19.3 よろしくジャンヌ・ダルク12
「その時、天才科学者Dr.ヘッドランドは閃きました「そうだっ、この新素材を強化スーツに使えば、防御力が飛躍的に上がるに違いない」と。こうして、一七式普通科強化服丙……」
謎ガイダンスが、機械音声でDr.ヘッドランドの伝記的なものを垂れ流す。
(死ぬほどうるさい……集中が出来ない……)
謎ガイダンスは僕にとって、もはや戦闘を邪魔する呪いに近かった。
ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ!
「おらおらおらおらおらおらぁぁぁぁあぁぁーーーー!!」
カラー1将軍がチェーンを振り回して、こちらに向かって突進してくる。
「うわっ!! こっち来たっ!!」
タタンッ
ブルーが叫ぶと、逃げる。
タタンッ
タンッ
ピンクと僕も、蜘蛛の子を散らすように逃げる。
「わははははははははっ!! 小童どもがぁあぁぁーー!! 歯ごたえがないぞぉーーーー!! うわははははははっーー!!」
ビュシュシュンンンンンッッッーーーー!!
さっきまで僕がいた場所を、紺瑠璃のチェーンの暴風が通りすぎる。
僕にとっては、こっちも、戦闘を邪魔する呪いに近かった。
内と外、その両側から、味方が僕を苦しめる。
「……大成功を収めたのでした。完」
謎ガイダンスが終了を告げた。
(ホッ……やっと終わったか)
暴走カラー1将軍から逃げながら、ホッとする。
「続きまして、第二部。[大天才科学者、Dr.ヘッドランド、江ノ島水族館で危機一髪]編、をお送りいたします」
謎ガイダンスが、非情にも第二部開始を告げる。
「いやぁあぁあぁぁあぁーーーー!!」
僕は思わず、悲鳴を上げた。
「Dr.ヘッドランド、ナポリタンをいじめるのはその辺にして、もうガイダンスを切ってあげてください」
通信で総統閣下の声が聞こえた。
「わかった、わかった」
Dr.ヘッドランドの半笑いの声が、それに応じた。
「あれはある夏の出来事だった。研究に行きづまった私は、気分転換をするために江ノ島水族館に――ブツン!!」
突然、第二部の朗読をしていた謎ガイダンスが途切れた。
(あっ!! なんだよっ、簡単に切れるんじゃないかっ!)
呆気なく停止したことに驚くと共に、同時に腹が立った。
真剣な戦闘中なのに、なんて人だっ。
(くそっ! いつか必ず仕返しに、無意味かつ無駄な悪戯をしてやるっ)
中央作戦司令室の会話を聴きながら、僕は決意した。
(だが、今は……戦闘だっ)
タタンッ!
「Delay fuze!!(遅延信管)」
ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!
カラー1将軍を無視して急接近してきたブルーに対して、触伸臂を四本、時間差をおいて、バラバラに放つ。
これは攻撃を読ませないための、簡単な技だ。
「へっ、あまいっ!!」
タンッ タタンッ タンッ
だが、ブルーが華麗にステップして、四本全てを紙一重で避ける。
ククンッビュン!
ブルーが正面を避けて、斜め横から襲いかかってくる。
「チッ! 無限伸剣!」
シルシルシルシル
残り二本の触伸臂を前面に展開し防御を固めつつ、斜めのブルーに向き直る。
「おんどりぁあぁっ!!」
ブンッ
ブルーが中段蹴りを放つ。
ドガンッ
両腕と無限伸剣でキッチリとガードし、軽く足を浮かせる。
ドススンッ
足を踏ん張らなかったので、衝撃がガードから分散される。
(治癒するといっても、痛いし、なにより体内のエネルギーみたいなものを消費している感じがあるからね、これ以上ダメージは受けたくないな)
おそらく、消費しているのは、カロリーだと思う。
戦闘前にあれだけフレンチトーストを食べたのに、今はかなりの空腹感があるからだ。
ドシュンンンンッーーー!!
当然、踏ん張らなかったので、後ろに蹴り飛ばされることになるが、これは織りこみ済だ。
立った姿勢を崩さないよう、空中で上手くバランスを取りながら水平に飛ぶ。
シルシルシルシル……
もちろん、外れた四本の触伸臂も、戻す。
タタタタタッ
「お前……今、厳しいボールをトラップする時みたいに、足を浮かせて、衝撃を流しただろ?」
飛ばされてる僕に、並走するように走ってきたブルーが、ギロリと睨んで言った。
(へ? サッカーに、そんな技があるの?)
単純に、本能的にやったことなのに、そう指摘されて驚く。
「さすがはカルチョの国の怪人って感じだっ、がっ。生意気っ、だぜっ!!」
タンッ! ドビュン!
ブルーが軸足をしっかりと踏ん張って、右足を振りぬいた。
シルルルルル
再度、腕と無限伸剣でガードする。
ドガアァアァンッ!!
「ぐはっ!?」
ガードは出来たが、姿勢が崩れた。
ドシュンンンンッーーー!!
「うわぁあぁあぁーー……」
蹴り飛ばされて、錐揉み状態になる。
そして、
ドンガラガッシャーーン!!
フードスペースまで飛ばされた僕は、テーブルやら椅子にぶつかり、なぎ倒す。
「おー、何か、ボウリングみたいだなっ」
ブルーの、のん気な感想が耳に入った。
「くそぅ……」
ガタ・ガタタッ
体に乗っかったテーブルやら椅子やらを、退かす。
ガタガタ・ガッ
「ぁ痛てっ!?」
ポコン
なにかが頭の上に降ってきて、大して痛くもないのに、反応してしまう。
ぽて……
頭に当たり、地面に落ちたのは、中身の入った未開封のアイスの袋だった。
(イタリアンジェラート……か)
すぐそこの自販機で売っているアイスだ。
(後ろのテーブルから、落ちたのかな?)
触ると、まだひんやりとしていて、中身が柔らかくなっていた。
大方、ちょっと前のハーフタイム? の時に誰かが買って、慌てて戻る時に、一つ忘れていったのだろう。
(お間抜けな人も、いたもんだ……)
なんとなく、手に取る……
「くあぁああぁっ!!」
悲愴な悲鳴が聴こえてきた。
「!?!?」
慌てて、悲鳴のした方角を見る。
そこには、左腕を右腕で押さえたピンクがいた。
ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ!
「はっはあぁぁぁーーーー!! ようやく当たったかっ!!」
チェーンを振り回しながら、カラー1将軍が笑う。
どうやら、紺瑠璃のチェーンがピンクにヒットしたようだ。
「ピンクっ!!」
ダタンッ!
僕を無視して、ブルーはピンクの加勢に向かった。
(くそっ! またこんな扱いかっ!)
ギリリと歯噛みする。
「へへっ、じゃあやっぱし、俺が行くしかねぇなっ。弁天様よ、それでいいな?」
中央作戦司令室でのやり取りが聴こえた。
(さっきから、まるで僕が足手まといみたいな扱いばかりだっ!)
ブルーの態度も、中央作戦司令室での会話も、凄く悔しい。
(ここまでピュア・シャイニングを消耗させたのは、僕なのにっ……)
悔しさに任せて、イタリアンジェラートを投げ捨てようとする……
「あっ! 待てっ!! コレっ!?」
そこでパッと、頭の中で閃きが起きた。
(……待て待て……本当にそんなこと、可能なのか?)
触伸臂の先端を、ムニムニと動かしながら考える。
(……たぶん……いや、絶対に出来るっ!)
怪人の本能が、それは可能だと告げていた。
「総統閣下、もう一手ありますっ。姑息な搦め手ですが、一つ、アイディアが浮かびましたっ……」
悔しさと、閃きによる興奮で、気がついたら夢中で、中央作戦司令室に呼びかけていた。
結果として、これが最悪の愚策になることも知らずに……
第19章 「カラー1将軍の覚醒?」終了
読書、お疲れ様でした。この章はこれで終了となります。
次は第1部の最終章である、
第20章 「よろしくジャンヌ・ダルク」(4話)になります。
第21章からは、第2部となります。




