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雑記  作者: とくめい
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吾輩ハ猫デアルの印象的な料理

 迷亭先生が言っていた蛇飯を作るための鍋って実在するんでしょうか。迷亭先生は作中でだいぶ怪しい知識を言いふらし相手の反応を見て楽しむタイプの友人みたいな書かれ方をしているので実在しない可能性が高いのですが、ちょっと気になる。

 蛇飯が登場するのは第六話。夏の暑い日にやってきた迷亭先生は登場するなり、屋根の瓦でフライにしてみようとバターと卵を落としてみたものの半熟になるどころか固まることすらなく、来客に対応していたら全部流れてしまったと嘘か本当かわからない与太話をして絶好調。いつものように苦沙弥先生と細君によくわからない話をしていきます。

 そこに苦沙弥先生の家に入り浸る元教え子の寒月君が現れ、時間のかかる変な研究ばかりしているけれど縁談の方は大丈夫なのか?という話題から恋愛に関する話題に移行し、迷亭先生の若いころの失恋話として蛇飯が登場します。

 越後の方で貧乏旅行をしていた時、迷亭先生は文金高島田の美しい娘が暮らしている峠の民家に泊めてもらうことになりました。娘の爺さんがせっかくの御客様なんだから蛇飯でも炊いてあげようと言い、迷亭先生もイナゴやカエルやナメクジなどいろいろ変なものを食べてきたので楽しみにしながら調理の様子を見守ります。

 囲炉裏に鍋が置かれ、大小十ばかりの穴が開いた蓋で閉じられていました。迷亭先生はこれを米の蒸気を逃がすためのものだと思っていましたが、爺さんが無数の生きた蛇を鍋に投入してから様子がおかしくなります。

 投入から一分経つか経たないかの頃、逃げ場を求めた蛇たちが蓋に空いた穴から鎌首を出してきて鍋中が蛇の面だらけになってしまいました。やがて爺さんがもうよかろうと言うと、婆さんと娘が返事をし、各々蛇の頭を掴んで鍋から引っこ抜きます。穴のサイズが絶妙で、頭を引っこ抜くと綺麗に骨が取れ、肉だけが鍋の中にうまい具合に残るので飯と混ぜて食べる。迷亭先生は越後でそんな料理をごちそうになったのだと言います。

 

 この蛇飯のために作られた鍋が実在するのか。吾輩ハ猫デアルに出てくる料理の中でもかなりインパクトがあるので何かしらモデルがあるような気はします。

 調べると簡単に元ネタらしきものは見つかりました。荻生徂徠の随筆「飛騨山」に筑紫地方でそうした鍋を使って蛇を食べている村があるという話が書かれているそうです。じゃあこの蛇鍋は実在するのかという話ですが、荻生徂徠も伝聞で書いているようなのでたぶん実在しないと思います。少し残念。


 迷亭先生が失恋したのはこの蛇飯が原因ではなく、娘の文金高島田がかつらで、その下には薬缶のような頭があったからだということです。娘も何か事情があってそうした頭髪であっただろうに失礼な人だと思います。まあ漱石が自分の私生活をモデルにしているとはいえ吾輩ハ猫デアル自体フィクションですし、迷亭先生の言葉はだいたい作り話なので真に受けるのも馬鹿らしいですが。

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