」
ステフは続ける。
「たまたま、酒場にいて」
凛花の手が止まる。
「お前またか、何度酒でミスるのさ」
人の多い酒場。
ざわざわとした空気。
酒で気分が高揚しだいぶオープンになっている
その中で、一人の男がやけに静かだった。
酒場なのに男の容器の中身は減っていない
少し気になりステフは隣に座る。
「飲まないのか?」
男は少し遅れて答える。
「考えてる」
「何を?」
男は少しだけ迷ってから言う。
「人を裏切る時の対価は、いくらが妥当だと思う?」
よく見ると手が少し震えている
凛花がすぐに突っ込む。
「相談内容終わってる、てかこれから裏切りますってもう言ってる様なものじゃん」
「見ず知らずの男だったからな、当時は日常茶飯事で気にしていなかった」
「俺も酔っていたし適当に答えてしまった」
煙をフッと吐く
男に答える
「銀貨30枚くらいでいいんじゃないか」
「知らんけど」
男はゆっくりとこちらを向きこう告げる
「戯言だ」
凛花は完全に固まる。
「は?」
「……終わり?」
凛花の声が少し低い。
「あぁ」
凛花は額を押さえる。
「なんか凄い聞いたことあるワードだったんですけど」
「その男も酔っていたのかもな」
「いや最初に酒全然減ってないとか言ってたじゃん」
「おかわりしたてだったのかも」
「なんで今回そんな養護気味なの?」
「恐らく決める理由を探していたんだろう」
凛花は強く言う。
「お前が与えてるやんその理由」
「それを実行したかどうかは俺には関係ない事だ」
久々にドライな返答で凛花は黙る。
下の通りの音が、やけに遠く感じる。
「後日談はあるの?」
凛花が聞く。
「有名な話だ、イエスが捕まりそして死んだ」
凛花は苦い顔をする。
「いやお前さ、ちょっとは話聞くとかしろよ」
ステフはゆっくり煙を吐く。
「酔ってたしそういう柄じゃない」
凛花は呆れたように笑う。
「まぁ確かに」
「でもそれで一人の人生も、歴史も変わってるよね」
ステフは答えない。
ただ、夜を見ている。
「……お前煙草吸って遠く見てても何ともなってないからな」
「大体、毒耐性あって酒弱いって本当おかしな身体してるわ」
「酔っても記憶はあるの?」
短い言葉。
「一応....」
「お前もう禁酒、そして懺悔しろ」
外は変わらず賑やかな笑い声がしている




