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そのような愚王子、我が家に必要ございません。  作者: 夏笆


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5/6

5、



「本当に、きれい」

 自分の指で輝く、カーティスから贈られた婚約指輪を見つめ、グロリアはうっとりと呟いた。

「お嬢様も、とてもおきれいです」

 そんなグロリアに、マーサが嬉しそうに声をかける。

 今日は、グロリアたちの卒業記念パーティが行われる日。

 カーティスから贈られたドレスと装飾品を身に纏ったグロリアは、内側から溢れる魅力で満ちていた。

「カーティスと、お揃いなのよ。とても、楽しみなの」

 すらりと背の高いカーティスは、女なのに高身長と揶揄されるグロリアと並んでも、引けを取らない。

 それを嬉しく思っているグロリアだが、ふたり並ぶと美男美女で理想のカップル、と言われていることは知らない。



「わあ。みんな、綺麗ね」

 パーティ会場へ着けば、みんなとそれぞれ挨拶を交わし、それぞれに会話を楽しむ。

「グロリアが、一番きれいだけれどね」

「それを言うなら、カーティスだわ」

 カーティスがグロリアを迎えに行き、そこで交わしてから幾度目となるのか分からない会話を再びし、笑い合ったふたりの前に愚王子マーカスとアメリアが現れた。

「グロリア。アメリアが懐妊した。さっさと邸を明け渡せ」

「ご懐妊ですか。おめでとうございます。ですが、邸のお話というのは?」

 愚王子マーカスの腕にぶら下がるようにして立つアメリアが、そのグロリアの言葉に意地悪く口角をあげる。

「このあたしがあ、あんたんちのお、あとつぎを産んだげる、からあ、お邸もお、あたしたちのものお、ってことよお。わかったらあ、さっさと出て行ってねえ、お財布さあん」

「わたくしの家の後継は、わたくしが産みます」

 はっきりとグロリアが言った時、その隣にはカーティスが凛と立ち、ふたりの後ろには、学友たちがずらりと並んだ。

 そして、愚王子マーカスとアメリアの後ろにも、その腰巾着とも呼ぶべき者たちが並ぶ。

 そのなかで、愚王子マーカスが、再び口を開く。

「グロリア。次期イーデン公爵となるのはこの俺、第三王子であるマーカスだ。その俺の子を産むのはアメリアしかいない、と前にも言っただろう。忘れたのか。愚か者が」

「それなら、きちんと覚えております。ですが、イーデン公爵家の血を引く正当な跡取りは、わたくしです。ですので、殿下のお話を受け、王家と我がイーデン公爵家とのご縁は、白紙撤回となりました。学園入学前ですから、もう三年ほど前のことになります。それこそ、以前にもお伝えしたはずですが、お忘れでしょうか?」

 グロリアを愚者と呼んだ愚王子マーカスは、グロリアのその言葉を鼻で笑った。

「何を馬鹿なことを。世迷い言もいい加減にしろよ?アメリアに嫉妬し過ぎて、おかしくなったか」

 愚王子マーカスがそう言った時、その後ろにいる貴族子息、令嬢も、同じように侮蔑の笑いを浮かべる。

「かあわいそうにい。婚約の白紙撤回だなんて嘘ついちゃってえ。マーカスのことお、脅しているつもりなのお?無駄な事よお。だってえ、だったらあ、なんでえ、あんたんちの家の名前でえ、お買い物があ、出来るのよお。お財布さあん」

「ああ、それでしたら。覚えもない請求書が届きまして。実際の購入者はマーカス殿下とマガフ男爵令嬢と判明しましたので、王家に抗議しましたところ、今後、そのようなことは無いようにするとおっしゃって。そうですね。具体的には、おふたりが、我が家の名前で購入しようとした場合、それは王家へ回すよう、各商店に王家から通達していただきました」

 実際には、婚約の白紙撤回後も、イーデン公爵家へ届くマーカスとアメリア絡みの請求書について抗議したところ、それなら都度王家へ回せ、という回答だったのだが、それでは面倒に巻き込まれると、王家から直接商店への通知にしてもらった、という経緯があるが、そこまでの説明は不要だろうと、グロリアは、驚く愚王子マーカスとアメリアを見やった。

「なっ。じゃあ、本当に?」

「はい。因みにですが。その余りの散財具合に、王太子殿下ご夫妻、並びに第二王子殿下ご夫妻、大臣方が大層ご立腹で。マーカス殿下をそこまで甘やかした国王陛下、王妃陛下は、責任を取るという形で、やがて退位される運びとなっておりますが・・・すみません。当然、ご承知ですよね」

 『王族、貴族は既に周知の事実なのに言ってしまいましたわ』と、グロリアはわざとらしく片手を頬に当てる。

「グロリア。大丈夫だよ。知らない者も居るだろうから」

「そうですよ、グロリア様。もちろん、わたくし達は、存じ上げておりましたけれど」

 そして、カーティスたちのその言葉に頷いたのが、上位貴族だけでなかったことが、更なる波紋を呼んだ。

 貴族なら、誰もが知っていること。

 それを、家から知らされていない、ということが意味するもの。

「ご心配なさらずとも、お家ごと、知らない場合もございましてよ?」

「ああ。家と君たちの意見が一致していた場合は、そうなっているな」

 グロリアが言えばカーティスも言い、愚王子マーカスとアメリアの後ろにいる子息令嬢の顔色が、一気に悪くなった。


ありがとうございます。

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