胆石の手術前に読んではいけない本
胆石の手術を行いました。
胆石はとても痛い。私の場合、夜に腹の辺りから猛烈な痛みが生じます。あまりにも痛すぎて便意のそれではないなというのがすぐにわかります。
しばらくすると痛みが胸や肩や下腹部、背中など胴体のいろんな場所に移動していきます。正体が一切判らず、ただ強烈な痛みに襲われる。脂汗をかきながら少しでも楽な姿勢を探すしているだけで夜が明けてしまう。消化器官の痛みではないので整腸剤とか正露丸、酸化マグネシウムみたいなものは聞かない。炎症よりも胆のうが収縮するときに出入り口を石が塞いでしまうために起こる痛みがはるかに強いので、ロキソニンのような炎症に作用して痛みを弱める薬もほぼ効果なし。耐えるしかありません。
尿路結石と違ってあまりメジャーではないし痛みも移動していくので自分では正体が判らない。しかも朝になると痛みは治まっている。診断されるまで本当に訳が分からず、朝になったら痛みもないので病院に行くべきなのかという判断も鈍ってしまう。厄介です。
胆のうは油分を分解する胆汁を濃縮、貯蔵する臓器です。なので脂分の多い食事(夕食がそういう傾向にある)の後に胆のうが収縮して腸内に胆汁を放出していきます。その際に石が胆のうの出入口を塞いで筋肉が収縮できなくなり痙攣するなどして強い痛みに繋がる。痛みがです仕組みはこういう感じらしいです。
胆のうが胆汁を作っているわけではなく、あくまでも肝臓が作り出した胆汁を貯蔵する臓器なので摘出しても多少油分に弱くなるだけで大きな問題にはならない。だから昔から手術で摘出するという治療法が用いられてきました。(現在は薬剤で溶かすとか超音波で石を砕くなどの治療法もありますが、サイズが大きかったり石灰化してしまうと手術しかなくなります)
私の場合は検査の結果手術するしかないと言われました。開腹するしかなかった時代と違って今は腹腔鏡で摘出し、切った部分にクリップをつけるだけで済むから体への負担も軽い。ただ、手術できる先生が結構忙しいし胆石は優先度も低いので入院して手術できるタイミングが来るまで待機しましょう。そういう説明を受けて入院しました。数日間の待機が前提なので読み終えていない本を持ち込むなどしました。
その中にあったのが色川武大先生の「怪しい来客簿」です。色川先生と言えば阿佐田哲也名義での麻雀小説が有名で、雀聖とも呼ばれている方ですが、本名の色川武大名義で私小説とかエッセイ、純文学に分類される著作を多数執筆している事でも有名です。
この「怪しい来客簿」もエッセイと短編連作小説の中間のような趣で、実体験を面白おかしく小説として仕立ててあります。
色川先生は一度、胆石の手術の失敗で生死の境を行き来した経験があります。麻雀雑誌の編集部などが追悼特集の準備をするくらいには危なかったそうで、腹腔鏡を手術に用いていなかった時代のリスクの大きさがわかります。まあ腹腔鏡よりも胆のうが他の臓器に癒着したり、かなりひどい状況だったのが自体を悪化させる原因だったのかもしれませんが。
色川先生はこの時の経験を「怪しい来客簿」の最後の短編「たすけておくれ」で書いています。
これが胆石の手術前に読んではいけない本です。本当に死にかけている。ここまで悪化することなんて本当に稀なのだろうというのは素人でもなんとなくわかるのですが、それにしたって胆管の一部が石のように固くなって切除するしかなかったなど、同じ胆石の手術を控えている身としては絶対読みたくない話が展開します。
私の手術は上手くいき、すぐに退院できて問題なかったのですが、持ち込む本を間違えたと強く後悔しました。
入院前に読む本は多少のネタバレを許容してでもいい感じのものを探して選んだ方が良い。
逆に比較的簡単と言われる胆石の手術でスリルを味わいたいなら「怪しい来客簿」を読むのがお勧めです。




