第五十四話 調査団来訪
第五十四話 調査団来訪
瘴気をデトックスする温泉の評判があまりにも高まり、王政府から調査団が来ることになったとヘルマン様が知らせてくださいました。
「アウエンミュラー公爵閣下と元王太子がいらっしゃるそうです」
父と、元王太子? レオンハルト様が、ですか?
「調査目的は、どのような?」
「温泉の効能、アース・ドラゴンの存在を確認すること、聖女が加護付きであるかないかを確認すること、だそうです」
加護付きかどうかを確認する、とは、加護紋があるかどうかを見るということでしょうか。男性であるアウエンミュラー公爵と元王太子が、未婚の女性の裸を見るわけにはいかないでしょう。そのため、王宮の女官長が一緒にお越しになると言います。王妃陛下の腹心だそうで、公爵令嬢のリーゼロッテだったら身分的には拒否できるかもしれませんが、平民の女性教師であるという設定でいく場合、拒否はできない身分の方、ということになりましょう。
「大丈夫ですか?」
驚く私に、ヘルマン様は心配そうです。
「私は大丈夫だと思いますわ。そう思うでしょう?」
ハンナとセビーに言うと、肯きつつビミョ~に首を傾げます。かつてのジミだった私とは、全くの別人にしか見えませんのに、なんでしょうかその生温かい笑みは。
「心配なのは、お嬢様に腹芸ができるかどうか、でしょう」
セビーが眉を片方だけ上げる笑みで言い、ハンナも同意します。
「左様でございますわね。くれぐれも態度や口調など、公爵家にいらした時と同じにはなさいませんように」
「え、じゃあ神田愛由香剥き出しフルスロットルでおk?」
「それは・・・、はなはだ不本意ですが」
「まがりなりにも教師である以上、JK言葉はお控えくださいませ」
一応、教師なので、あんまりくだけた口調は品位に関わるということですね。
それでも、私よりもハンナとセビーと、それからヨハンのほうが、父に姿を見られたら一発アウトでしょう。セビーとヨハンは髭を伸ばして風貌を変えようとしていますけど、ハンナは女性ですから髭はありませんし、そもそも平民の教師に専属メイドがいたらそれだけで不合理でしょう。
「ハンナとセビーとヨハンは、絶対に姿を見られないようにしてね?」
「はい」
「調査団は、どのくらいの期間、滞在される予定なのでしょうか?」
「一週間から二週間ほどと伺っております」
あれから意識して、神田愛由香の口調や意識に寄せています。無頼言葉ほどぞんざいではなく、お嬢様言葉でもない、・・・かといってがっつりのJK言葉でもないしゃべり方って、意外と難しいです。マジ、は言っても激おこぷんぷん丸、は言わないように。イケメン、は言ってもパネエとかチョベリグ、は言わないように。
セビーはどこかに出掛けてしまいました。ハンナは、新しい領主館の離れにいただいた私の居室から出ないようにするといいます。ヨハンは、できるだけ牧場に行って、街中には行かないようにすると言っておりました。
調査団が来訪しました。
私は学校の授業やお仕事をすべて終えた夕刻に、新しい領主館の応接室で、他人のフリをして父と元婚約者である元王太子と対面したのです。
が。
平民の教師設定なのでカーテシーではなく普通のお辞儀の挨拶を、なんとか済ませました。
ですけど。
瞠目・・・、してしまったでしょうか。したことを、気づかれてしまったでしょうか。
だって。
―――え? レオンハルト様?―――
と、口に出すことは、かろうじて押しとどめることができました。
ですけど。
レオンハルト殿下はヒョロガリのモヤシ(エノキタケかな?)が金のマツタケの被り物を被ってふんぞりかえって威張っているような御方だったはずでした。顔だけは無駄によかったですが、筋肉なんて幼児レベルくらいしか無かったはずでした。
それなのに、なにをどうやったらこんな、ムキムキのゴリマッチョ筋肉ダルマになるのでしょうか。
筋肉増強魔法でも使ったのでしょうか? そんな魔法があるのかどうか知りませんが。
ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。
次回、第五十五話 再会




