22.2 DIRTY OLD BOY6
Dr.ヘッドランドの個人研究室に、四人で入る。
友人二人の怪我はパワースーツのお蔭で軽く、椎名君はタックルした際に負った、軽い肩の打撲と頬の切り傷。
一宮君は蹴り飛ばされて、着地時に、左手首を捻っただけだそうだ。
「一宮と椎名か……聞かない名前だなぁ、顔も全然、見覚えが無い」
乱雑な個人研究室で、椅子に腰かけて煙草をふかすDr.ヘッドランド……今はアイマスクを外した神城岬先生が、狭い診察ベットに三人で座る僕たちを眺めながら、そう言った。
「は、はぁ……まあ、拙者共は目立たない生徒で御座るので……」
「う、うむ……まだイマイチ筋肉のつきが悪いので、それは致し方無い……」
二人はDr.ヘッドランドが神城岬先生だったことに、まだ混乱しているようで、未だに返事が要領を得ていない。
ちなみに、椎名君は空気椅子では無く、ちゃんと座っている。
きっと、彼なりのTPOなのだろう。
コロコロロロ……
「まあいいや。お前ら二人が由比里の親友で、公私に渡って日常的に行動を共にしているということが、大事だからな」
神城岬先生は、座ったまま椅子のキャスターを転がして、傍まで来る。
「今、とある事情で、新怪人ナポリタンの中身は、大学生の斉藤君ということになっていてな」
スチール製の灰皿にトントンと、灰を落としながら話す。
「で、中身が由比里であるという真実を知っている者は、ここにいる4人と、私の部下など数名に限られている状態だ」
「……とある事情? ……ですか?」
椎名君が慎重に聞き返す。
「ああ、これはBIP内での、高度に政治的な駆け引きに絡んだ、とある事情なのだよ。まあ、そこは詳しくは話せんがな」
「高度に政治的な駆け引き……」
二人は緊張して、唾を飲み込む。
「……ただのボーナスを守るためでしょ……」
僕は呆れながら、ボソっと呟く。
ビシッ!
すかさず神城岬先生が、座ったまま、ローキックを僕の足に入れる。
そして[黙っていろ]といった目で、睨んできた。
僕はただ、肩を竦めた。もちろん、無駄に治癒は働いた。
「怪人ナポリタンの中身が、高校生の由比里であるという真実は、世間一般の人間はおろか、BIP関係者にすら知られてはいけない、極秘事項なのだ。一宮と椎名には、影からこの秘密を守る、重要任務に就いてもらいたいと考えている」
「重要任務……」
一宮君の膝の上に乗った拳が、強く握られる。
(アホ臭い……ああ、お腹が減ったなぁ……)
おにぎり三つは、もう消化されたようだ。
「具体的には、二人に怪人ナポリタン付き戦闘員になってもらいたいのだっ」
説明しようっ! (私のナレーション口調を想像しろっ By神城岬悠)
怪人付き戦闘員とは、怪人が二名まで自分に付ける専属の戦闘員のことであーる。
役割は、戦闘時にその怪人専用の武器や防具を持ったり、怪人と戦闘員小隊が連携して戦闘する際の指示役などだっ。
他に、怪人は固有の特殊な装備を着用してる場合が多いので、脱着の補助役などの仕事もある。
だがっ、怪人ナポリタンは専用の武器も防具も持たないし、開発予定の専用スーツも、シンプルな強化パワースーツなので、脱着も自分一人で出来る。
そして、怪人ナポリタンの戦闘力は非常に高い。
なので、戦闘員とのグループ連携戦闘は、逆にナポリタンの足手まといになるだろう。
つまり、本来はナポリタンには、怪人付き戦闘員は、全く必要が無いのであーる。
てか、この馬鹿に付き人とかは、生意気なのであーる。
高校生なのに20万ももらって、ムカつくのであーる。
死ねば良いのに、であーる。
あーる。あーる。
「……なんですか? この酷いナレーションは」
最後はもはや、ただの悪口になってたよね?
「ナレーション? なんの話だ? 幻聴でも聞いたか?」
神城岬先生がすっとぼけた。
「とにかくな、必要ないとはいえ、怪人付き戦闘員がいないと不自然だし、いないと別の幹部が変に気を回して、勝手に他の戦闘員を、ナポリタンの怪人付き戦闘員に指名してしまうかもしれん」
「そうなると、そのナポリタン付き戦闘員に、中身が高校生の由比里だとバレるリスクが高まるということだ」
ふうぅぅーーー……
神城岬先生は、煙草を一口吸って、吐き出す。
「なので椎名と一宮には、薄紫色マフラーの怪人付き戦闘員になり、ナポリタンは大学生の……ええと……後藤君なのだと、周囲に思われるようにして欲しい。まあ、高校OBの仲の良い先輩、とでもしておけばいい」
(二人が僕に付く戦闘員ねぇ……正直必要無いし、逆に変なトラブルを引き起こしそうで嫌だなぁ……)
彼らは親友だ。
だが、頼りになるかと問われれば、キッパリとNo! と言い切れる。
「そして、一宮と椎名は、今日より青銅の鳥居による記憶消去は停止する」
神城岬先生が、煙草を揉み消しながら言った。
「で、記憶を持ったまま、学校内での由比里のフォローもしてもらいたい。具体的な任務は、私が保健室で行う、コイツの経過観察の隠蔽だ」
「保健室で経過観察? 僕、初耳なんですが」
神城岬先生に聞く。
「そりゃあ、今、初めて言うからなっ」
神城岬先生がいいねっ! と親指を立てた。
「明日、アジトで私と部下のみで、ナポリタンの精密検査をする予定だが、それだけでは、研究としては不足なのだ」
ギシシッ
神城岬先生が、立ち上がると、椅子が軋んだ音を立てた。
「触手細胞の量産化開発のためにも、出来れば毎日定期的に、由比里の経過観察がしたい」
「なので私は、養護教諭という立場を利用して、保健室でコイツの経過観察を行うことを、考えついたわけだ。良いアイディアだろ?」
ふふんっ、と神城岬先生が、ドヤ顔で胸を張る。
三人でジッと、変人美人養護教諭の巨乳を見上げる。
この人、変人だけど、眺めは素晴らしい。
「昼休みを利用して経過観察をする予定なのだが、当然、経過観察中に他の生徒が保健室に入って来たら困る」
「なのでドアに鍵をかけて居留守を使うつもりだが、それでは急病の生徒とか、大岡一大教諭とかが急にやって来て、廊下で騒ぎ出す可能性がある」
「だから一宮と椎名は、保健室の前に張り付いて、そんなアホ共を追っ払って欲しいのだ」
神城岬先生はポケットから、煙草の箱を取り出しつつ、そう言い切った。
「いや、急病の生徒を、養護教諭が[アホ共]って呼ばないで下さいよ、おっかないなぁ」
思わず、突っ込む。
まあ、大岡一大教諭は、正真正銘のアホだけどね。
第22章 「取引、密約、もう1人の怪人誕生!?」
終了まで、あと3話
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初エッセイ? を、書きました。
ド滑りしております。 よろしければ、どうぞ。
スマホのカメラがソッポを向いた夏
〜あなたのスマホは大丈夫ですか?〜
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