ヴォルフガング・ベルトラッチ(ベルトラッキ)
とんでもない人物だと思っています。被害者の方には本当に申し訳ないのですが、所業があまりにも現実離れしていて面白いと感じてしまう。
私がこの人を知ったのはBS世界のドキュメンタリーで2016年に放送された「贋作師ベルトラッチ ~超一級のニセモノ」元はドイツで2014年に放送されたドキュメンタリー番組。
絵画の修復師で無名の画家だった父を見て育ち、若いころから贋作を作り始め、制作から販売まで全て自分と妻のヘレーネで行うようになり莫大な利益を手にした。最後はその時代に使われていなかったはずの絵具を使ってしまうという平凡なミスで捕まってしまったものの(年代物の家具を集め、ヘレーネに昔の女性のファッションをさせ、贋作を壁にかけて白黒写真に収めるなど)あらゆる手を尽くして贋作を真作として画商に売る詐欺師としての手口が本当に、事実は小説よりも奇なりを体現しています。ドキュメンタリー作るだけで完成度の高いエンターテイメント作品になってしまう。
特に面白い点として、目録などに名前だけは載っているけれど戦争などで行方が分からなくなって実物を誰も見たことがなかった作品だったり、画家のキャリアの空白期に作られた作品をでっちあげたりと、贋作として普通思い浮かべるような既存の有名作品の模写ではない形で絵画を世に送り出しているというのがあります。誰も実物がどんな姿をしているのか知らないので真贋を判定するのが困難なだけでなく、失われたあの作品が?空白を埋める作品が?という感じで真贋を鑑定する立場の人が「本物であってほしい」と思うものを作るのが上手かった。だからどうしても鑑定する研究者が冷静でいられず、真作であるというお墨付きを与えてしまう。
贋作画家として成功するには絵が上手いだけでなく、心理的な揺さぶりをかける巧みさが必要なのだと思います。
ドキュメンタリー番組の中でマックス・エルンストの画風をまねた絵を完成させたときに「ここにエルンストの名前を書けば贋作になる」などと言いながら自分のサインをしたり、悪びれもせずにまだ見つかっていない贋作がたくさんあると言い放ったり、高く売った方が相手は本物だと信じてくれると詐欺のコツを語ったり、他人を翻弄し喜ばせる話術が本当に上手い。
数年前、ベルトラッチがNFTに参入するみたいなニュースが流れた時は、あのうさん臭いNFTに関わるなんてこれぞベルトラッチだと思ったものです。
実害さえなければ手放しに面白い人物として扱っていいのでしょうけど、だいぶ多くの被害を出しているという欠点が大きすぎる。そういう人物です。好きですがそれを公言するのがはばかられる。




