贈り物
残業終わり、帰宅し凛花はベランダに出る。
今日は少し静か。
隣を見る。
ステフは手すりにもたれている。
凛花はふと視線を落とす。
ステフの手元。
「……それ何」
小さな装飾品。
金属。
細かい細工。
明らかに、今の物じゃない。
ステフはそれを軽く持ち上げる。
「貰い物だ」
「誰から」
「知り合いだ」
凛花は半目になる。
「高そうじゃん」
「そうかもな」
凛花はじっと見る。
「……これさ」
「なんか変じゃね?」
「何が」
「いや造形」
指で示す。
「こんなデザイン今ある?」
ステフは少しだけ考える。
「17世紀だからな」
「へー昔なら結構貴重なんじゃない?」
これはお宝の匂いがするぞー
うきうきで凛花はスマホを出す。
(装飾品 17世紀 ヨーロッパ)
検索。
似てる。
本物?
「……」
顔を上げる。
これだけじゃあんたがこの時代生きてると信じられないなぁ」
「そうか」
あっさり。
ステフが続ける。
「写真もある」
「……は?」
「昔やってたんだ」
「何を」
「写真屋」
「ほえ?」
やべ変な声出た
ステフは部屋に戻り何かを探している
数分後
一枚の写真をもって見せてくる
古い。
勿論白黒で角は折れ、所々染みが出来ている
二人写っている。
一人は、ステフ。
もう一人。
凛花はスマホを取り出し白黒写真を読み込み画像検索にかける
検索結果
オットー・フォン・ビスマルク
ドイツ帝国の初代宰相を務めたドイツ統一の中心人物であり、「鉄血宰相」の異名を持つ~
色々と説明が出てくる
画面と写真を見比べる。
同じ人だ
「……は?」
凛花の声が小さく漏れる
「これ」
凛花が画面を見せてくる
ステフは軽く頷く。
「ちょうどその頃と一緒だな」
「ちなみにそれも俺が撮った」
凛花は写真を持つ手が少しだけ震える。
「いや」
「待て」
顔を上げる。
「これ本物?」
「本物だ」
「いやいやいや」
凛花は一歩引く。
「いや無理だろ」
「そんなわけ」
言いかけて止まる。
もう一度、写真を見る。
(でも)
(これ)
(加工じゃない)
「……」
凛花はゆっくり息を吐く。
「……この装飾」
「誰にもらったの」
「ナポレオン」
「部下だっただろ?あいつが皇帝になった時よいしょしてたら機嫌が良くなってくれたんだ」
凛花はまたスマホをいじる。
(ナポレオン 装飾品 贈り物)
検索。
記事が出る。
“ルーブル美術館 ナポレオン関連の装飾品盗難”
凛花の目が止まる。
「……おい」
「なんだ」
「これ」
画面を見せる。
「盗まれてるやつに似てんだけど」
ステフはそれを見る。
「似てるな」
「似てるじゃねえよ」
凛花は顔をしかめる。
「お前まさか」
「盗んで——」
「違う」
即答。
「同じ時代のものだ」
「だから似てるだけだ」
「……」
暫くジト目でステフを疑う
でも。
美術館から盗んで捕まらないなんて事ある?
嘘つく為に盗むメリットもない
写真の2ショット
確かに17世紀のデザインの装飾品
もう一度スマホを見る。
一致。
「……」
凛花はゆっくり座り込む。
「えぇ.....」
小さく呟く。
本物?いや流石に....でも写真もあるし......
困惑している様子を見てステフが話す
「本気で信じて欲しいとは思ってない」
「今日これらを見せたのも気まぐれだ」
凛花は少しだけ笑う。
「……なんじゃそれ、信じさせる気ないのかよ」
ステフは少しだけ目を細める。
「どうだろうな」
「お前に任せる」
任せるって言ってもなぁ、マジっぽいの見たし。
けどまぁ変わらない、私にとってこいつはかなり変わった男だという事は。




