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第十五話 救助活動


第十五話 救助活動




 人々の視線が私の頭に集中して、猛烈に居た堪れません。もともとがとてもジミな容姿でしたから、見られる、ということにとても委縮してしまうのです。まあ正確には、人々が見ているのは私ではない・・・はず、だと思いたいのですが。ええ、切実に。


 帽子をかぶっているかのように、私の頭にメルさんがべったりとへばりついて乗っています。重さはハトくらいなので重いというほどではありませんが、なにをどう考えたって、嫌がらせ以外のなにものでもありません。毟り取って投げ棄てたいです。


 その状態で、まだまだ混乱が続いている街を歩いているわけですから、そりゃあ見られます。恥ずかしくて泣きたいくらいに注目の的です。


 そして、救助活動が難航しているところを見つけて、アース・ドラゴンが瓦礫をどかしますと叫ぶわけです、・・・私が。


 最初は誰も本気にしてくれませんでした。竜のオモチャを頭に乗せた狂人が、なんか言っているとでも思われたのでしょう。


 しかしメルさんが魔力で瓦礫を宙に浮かせて移動させると、状況が一変します。


 崩れた煉瓦の山、壊れた屋根などを、まるで紙でできているかのようにふわっと宙に浮かせるのですから、驚くのも無理はありません。


 普通、ドラゴンは自身の属性の魔法しか使えないのだそうです。

 ファイア・ドラゴンなら火の魔法、ウォーター・ドラゴンなら水の魔法しか使えないのです。


 しかしアース・ドラゴンは、程度の差こそあれ、自身の属性以外の魔法を使えるそうです。

 今、メルさんは風の魔法で土埃が舞い上がらないようにしながら、土の魔法で瓦礫を浮かび上がらせて動かしているわけです。

 驚く人々に、私は叫ばなければなりません。


「早く救助してください! 他にも助けを待っているひとがいます!」


瓦礫を浮かせることができるなら、救助を待っている人々も浮かせて動かしてあげればいいのにと、最初は思いました。救助のために働いている人々も、そう思うでしょう。


 しかし人間や動物を浮かせて動かすのは、瓦礫を動かす数十倍も魔力を消耗してしまうのだそうです。


 何故なら、人間や動物の身体はタンパク質でできているから、だそうです。ドラゴンは自然界のエナジーの化身ですから、自身の源になっている自然物を操作することは容易ですが、組成が複雑なたんぱく質である上に意思や知力、記憶や感情など自然現象とは違うエナジーを内包している人間や動物を動かすためには、大量の魔力を使わなければならないのだそうです。


 でも、すごいです。猫くらいの大きさしかなくても、アース・ドラゴンであることは伊達ではないです。人力で撤去していたら何時間かかるかわからない瓦礫の山を浮かせてどかして、要救助者の上から取り除いていく様子は、前世で見た重機なんか比べ物にならないほど素早く的確で無駄が無く、なんといっても静かです。


 三十か所くらい、救助活動を手伝った頃、フロリアンさんとヨハンが走ってきました。


「お嬢様!」


ヨハンが私を見て血相を変えます。

「お顔の色が・・・」


「あ~~~、メンタルがね~、ゴリッゴリ削られて・・・」


ただでさえ人前でなにかすることに慣れておりませんのに、こんな目立つやり方で救助活動を手伝うとか、神経がもちません。ぶっちゃけ、スカートを切って供出したり怪我人のお世話をするほうがまだマシです。リーゼロッテ・アウエンミュラーは、ずっと、ハデな顔の義母義妹にジミだジミだと虐げられてまいりましたもので、自己評価が低いのです。アース・ドラゴンの魔力で救助活動をすること自体で注目を浴び、驚かれ、あたかも私がドラゴンを使役しているかのように思われて畏敬の目で見られて感謝されるなんて、居た堪れないのです。


 この時、私はメンタルを削られ過ぎて、自分が生まれ育ったリーゼロッテでも神田愛由香でもない、メルさんにとってのリーゼロッテである姿に変わったことを忘れていました。

 モブが美人になったことを自覚して行動するなんて、一朝一夕にはできるはずがありません。絶対、挙動不審になっています。


 「ヨハン。マイヤー老人に言われたの。私とメルさんが救助活動をするから、メルさんが捕縛した盗賊を回収してきてくれる?」


メルさんの魔力が途絶えているから早く回収しないと、と言うと、フロリアンさんが同僚さんに頼んでくれましたので、ヨハンは道案内だけでいいようです。また、シュタールベルク辺境伯にも、ただちに伝令を走らせてくれました。メルさんが救助活動をしていることは、最優先事項として伝えるべきと判断したそうです。


 ですが。


 自己評価の低いジミ令嬢の豆腐メンタルは、居た堪れなさが天元突破してしまったようです。

 いろいろと限界だった私の意識は、ヨハンを見送ったところでぷつっと途切れました。



ここまでお読みいただき、どうも有難うございました。


次回、第十六話 ホーリー・メイデン?【ヘルマン・シュタールベルク視点】

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