22.4 DIRTY OLD BOY8
「このスーツは周囲360度に、無数に貼り付けた超科学有機LEDモニターに、それぞれ反対側……つまり180度裏側の景色を投影して、透明に見せる怪人スーツだ」
神城岬先生はまた、煙草を一本取り出す。
吸いすぎですよ、先生。
「問題点としては重いことで、今は軽量化を目指している所だ」
「現状は超科学光学迷彩スーツの自重が約20キロで、30分稼動するのに必要な、電力を供給する背部バッテリーも約20キロあり、総重量は40キロ程度になるからな」
神城岬先生は、ポケットから百円ライターを取り出しながら話す。
「40キロっ!? それは重過ぎるので、コレは間違いなく失敗作ですねっ」
僕は忖度なし、社交辞令なしで、しっかりと断言し、いいねっ! と親指を立てる。
「馬鹿か、お前は。これは失敗作ではない。この下に戦闘員パワースーツを着るから、装着者の体感は半分の20キロ程度に感じるはずだ。なっ? ギリギリ許容範囲内だろ?」
「いいえ。20キロでも十分、重すぎですよ」
それで戦える訳がない。
馬鹿は先生です。
「僕は絶対、着ませんよ?」
戦闘で負けるのが、目に見えている。
「ふんっ! 新手のAV男優みたいな格好をした、猥褻怪人なんかには頼まないよっ! また戦闘で悪用して、ピュア・シャイニングへの性犯罪に使いそうだしなっ」
ビシッ! と、僕に中指を立て、煙草を咥えた。
お下品な人だ。
合衆国大統領か。
「おいっ、一宮、椎名、お前らはどうだ? コレを着て、開発被験体として出撃してみないか? 別途、手当もつくぞっ。ただの怪人付き手当なんかより、はるかに割高な、良い手当てが出るぞ」
「で、御座るか……」
一宮君は、難色を示す表情を見せた。
が、一方
「素晴らしいっ! 俺がやりますっ! 」
中肉中背が、喜色満面で諸手を上げて、志願した。
「体感20キロとはなっ! それならトレーニングにもなるし、一石二鳥だっ! アブドミナル・アンド・タイっ!!」
小躍りして、無い筋肉をアピールした。
馬鹿は中肉中背の友人でした。
僕は溜め息をつきながら、カーニバルマスクを外して、バスローブのポケットに突っ込む。
コレでもう、新手のAV男優とは言わせません。
「よしっ決まったっ! それではっ、試作型保護色怪人亀レオン(仮)よっ! 早速、装着するのだっ!」
神城岬先生が、ノリノリで白衣をババンっと翻した。
「一宮とイケメンAV男優[ジェラート由比里]よっ、装着を手伝うのだっっ!」
「変な名前を、つけないで下さいよ……」
結局、カーニバルマスクを外しても、バスローブを着てる限り、ずっと弄られそうだ。
椎名君が試しに装着するのを、僕らが嫌々、手伝わされる。
まず、僕と一宮君が協力して、椎名君の戦闘員パワースーツの上に、リュックのような背負うタイプの、背部バッテリーを装着する。
「うっ!? ぐっ!?」
椎名君が、驚きの呻き声を漏らした。
もちろん、スーツのアシストが効いているはずだが、これだけでもう重そうだ。
ケーブルを、背部バッテリーから光学迷彩スーツに繋ぎ、さらに光学迷彩スーツの袖口から、超科学有機LEDモニターが無数についた、指無しグローブにもケーブルを繋げる。
そしてアイマスクを装着した椎名君に、重いスーツを、合羽のように頭から被せる。
「ふぅっ! フゥッ! ふぅっ! フゥッ!……くうぅぅ……こいつはっ! ……筋肉に効くなっ!」
一宮君と協力して、袖に腕を通していると、中から椎名君の荒い息が、聞こえてくる。
甲斐甲斐しく、指無しグローブもしっかりと装着させる。
何だか僕が、怪人付き戦闘員になった気分だ。
「接触型無線通信で、アイマスクのレンズに周囲の様子が映るはずだ。マスクとスーツを、しっかりとくっ付けろ」
神城岬先生が手伝わずに、煙草を吹かしながら、指示を出す。
「おおっ! 見えるっ……ふぅっ! フゥッ!」
「音声で装置が作動するぞ。やってみろ」
「ふぅっ! フゥッ! 迷彩、オンッ!」
椎名君が叫ぶ。
ぼわわわわぁぁぁ……
「おぉ! 透明になったで御座……る?」
一宮君が感嘆? の言葉を発した。
確かに目の前から、キラキラ有機LEDの塊が消えていく……ようにも見えた。
実際は目の前に、水面を通して見たような、微かにぼやけた後ろの壁が映り、そのぼやけの境界線が、人の輪郭を形作っていた。
(確かに、見えないと言えなくも無いが、ちょっと微妙だよなぁ……)
それと、音声スイッチのせいで、机のライトが誤作動して点いたのが、妙に間抜けで気になった。
(んっ?)
床を見ると、スーツの丈が足りなくて、戦闘員用強化ブーツが、しっかりと見えている。
そして注意深く見ると、指無しグローブから出た10本の指先が、宙に浮かんでいる。
「ふふんっ、どうだっ、凄いもんだろっ? 近いと多少違和感があるが、5メートルも離れれば、ほぼ、気づかれる心配はあるまい」
神城岬先生が、自信満々に話す。
「ええ、まぁ、素晴らしい発明ですね。足さえ見なければ」
忖度無しに懲りた僕は、社交辞令を返す。
「移動しても、瞬時に投影され続けるから大丈夫だぞ。椎名、歩いてみろ」
「了解っ! 移動開始っ! ふぅっ! フゥッ!」
ガシャン!
「おぉ! 移動しても透明で御座……る?」
一宮君が感嘆? の言葉を発した。
ガシャン・ガシャン・ガシャン・ガシャン……
「ふぅっ! フゥッ! ふぅっ! フゥッ! ふぅっ! フゥッ!」
ガシャン・ガシャン・ガシャン・ガシャン……
「ふぅっ! フゥッ! ふぅっ! フゥッ! ぐっ! フゥゥ!」
(……………………歩く度に、金属音がする……コレ、透明になる意味あるの?)
椎名君の荒い息も聞こえるし、ガシャガシャと金属音を立てながら、床を強化ブーツのみが歩き回る。
しかも宙を、10本の指先が浮かんで、前後に飛び回るし……
(これじゃあ[西洋の甲冑騎士の亡霊]って感じだよね)
もう見た目は、完全にホラーだった。
「くっくっくっくっ、どうだ? ジェラート由比里よ。やはり私は天才マッドサイエンティストだろっ」
神城岬先生が、不敵に笑った。
「ええ、まぁ、凄い人だと思います。本当に先生は、天才と紙一重ですよね」
忖度無しに懲りた僕は、精一杯の社交辞令を返した……
第22章「取引、密約、もう1人の怪人誕生!?」
終了まで、あと1話




