↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/51

第十九話 特別な場所


第十九話 特別な場所




 「メルさん、どうなの?」


私は膝の上に置いていたバスケットに向かって話しかけました。絶対、狸寝入りで話を聞いているはずだと思ったからです。

 バスケットを開けて覗き込むと、案の定、メルさんは舌打ちをしました。見た目はちいさくて可愛いのに、やることや口調がオッサンくさいの、本当にギャップがひどいです。

 今も、さも嫌そうにヘルマン様にむかってガンを飛ばし、バスケットから出て来てふてぶてしく大あくびをしながら、私の肩に乗りました。頭に乗らなかったのは、一応、気を使ったつもりなのでしょうか。


 しかし。


「ヘルマンとか言ったな? お前の言ってることもあながち外れてはいねえよ」


メルさんの無頼者のような言葉遣いに、ヘルマン様の側近の方々が目を白黒させています。


「俺が生まれたことも原因の一つだ。それは謝る。人間に迷惑をかけるつもりはなかった」


うわあ、どういう風の吹き回しでしょう。メルさんが素直に謝るなんて、明日は雪が降るのでしょうか。


 「だが、この地のエナジーに異変が起きてんのも事実だ」


「異変・・・?」


「おう。滞ってるか、汚染されてるか・・・」


 メルさんいわく、もともとシュタールベルク領の高原は、良質なエナジーにあふれる地であったそうです。


「ここはな、数千年前、俺と、水竜が祝福を与えた地なんだ」


だから特別な場所で、地と水のエナジーが大量にあったはずなんだ、と、メルさんは言います。数千年前ということは、前世でしょうか。今世は生まれたばかりだと言っているのですから。


「この場所の近くで、リゼが襲われた。だから俺は普通じゃない早さで自分を組成することができたけど、こんなちっちぇえ身体だった」


普通だったら、もうちっとはでかかったはずなんだ、と言うメルさんを、ヘルマン様はじっと見つめています。見つめられてメルさんは視線を鬱陶しがるように鼻を鳴らしました。


「地下水が汚染されてると言ったな?」


「はい」


「そのせいで、エナジーが歪められているか、滞っているのかもしれねえ」


「水の汚染だけではありません。瘴気にも苦しめられております」


瘴気の被害は深刻です。それは、王都でも時折ありましたから、私でもわかります。


 「それと、リーゼロッテ嬢を襲った盗賊の件なのですが」


「あ」


そうです。メルさんが無茶な早さで自身を組成したのは、私が盗賊に怪我をさせられたことが発端でした。


「連行しましたが、実は・・・」


捕縛してみたところ、盗賊は、シュタールベルク領内の者だったそうです。


「北側の村の者たちだったのです」


この街を経由して東の隣国へ行くのとは別に、分岐して北へ向かう街道沿いの村の人々だったと言うのです。東の隣国の鉱山からの瘴気とは別の、森の瘴気に苦しめられている村だそうです。


「いくら瘴気に苦しめられているからって旅人を襲っていい理由にはならねえ」


「はい。この地を統べる者としてお詫びいたします。管理がいたらず、申し訳ありませんでした」


きっちりと頭を下げるヘルマン様を見て、メルさんは少し、思案します。


 「処罰のかわりに、そいつらに地震の後片付けをやらせりゃいいじゃん」


「はい?」


「救助はやってやったけど、後片付けは人力でやれっつーの。俺はその水質汚染の全容を調べるから、三日、時間をくれ」


「三日?」


三日くらい眠らないと、地脈に潜るだけのパワーが溜められねえんだ、というメルさんがなにをしようとしているのか、私にはわかりません。





**********


裏話


メルキオールが頭にしがみついた状態で街に行って救助活動をした時のことを、リーゼロッテがハンナに愚痴る。


リ「だってさあ、頭にしがみつく意味ある?! 肩に乗るほうがまだ絵になると思うの。頭にしがみついてる時点で、ギャグにしかならないよっ」


ハ「お嬢様っ!」


神田愛由香の口調になると、ハンナから厳しい指導が入る。



ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。


次回 第二十話 地脈探査

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。