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考える者、そうでない者

夜風が少し冷たい。


凛花はベランダに出るなり言う。


「なぁ」


ステフは壁にもたれている。


「アイザック・ニュートンってさ」


「りんご落ちて重力気付いたってやつ、ほんまなん?」


「何故俺が出会っている前提で話が進む?」


「そういうのいいから、そうせなんか関係あんでしょ?」


ステフは少しだけ考える。


「落ちたのは本当だ」


凛花は笑う。

「当たり前だね」


ステフは小さく頷く。


「そうだな」



「だが、あいつは止まった」


凛花は首を傾げる。


「止まった?」


ステフは続ける。


木の下。


静かな昼。


りんごが一つ、落ちる。


その場にいた男は、それを見ていた。


ただ見ていただけじゃない。


「……なんでだ?」


小さく呟く。


「なぜ、下に落ちる」


凛花が口を挟む。


「いや重いからやろ」


ステフは少しだけ笑う。


「普通はそれで終わる」


男はその場から動かない。


「横じゃないのはなぜだ」


「上じゃないのはなぜだ」


ぶつぶつと、止まらない。


ステフはたまたま近くにいた。


「うるさいやつだな」


適当に言う。


「引っ張られてるんじゃないか」


沈黙。


男がゆっくり顔を上げる。


「……引っ張る?」


ステフは肩をすくめる。


「知らん」


「そういうもんだろ」


凛花がすぐツッコむ。


「やっぱお前いるじゃん。てか適当か」


だが男は違った。


その一言を、離さない。


「引っ張る……力……」


地面を見る。


空を見る。


手を伸ばす。


「もし、そうなら」


そこからは早かった。


考え続ける。


測る。


計算する。


止まらない。


凛花は固まる。


「え、それで?」


ステフは短く答える。


「形にした」


凛花は頭に手を置き


「いや待て」


「お前の一言スタートやん」


ステフは煙草を見つめる。


「きっかけだ」


凛花は呆れる。


「そのきっかけがデカすぎんねん」




「でもさ」


凛花が言う。


「普通そこで終わる話やん」


ステフは頷く。


「終わらなかった」


凛花は少し黙る。


「それがあいつだ」


風がゆっくり流れる。


凛花は空を見上げる。


「同じもん見てても」


小さく言う。


「世界変えるやつと、何も思わんやつがおるんやな」

そういいながらステフを見る


「悪かったな、思わなくて」


凛花の笑い声が町の音に消えていく

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