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「しかし、考えなしの王子も居たもんだな」
親族会議から三日後。
グロリアは、自邸でひとりの男とお茶を飲んでいた。
男の名前は、カーティス・レイン。
イーデン公爵家とは親戚となる伯爵家の三男で、グロリアにとっては、父方のはとこにあたる。
『そもそも、あちらの不良物件を押し付けられたというのに。弁えないどころか、己が上位と信じて疑いもしないなど、言語道断。そのような愚王子とは、即刻婚約破棄でしょう』
『それ、一択ですな』
『本当に。我らが次期当主であるグロリアをそのように貶めるなど。王家にも、それなりの思いをしていただけばよろしいのではなくて?』
『イーデン公爵家の乗っ取りを宣言するとは。もはや、王家よりの宣戦布告と思われますな』
親族会で、第三王子マーカスからの宣言を報告したグロリアに、一族は、一丸となって婚約破棄を決議。
のみならず、王家によるイーデン公爵家への挑戦、宣戦布告だと受け取り、あらゆる面で王家への優遇措置を廃止するべきという意見でまとまった。
結果、父であるイーデン公爵が王城へ向かい、すべての優遇措置廃止と共に、婚約破棄を叩きつければ、国王と王妃は真っ青になり、何とか思いとどまってくれと懇願するも、婚約破棄の意思は固いと見るや、最後の交渉に転じる。
『じゃ、じゃあ!せめて婚約は、白紙撤回にしてちょうだい。可愛いマーカスに婚約破棄の瑕疵が付くなんて、あたくし、耐えられないもの』
『そ、そうだな。イーデン公爵。ならば、こうしよう。王家への優遇措置廃止は、すべての項目を受け入れる。そして、グロリア嬢に責無しと公表し、慰謝料も支払う。だから、マーカス有責の婚約破棄ではなく、婚約の白紙撤回としてくれ』
それを聞いた瞬間、イーデン公爵は、この国の終焉を見て、ひとつの決意をする。
しかしもちろん、それを表に出すことはなく、イーデン公爵家にひたすら有利な、呆れるばかりの結果を、粛々と受け入れた。
「考えなしの王子かあ。本当よねえ。でも、国王陛下と王妃陛下も似たり寄ったりよね。婚約の白紙撤回だって、私にとっても好都合なのに、そのために優遇措置すべて廃止でいいなんて。まあ、ともかく。マーカス殿下と縁が切れて、私は万々歳だわ。でもそれで、あなたに面倒な役が回ってきたわけだけれども」
そう、肩を竦めて言うグロリアに、カーティスは笑顔を見せた。
「面倒なんてないさ。グロリアと居られるのは、純粋に楽しみだ」
学園に入学すれば、愚王子マーカスとアメリアが居る。
何を言ってくるか分からない彼らからグロリアを護るため、そして、この先もグロリアを支えるため、選ばれたのが、同年であるカーティスだった。
既に隣国への留学を決めていたカーティスだが、この現状を受けて、グロリアと同じ学園への入学に変更している。
「悪いとは思っているのよ?でもこの先、家のためには、カーティスが傍に居てくれるのが一番だし、私も、カーティスなら安心だから」
「気にしなくていい。あの愚王子マーカスがグロリアの傍から居なくなるなら、俺が留学する意味もないから」
カップを口に運びながら言うカーティスに、グロリアも穏やかな瞳を向けた。
「そう言ってくれると、気が晴れるわ。でも、カーティスってば、そんなにマーカス殿下が苦手だったのね。一緒にいるのも嫌なほど。まあ、その気持ちは分かるけど」
「・・・だが、国王も王妃も何を考えているのか。婚約を白紙にしただけで、あの愚王子には、特に咎め無しなど。諫めることも、しなかったそうじゃないか」
グロリアの解釈と留学を決めた真相は異なるため、その言葉を苦笑で流したカーティスは、やれやれと首を横に振る。
「おふたりとも、マーカス殿下には、あまあまですもの。これまでもそうだったし、そこは期待していないわ。三男で、可愛い可愛い、って育てたから、あんなことしても別にいい、自分達が何とかしてやれば、と思っているんじゃない?」
国一番の公爵家の婿とは出来なくなってしまったが、それなりの財産を分与してと考えているらしい国王と王妃を思い出し、グロリアは思わず、この国の行く末が心配になった。
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