放火
「カエデ! きっと、ノリはまだ死んでないよ!」
私はカエデを励ます
「そうだね……」
「どうしたんだい? お嬢ちゃん達? 泣いちゃって……可哀想だね」
八百屋の店主は、無表情で話しかける。同情の表情なんて全くない。
私は、八百屋の建物に向かって矢をひく
「お嬢ちゃん! 何してるんだよ! やめてくれ!」
私は八百屋の店主に怒鳴られるが止めない
「誰かー!! 来てくれ!! この女がー!!」
『炎の矢』
建物に炎が広がる
「あー!! 俺の店がー!! 燃えていくー!! 冒険者ギルド!! 早く来てくれー!!」
店主の声は虚しく誰も来ない
「やべーぞ。火事だ!!」
建物の中から声がした
「にげろー!!!」
ゾロゾロと人が逃げてきた
私はカエデを抱えては、混乱に乗じて身を隠す
中から、金貸しの面々が出てきた。勿論、ノリの姿はない。
「あいつ、あのまま放っておいて良かったんですか?」
「あぁ。あいつは命を掛けて女を守ったんだ。その対価はきっちりと払わせてやる」
そんな声が聞こえてきた。きっとノリの事だ
「それにしても、あの女腹いせに火を放つなんてムカつくな」
「あぁ……シゲルさん。そうなんですよ。あの、女矢で火を放って……」
「まあ、放火で被害届でも出しておけばいいだろう。八百屋に火を放つなんて、犯罪だからな。まあ、冒険者は辞めることになるだろうな」
「そういえば、ユートさんとユージ坊っちゃまは?」
「あぁ。まだ中で闘ってたよ」
二人はまだ中で闘ってるなんて……逃げるかと思っていたけど予想外だった
暫くしてーー
「フンっ! わかったかボーズ!!」
顔が腫れ上がったユージをユートが抱えて出てきた
「お前が反抗するにはまだまだだな!」
「ユージ坊っちゃん、わかりましたか? もうこんなことするんじゃねぇぞ!」
シゲルがユージに言い聞かせていた
「まあ、息子の反抗期に全力で応えるのも親の仕事だ!」
ユートはそう叫ぶ
「さてと、そこに隠れているのはわかってるぜ! さっきのお嬢ちゃん達……出ておいで」
「「「「!!!!!!」」」」
一同にどよめきが走る
バレてる。私達が隠れている事が。どうすればいいんだ……考えろ考えろ……
すると、カエデが行ってしまった
「私は大人しく捕まるから、アズミは逃がしてほしい!」
か……カエデ!? 何で!?
「おお。わかったよ……ってわけにはいかないんだよ! 俺達が悪い大人だとわかってそれを言ってるのか?」
「うん……」
「それは賢明な判断じゃないね。 俺達は弱者との約束なんて守らないぞ」
「わかってる。それでもお願いします」
カエデは頭を下げた。
「こんな奴らに頭を下げるな!」
私はそれを見て思わず飛び出していた
「ようやく出てきたな! これで全員か……店の修繕費……シゲルの腕……今回の事は全てお前達で落とし前をつけてもらうぜ!」
「こんなみんなが見てる所でそんな一方的に痛め付けるなんてお前達できないはずだ!」
「それが出来るんだな。端から見ると、お前達は店を放火した犯罪者だ。俺は、八百屋に依頼されて悪を討伐する正義のヒーローだ。どうだ? 間違っちゃいないだろ? さてと、悪を討伐させていただこうかね」
ユートが剣を抜いた
私も臨戦態勢に入る……
みんな、悪い奴だからって放火はしちゃいけないよ!




