21.1 DIRTY OLD BOY1
【第2部スタートですっ!】
月、火、木、金、土の週5日、最新話を更新しますっ!
火曜日 朝
ミシシシ……ギギシシシ……
つり革に掴まり、江ノ電の車窓から外を眺める。
今日は天気があまり良くない。
灰色の空は何とか雨粒を落とさずにいるが、零れ落ちるのは時間の問題だろう。
「ふあぁぁ~……」
電車に揺られていると欠伸が出る。
昨日の疲れは残っていないが、イマイチ寝不足気味なのだ。
(髪、大丈夫かなぁ……)
雨の日は髪の毛のモッサリ度が上がるので、今日は昨日より少し整髪料の量を増やした。
ホンの少しだが。
視線を外から窓ガラスに映る自身に移す……ガラスに映る自分の姿は、やっぱりイラッとするほどのイケメンなのだが、その頭には顔とは不釣合いな、モッサリヘアーがのっている。
(うーーん……髪型をお洒落なモノに変えた方が良いかもなぁ……てか、青浜さんってどんな髪型が好きなんだろうか?)
まぁ、今のモッサリより格好良い髪型の方が、未来のマイハニーも気に入ってくれるに決まっている。
(床屋……いや、美容院ってヤツに行ってみようかなぁ……)
オタにとってはそこはアウェーの地だが、この顔なら足を踏み入れても、許してもらえそうな気がする。
(よしっ! すばな通りにシャレ乙なメンズヘアサロンがあるから、今度そこに行ってみようっ! お金の心配もないし)
今の僕は、臨時ボーナスで、懐がとても暖かい。
ちょっとお高いヘアサロンだって、へっちゃらだ。
(しかし、命がけで戦ってるいるとはいえ、まさかアレで20万円ももらえるとはなぁ……怪人になって本当に良かったよ……)
あんな破廉恥な負け方をした僕に、勝利ボーナス20万円を出すBIPは本当に太っ腹だと思う。
僕は見るとはなしに、窓の外を流れて行く腰越の商店街を眺めながら、昨晩の出来事を思い出した……
――――――――――――――――――
昨晩 戦闘後
「目が覚めるとそこは見知らぬ天井だった」
ふいに目を開くと、寝ている僕を見下ろしているDr.ヘッドランドが呟く。
「……僕のセリフを取らないで下さいよ……大体、Dr.の顔が邪魔で天井が見えなかったし……」
Dr.ヘッドランドの顔は、おおい被さるように、かなり近くにあった。
もちろん、その視線は色っぽいモノではなく、モルモットを観察するそれだった。
「で、そのセリフが出るってことは、ここは病室……治療室ですか?」
「ああ、怪人専用の特別治療室だ。緊急手術も出来る特別室だな。お前は海中で意識を失ったので、ここに運ばれたんだよ」
Dr.ヘッドランドは顔を上げて横に立ち、僕を見下ろす。
「まあ、勝手に治癒したからな、実際、何もしないで寝かせていただけだ」
「ですか……」
寝ながら首だけを動かして、辺りを見回す。
そこは普通の病院の施設と言っても差し支えがないほど、悪の組織とは思えない常識的な治療室だった。
治療室には僕ら以外に人影はなく、とても静かだ。
壁には時計があって、何気に針を読んでみる……
と、出撃してから、まだ二時間弱しか経っていなかった。
(まだ、こんな時間か……意識を失っていたのは短かかったのかな?)
それに戦闘も長く感じたけど、実際は一時間も戦ってはいないだろう。
(でも、大して時間経過してなくても、さすがに疲れたなぁ……)
体には痛みなどは一切ないのだが、疲労感はかなり強かった。
「ふふふっ、本来なら瀕死の重傷で、絶対安静だったはずなのに、まったくの無傷とはな。さすがは私が作った怪人化細胞だな。お前はもっと私に感謝して良いのだぞ。いや、するべきだ」
Dr.ヘッドランドが僕の体を見回しながら、自画自賛する。
視線に釣られて自分の体を見る……
「いやん」
現在、僕はパンイチだったことに気がつく。
今朝、コンビニで買ったパンツ一丁の半裸に、カーニバルマスクを着けて診察ベットに寝ている状態だった。
「ふん。なにが【いやん】だ。パワースーツは、壊れたし、診察の邪魔だから破いて脱がしたぞ」
Dr.は淡々と話す。
「パンイチにマスクって、なんか変態みたいな格好ですね」
上半身を起こす。
疲労で体は重いが、なんの問題もなく動く。
「くくくっ、いや、実際、お前は変態怪人だろ?」
Dr.が冷やかし笑いをする。
「くくくっ、魔法少女にあんな破廉恥なプレイを仕かけて敗北するなんて、前代未聞だよ。お前は、イタリアより現れた変態怪人として、日本秘密結社史にその名を残したな。おめでとう。くくくくっ」
Dr.は笑いながらベットから離れ、近くになにかを取りに行く。
(うん、これには反論出来ません)
でも、後悔もしていません。
ブルーとピンクよ、ありがとう。
「ほれ、そのままだと冷えるだろうし、とりあえずコレを着ろ。近くの幹部用入浴室からパクってきたヤツだから、上等だぞ」
Dr.ヘッドランドはそう言って、上等なバスローブを渡してきた。
「いや、このマスクでバスローブはさらに変態度が上がるような……」
それではまるで、新手のAV男優みたいだ。
「病院の患者着みたいのは無いんですか?」
速やかに拒否して問う。
「ない。黒マントは濡れたから洗濯にまわしたし、わざわざトレンチコートを取りに行くのも面倒だ」
「一時的なんだからソレを着ろ。まあ、どうしても嫌なら、その姿で【イタリア怪人パンイチン】として廊下を練り歩け。私は止めんぞ。いや、むしろ推奨する」
「……ちぇ……分かりましたよぅ……」
軽く口を尖らせて、承諾する。
これ以上駄々を捏ねると、Dr.ヘッドランドが業を煮やして、【パンイチン】ならぬ【イタリア怪人フルチン】で、廊下を歩かされそうだ。
それこそ、殿堂入りの伝説になる。
立ち上がり、さっさとバスローブを着る。
シュィィン……
胸にBIPのカメのロゴマークが入ったバスローブに袖を通していると、治療室の自動ドアが開いた。
カツ・カツ・カツ・カツ……
現れたのはカラー1将軍で、なぜかお盆を手に持ち、ヒールを鳴らして入室して来た。
和風のお盆には、おにぎりと湯気が立つ味噌汁が載っている。
将軍のセクシーボンデージ衣装とのミスマッチ感が凄まじい。
「シマァーーーー!」
着替えを中断して姿勢を正して挨拶する。
カツ・カツ・カッ
と、カラー1将軍は[楽にしろ]という感じで軽く手を振ると、そばまでやって来た。
「意識が戻ったな。海水で体が冷えただろう? これを飲んで温まれ」
カラー1将軍が、お盆をさし出す。
「えっ!? あ、ありがとう、ございますっ」
冷徹無慈悲で知られる将軍が見せた優しさに感動する……
第21章「戦闘後と破廉恥ボーナス」
終了まで、あと3話
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