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第六話 メルキオール 1


第六話 メルキオール 1


 「あのっ!」


私とメルキオールの会話を聞いていたハンナが、意を決したようにメルキオールに話しかけました。


「貴方はお嬢様の加護竜様なのですねっ?!」


「ちげーわ」


「え?」


にべもなく断言されて、ハンナは愕然としたようです。

 そのハンナのこの世の終わりのような表情と私の顔を交互に見てメルキオールは、はあーっ、とため息をつきました。もしもオッサンだったら、頭の後ろをガシガシ掻く仕草をしたであろう、そんなため息でした。


「加護、付けてほしいのかよ?」


そりゃあ、付けてくださるなら嬉しいです。だって生まれてからずっと、お前は加護付きだって言われて、けれど竜紋が現れなくて、義母義妹やレオンハルト殿下に嘲罵されてきたのですから。


「悪いけど、加護は、俺はまだできねーんだわ。でも今みたいに襲撃から護るくらいはできるから、とりあえずはそれでいいならやってやるよ」


メルキオールはそう言って、地面に倒れて呻いている山賊たちに向かってシッポをシュッとふりました。すると、中空に銀色に光る大きな網が現れ、大きく広がったかと思うと、ばさりと山賊たちを上から包み込みました。思い出した前世の知識で言うなら、魚を獲るための投網みたいな感じです。


「うわあっ」


「なんだこれはあっ!」


山賊たちは藻掻きますが、投網は生きているかのように山賊たちを絡めとり、グルグル巻きにして逃がしません。


「悪い奴を野放しにするわけにはいかないじゃん」


おとなしくしてろ、とメルキオールは山賊たちに言いますが、あのまま放置していいのでしょうか。お腹が空いてしまうのでは?


「あのネットで包んである間は、いくら腹が減っても死なねーよ。だいたい自分を襲ってきた奴らの腹の心配するとか、お人好しすぎるだろ」


後で憲兵に回収させろ、とヨハンに言いつけて、メルキオールは私に向き直ります。その目は、山賊にざっくり切られた私の腕を、いたましそうに見ました。


「・・・痛かったか?」


「・・・少し」


「少しじゃねーだろうが、バカが」


メルキオールはそう言って顔を寄せ、傷口をちいさな舌で舐めました。


「え?」


舐められた傷口が淡く金色に光ったかと思うと、すうっと傷がふさがったのです。傷痕すら残りません。


「傷が、消えた・・・?」


「まさか、ドラゴンの治癒魔法・・・?」


ハンナもヨハンも驚いて目を丸くしています。

 そして。


「くっ、痛え・・・?」


網でぐるぐる巻きにされている山賊の中のひとり、私の腕に切りつけたひげヅラ男が、声をあげます。


「治癒したんじゃなくて、傷をつけた本人に返したんだよ」


ドラゴンの魔力で傷を治すことも可能ですが、治すよりも傷をつけた犯人に返すほうが、使う魔力量が少なくて済むのだそうです。とても合理的ですね。


 「ところでお前ら、なんでこんな夜中に山越えしてたんだ?」


メルキオールに問われて、私は今までの経緯を話しました。


「ふーん。じゃあこの先の高原の、そのシュタールなんちゃら、って奴ンとこへ行けばいいのか」


「はい」


「じゃあ、俺も行く」


「・・・はい?」


「リゼが行くんだったら俺も行くに決まってるじゃん」


おら、とっとと乗れ、と、メルキオールは私たちを急かし、馬車に乗り込むと、私の膝の上にちょこんと座りました。



ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。


次回、第七話『メルキオール 2』

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