思想の話
今日の夜は少し静か
凛花はベランダに出てすぐ言う。
「なぁ」
ステフは壁にもたれている。
「三権分立ってあるやん」
ステフは短く答える。
「あるな」
凛花はじっと見る。
「考えたやつ天才よな」
少し間。
煙が流れる。
「話したことはある」
凛花は即ツッコむ。
「もうええてその入り」
賑やかな夜、石畳の道。
人通り多い。
男が一人、考え込むように歩いていた。
「……おかしい」
小さく呟く。
「王が、力を持ちすぎている」
少しして、もう一人が合流する。
議論が始まる。
「このままでいいのか?」
「だが、どう変える?」
言葉は出るが、形にならない。
その横を、ステフが通る。
男がふと声をかける。
「お前はどう思う?」
凛花が笑う。
「通りすがりに聞くなや」
ステフは少しだけ考える。
「一つに偏ってるなら」
足を止める。
「削げばいい」
男は眉をひそめる。
「削ぐ?」
ステフは答える
「分ければいい」
周りに沈黙が訪れる
「例えば」
ステフは続ける。
「決まりを決めるやつ」
「それを実行するやつ」
「それを見張るやつ」
「三つくらいに」
男の目が変わる。
「……三つに分ける?」
ステフは軽く頷く。
「それぞれが上に立つ」
「同じ力は持たせない」
男は空を見る。
何かが繋がった顔をしている。
「……なるほど」
ゆっくり言う。
「力を、分ける」
凛花が小さく言う。
「もう出来とるやん」
ステフはそのまま歩き出す。
後ろで声が聞こえる。
「いや、待て」
「これは……」
言葉が続き、整理され、磨かれていく。
やがて、それは“思想”になる。
風がゆっくり流れる。
凛花は空を見上げるしばらく何も言わない。
「……お前さ」
小さく呟く。
「それ、今の国の仕組みやん」
ステフは特に反応しない。
煙を吐くだけ。
凛花は少し考えてから、顔をしかめる。
「ちょっと待って」
ステフを指差す。
「日本の民主主義の考え方」
一拍置いて、声を強める。
「お前発祥かよぉ!!」
ステフは小さく肩をすくめる。
何も言わない。
風だけが、静かに通り抜けていった。




