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【イタ☆恋!】新・江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜☆現代コメディ・ファンタジー☆  作者: 綿野草空希
23 横恋慕は真剣に

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96/144

23.3 最初の日射病3

 三人で歩き、校門を潜る。


 友人二人は、ピタリと僕の左右に並ぶ。


 ウザったいこと、この上ない。


 「ん?」

 ふと、椎名君の腕に、見慣れない物がついているのに、気がついた。


 手首から肘近くまで、黒い物体が巻いてある。


 「椎名君。その腕に巻いてるのは、何? 日焼け防止のアームカバー?」

 美白マッチョ……いや、美白中肉中背でも、目指しているのだろうか?


 「ん? あぁ、コレは5キロの重りだ。昨晩から、両腕、両足に一つずつ巻いている。ふうぅ……」

 椎名君が重そうに、腕を挙げて見せてくれる。


 確かにソレは金属製で、よく見ると、とても重そうだ。


 「フウゥ……これは俺が考えた、光学迷彩スーツを着こなすための訓練なんだよ」

 若干《じゃっかん》、ぎこちない歩き方の中肉中背が言う。


 「4つで計20キロになる。これからは一日中、コレを装着したまま過すつもりだ」


 「それは凄いね……」

 (だから坂を上るのが、妙に遅かったのか)

 納得した。


 しかし、昨晩、重い光学迷彩スーツを装着した時よりは、息が上がっていない。


 (へえぇ、椎名君も大したモノだなぁ。そのうち、中肉中背って馬鹿に出来なくなるくらい、マッチョになる日が、来るかもね)

 友人の努力に感心する。


 (よしっ。なら今のうちに、散々、馬鹿にしておこうっ)

 僕は心に決めた。


 「ところで、今日の三限目の体育は、マラソンって聞いたけど? 重りはどうするの?」

 僕は友人の体と頭を、心配して聞く。


 「ほう。それは丁度良い訓練になる。是非、このまま走らせてもらうぞっ。ふふふっ……」

 中肉中背はニヒルに笑って、意に介さなかった。


 やはり、頭が心配だ。


 「………………」

 そのやり取りを聞いていた一宮君は、ただ黙って、首を竦《すく》めるだけだった……


――――――――――

―――――

――


 昇降口で上履きに履き替え、教室へ向かう。


タタタタ……

 「由比里君、おはよう」

 どこからともなく、芹園さんが小走りにやって来た。


 すかさず二人が、素早く離れて場所を空ける。


 無駄にフォーメーションが、抜群ですね。


 「おはよう、芹園さん」

 返事を返す。


 と、当然の如く、芹園さんは僕の隣に並んで歩き出した。


ぴとっ

 彼女が肩を寄せて来ると、フワッと良い香りがした。


 一宮君は、静かに気配を消して、後方を歩く。


 椎名君も、静かにポージングを取って、後方を歩く。


 (う~ん、黙って歩くのも変だし、何か適当な話でもしようか)

 早くも沈黙に耐えかねてしまう。


 「……今朝は天気がイマイチだよね。雨、降るのかなぁ?」


 「天気予報では、今日の午後から雨が降るかもって」


 「そうなんだぁ。……このまま、梅雨に入っちゃったら嫌だよねぇ」


 「うん。でも梅雨はもう少し先だって」


 ……凄まじく、どうでもよい会話だ。


 いっそ、マッチョ用語で天気を語ればよかったか?


 そんなことを思いつつも、とても気になることがある。


 それは、芹園さんは話しながらも、近距離で僕を、ジッと見つめ続けていることだ。


 (なんか、こんな潤んだような瞳で、上目使いで見つめられたら、その気がなくても、ドキッとしちゃうよね……)

 この人は、性格はアレでも、本当に美人なのだ。


 「どっ、どうかしたの? 僕の顔に何かついてる?」

 見つめられることにも耐えかねて、冗談っぽく聞いてみる。


 「ううん。……由比里君、昨日も格好良かったけど、今日は一段と格好良さが上がった気がして……ね」

 そう言うと、ポッと頬を染めて、俯《うつむ》いてしまった。


 「そそそうですか……どうもありがとう……」

 美人の、あまりのストレートな褒め言葉に、僕まで顔が赤くなってしまう。


 そのまま僕らは顔を赤くし、黙って肩を寄せ、廊下を歩き続けた……


にや……

ニヤ……

 後ろで友人たちが、いやらしい笑顔を浮かべたことにも、気がつかずに……


――――――――――

―――――

――


 教室の前で、別クラスの芹園さんと別れる。


カササッ

 離れていた二人が、ブリゴキみたいな音を立てて、また横につく。


 教室に入り、席に座る。


カササササッ

 友人二人は、それぞれが席に荷物を置くと、またすぐに僕の席に寄って来て、張り付いた。


 教室でも、徹底マークを止める気は、無いようだ。


 「よしっ! では始めるかっ! ……いちっ! ふうぅっ・にっ! ぐぐっ・さんっ! くっ・しっ!」

 しかも迷惑なことに、中肉中背がすぐ横でスクワットを始めた。


 20キロのウエイトをつけたままの、無茶なスクワットだ。


 「♪フヒ~~・ヒルルルルゥ~~……」

 一宮君は、下手な口笛を吹いて、中肉中背とは他人のふりをしているが、それでも僕から離れようともしない。


 「こっ、こいつはっ、効くなっ! ななっ! くっ・はちぃぃ!」

 中肉中背は妙に嬉しそうだ。


 変態なの?


 この奇行&密着マークのお陰で、クラスの女子に囲まれなくて済むが、青浜さんに近づくための、移動も出来ない。


 「はあぁ~~」

 諦め、溜息をついて、辺りを見渡す。


キョロキョロ


 ヤンキーの磐田君は、奇行は眼中に無いといった様子で、友人らと話している。


 (ん? なんだ?)

 4人ほどの女子が、一か所に固まっているのが、目に留まった。


 「――ねえ見て見てっ! 新怪人のナポリタン様っ、格好イイでしょ!?」

 女子の一人の声が、耳に入る。


 女子は固まって、スマホを見ているようだ。


 「――何コレ? ……怪人の戦闘??」


 「――あー、昨日の夜の戦闘ねぇ。ピュア・シャイニングファンの兄貴が、話してたわぁ」


 どうも、昨日の戦闘を、スマホで見ているらしい。


 他人事ではない……と、いうか完全に当事者なので、とても気になる。


 注意深く、耳を傾けることにした。


 椎名君も気がついたようで、奇行(スクワット)を止めて、ジッとしている。


 一宮君も、下手な口笛は止めた。


 「――そー言えばあんたは、B.I.P.のファンだったねぇ」


 「――なになにー? なに見てんのぉー?」

 さらに数人の女子まで、その輪に加わって、ワイワイと言いながら、画面を覗き込んだ。


 「――え? コレ格好良い?」


 「――ウチは微妙ー。マスクで顔分からないし、触手が何か、エッチっぽいし」


 「――えぇーー絶対、美形のイタリア人だってっ! 有名サポーターのサイトでは、もうファンクラブが立ち上がってるしっ」


 「――てか、何でマントの襟《えり》立ててるの?」


 「――あー、それは私もどうかと思うけどさ」


 「――あたしは逆にアリかなぁ? 襟《えり》立てマント、ちょっと可愛い」


 「――え? それは何フェチ? 襟《えり》フェチ? マントフェチ?」


 「――んっ! やっぱりちょっとカッコいいかも? わたしもB.I.P.のファンになろうかなぁ?」


 「――うんうんっ、成りなよっ。手続き簡単だし、今、キャンペーン中でポイントが付いてくるよっ」


 「――へぇー、そーなんだぁ。どうしよっかなぁ~」


 「――え? それより、悪の組織のポイントってなによ?」


 「――でもさー、この怪人って凄まじい負け方をしたんでしょ? もう、再起不能なんじゃないのかなぁ? 兄貴が[アレは死んだな]って笑ってたよー」


 「――まっ、まあ、一、二ヶ月は復帰しないかもだけど……でも、今朝のB.I.P.の公式サイトでは[順調に回復中で、本人も再戦を誓っている]って書いてあったしっ」


 「――えー、案外、もうイタリアに帰国してるんじゃないのぉ?」


 「――いや、その前に悪の組織のポイントって、なにか教えてよ?」


 (治癒能力があるから、死んでませんよぅ)

 聞きながら、つい心の中で反発してしまう。


 「本当にしぶといで御座るよなぁ」

 「イケメンが解けるまで、入院でもすれば良かったのにな」

 二人がとんでもないことを、ぽつりと呟く。


 「いや、だったらいっそのこと……」

 「ああ、いっそのことな……」

 二人が不穏な呟きを続ける。


 (いっそのことってなんだよっ、おっかない)


 何て酷い、怪人付き戦闘員なんだ。


 「――ねえねえねえ。悪の組織のポイントって、なんなの?」


 その後、珍しくランス(大岡)先生が遅刻せずにやって来て、ホームルームとなった。


 5秒で白衣を翻《ひるがえ》し、終了したけど。


 「――あのさ。悪の組織のポイントって……」

第23章「横恋慕は真剣に」

終了まで、あと3話


 


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