20.2 よろしくジャンヌ・ダルク14
ざわざわざわざわ……
ピュア・シャイニング親衛隊も、協力会員も、カラー1将軍の不穏当な言動に驚き、応援歌を止めてざわめく。
「ハッ、ハッタリなんじゃないかっ!?」
「でっ、でも、あの危険なチェーンを、自ら捨てているんだよ!?」
ブルーとピンクも、真意を測りかねて、戸惑っている。
カラー1将軍と向き合うピュア・シャイニングまでの距離は、20メートル弱はある。
ピュア・シャイニングの側面に立った僕の存在に気がついてるのか、気がついていないのかは分からないが、ブルーもピンクも、こちらに注意を払ってはいない。
ズルズルズルズルズルズズズズ……
静かに、慎重に、無限大蛇を伸ばしていく。
僕がジェラートを見て閃いた一手は、液体を使った[目潰し]という、実に安直な、卑怯な搦め手の一手だった。
ピュア・シャイニングのアイマスクの目の部分は空洞ではなく、何かしらのレンズのような物が嵌っている。
もしも、そこをこのジェラートで汚してしまえば、一時的に視界を奪うことが出来そうだ、と考えたのだ。
ズルズズズズ……
(乳製品って、拭っても変に伸びて、綺麗に拭き取れないんだよね)
つい先日まで眼鏡っ子だったので、経験でよく分かっている。
(ほんの数秒で良い。その数秒で、三人がかりで決定打を打ち込めるっ)
上手くすれば、拭い取れずに、もっと長く行動不能になる可能性すらあるのだ。
ストンッ
カラー1将軍が、後方に軽やかに着地する。
「白黒つけるぜっっ!」
ズババババーーーーン!!
なぜか某ゼ○ラーマンの台詞を吐いて、両足を前後に大きく開き、歌舞伎の見得のようなポーズを取った。
(うわぁ~、相変わらず全てが古いなぁ……)
僕は昭和の風を感じながら、静かに無限大蛇を伸ばす。
距離、あと10メートル。
「おおおぉぉぉぅぅ……」
カラー1将軍はそのまま腰を落とし、両手首をくっつけて、腰の前に突出し、気合を溜め始めた。
(えええええっ!? そのポーズは、まさかの[かめ○め波]!?!?)
禁術がまさかの[かめ○め波]という展開に、驚愕し、思わず無限大蛇を止める。
「あっ!? あれはもしかして幻のっ!?」
ピンクが驚きの声を上げた。
「昭和の人々ならみんな撃てたと言われる、伝説のアレかっ!?」
ブルーも興奮気味に、ピンクに応える。
(いや、確かにみんなマネしたそうだけど、実際に撃てた人はいないと思うよ?)
どうも古すぎて、本当に幻の禁術と、捉えられたようだ。
ぐぐぐぐぐぐぃぃぃぃ
カラー1将軍が、突き出した両手を、ゆっくりと腰の横の位置まで引く。
「こぉぉ~~~~~~~~~~~~……」
カラー1将軍は、お腹から息を吐き出すように、力強く[かめ○め波]……いや、おそらく[こんるり波]の詠唱を始めた。
(あっ、阿保らしいけど、とにかく、無限大蛇を伸ばさなきゃ)
ズルズズズズ……
気を取り直して、伸ばす。
(でも、慎重にしないと……)
こんな安直な策は、おそらく、バレたら二度と仕掛けられるチャンスはないだろう。
つまりチャンスは一度きりで、しかも二人同時に目潰しを成功させないといけないということだ。
作戦の成否は、僕の素早く、かつ慎重な動きと、カラー1将軍の演技力にかかっている。
あと5メートル。
「んん~~~~~~~~~~~~……」
カラー1将軍は、大真面目に、[こんるり波]の詠唱を続ける。
(あの演技で大丈夫かな?)
あまりの馬鹿馬鹿しい演技に、バレやしないかと心配になる。
そう思っていると……
ぶおんっ
カラー1将軍の手の中に、紺瑠璃色の靄が発生した。
気のせいではない、肉眼でハッキリと分かる、得体の知れない紺瑠璃色に輝く靄があった。
(うそっ!?)
もしかして、昭和の人だから、本当に撃てるのっ!?
「えっ!? ちょっと、本当にヤバいんじゃないのっ!?」
「おいっ、逃げようぜっ!!」
割とのん気に観戦していた一般観光客が、一転、血相を変えて一斉に逃げ始める。
「おいっ、じっちゃん、何か本気でヤバそうだぞっ!?」
「どうしよう、おじいちゃんっ。将軍さんがっ、将軍さんがっ」
混乱したブルーとピンクが、通信で指示を仰いでいる。
そうしている間にも、紺瑠璃色に輝く靄が大きくなっていく。
ポポンッ
「すみませんっ、将軍のアレっ、マジなんじゃないですかっ!? 昭和の人だから、本気で撃てるんじゃないですかっ!? 危なくないですかっ!?」
危険を感じて、思わず通信で、中央作戦司令室に問いかける。
「落ち着きなさい、ナポリタン、アレは大丈夫なのよ」
総統閣下が、冷静な口調で答えた。
「いえっ、でも無駄に紺瑠璃色に輝いてますよっ!? 将軍は昭和の人ですよっ!? やっぱり昭和の日本人はみんな[かめ○め波]が撃てるんですよっ!?」
「平気よ。あれでは物理攻撃にはならないの。エネルギーを媒体に通さず空中で無闇に解放しても、変換効率が非常に悪いのよ。仮に発射できたとしても、せいぜい『ちょっと強いそよ風』程度の衝撃波にしかならないわ」
総統閣下が、凄まじく冷静に科学的解説をして下さった。
「あ、なるほど。確かに直接空中じゃ、撃っても拡散して終わりですものね」
ホッとする。
「それと、カラー1将軍は平成生まれよ。昭和生まれ扱いすると、殺されるから、気をつけてね」
総統閣下が補足した。
「ええぇっ!? ホントですか!?」
本日最大の、驚きを覚えた。
「ああ、ギリギリな」
ボソッと、Dr.が呟いた。
☆この物語の時代設定は、2020年代の前半頃になっています。
ご了承下さい。
それと今、カラー1将軍の年齢を計算しようとしたそこの貴方、
それは女性に対してとても失礼なので、止めましょうね?
作者より
「るぅぅぅ~~~~~~~~~~~……」
ギリ平成生まれのカラー1将軍が、最高の演技力で[こんるり波]を溜める。
ずずずずず……
(あの演技に報いるためにも、早くしなきゃ)
急いで伸ばす……と、ようやくピュア・シャイニングの足元に辿り着いた。
「えっ!? 放っておいても大丈夫っ!? いやいや、だってアレ、昭和の禁術だろっ!?」
「ブラフって、そんな……。でももし、本当だったら大変なことになっちゃうから……」
ブルーとピンクは通信で、まだ話していて、足元の無限大蛇には、気がついていない。
だが、話の内容から推測すると、どうも向うの長官って呼ばれる人は、[こんるり波]が完全にブラフだと気がついているみたいだ。
(ヤバい、早く早くっ!!)
クインッ
無限大蛇の先を持ち上げて、ブルーとピンク、それぞれの上半身を目指す。
「りいぃぃぃ~~~~~~~~~~……」
微妙に平成生まれのカラー1将軍の詠唱が、クライマックスに近づく。
「ちょっと、避難しようぜっ!?」
「そっ、そうだなっ、カラー1将軍は昭和の人だからなっ、マジで撃てるもんなっ」
「ピンクたんっ、ブルーたんっ、早く逃げてぇぇぇーーーー!!」
ピュア・シャイニング親衛隊と協力会員たちの中にも、避難する者が出始める。
「いや、アレはブラフだ。B.I.P.のファン歴長いから分かるぜっ」
「なにか別の目的があるんだってっ。俄かには分からないだろうがなっ」
一方、すでに看破しているピュア・シャイニング親衛隊や、協力会員の姿もあった。
(バレる前に、早くっ)
シルシルシルシル……
慎重かつ、素早く伸ばす。
そしてとうとう、ブルーとピンク、それぞれの胸元まで無限大蛇が到達した……
第20章 「よろしくジャンヌ・ダルク」
終了 & 第1部完結まで、あと2話
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