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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜  作者: 綿野草空希


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2.1 遥か国神の島1

 しばらくすると、椎名君、一宮君が到着したので、一緒にバイト先に向かう。


 [弁天橋]を戻って国道134号線の地下を潜り[江ノ島弁天橋]へ向かうルートではなく、駅前から直接国道134号線に出て、片瀬橋を渡るルートを選ぶ。


 片瀬橋の先の交差点を右に曲がれば、後は江ノ島まで真っ直ぐだ。


 西日で乱反射する海を横目に、長い長い江ノ島弁天橋を歩く。


 「そうそう、さっき偶然、天紫野会長と話すことになってね……」

 二人に一連の出来事を報告する。


 「……ほほう、あの天紫野嬢がギャルゲーをたしなむとはな……」

 中肉中背の椎名君が、興味深そうに頷く。


 「厨二病を患っているだけではなく、そのような趣味があったで御座るか……」


 「しかし、会長殿が同好の士というのは心強い。お手柄でしたな、由比里殿」

 一宮君が感心したような笑顔を見せた。


 「へへへっ、ありがと。それで今度、天紫野会長に布教のゲームでも貸したいと考えているのだけど、なにが良いと思う?」


 「ダ・カーポ」

 「マジこい」

 二人の意見は、見事に割れてしまった……


 長い江ノ島弁天橋を渡り切り、江の島に上陸する。


 初夏の江の島は平日も観光客が多いが、都心から近い観光地であるために日帰り客がほとんどなので、夕方になると、人が一斉にはけていく。


 目の前に[青銅の鳥居]と、その先の観光客が帰り始めた弁財天仲見世通りが見える。


 僕らはそのまま、帰路に向かう観光客の間をって歩き[青銅の鳥居]を潜って、狭い上り坂の弁財天仲見世通りへ入ろうとした……


グワ~~~〜ン……グワ~~~〜ン……グワ~~〜~ン……グワ~~〜~ン……


 突然、僕の頭の中で、怪電波が響き重なり木霊した。

とたんに大量の記憶が、洪水のように押し寄せる。


 「「「ぅぅぅぅぅ……シマァーーーー!!」」」


 瞬間、僕たち三人は甲高い声を上げて、江の島を体で表すポーズを取った。


 [腕は顔の横で、ハの字]

 [足は膝を折り曲げる、がに股]

 これが、瓢箪形の江の島を体で表すポーズ。


 分かりやすくいえば、古いギャグ[コマネチ]の、手だけ顔の横に持って来たようなポーズだった。


 蘇る記憶、記憶、記憶、記憶、記憶、記憶、記憶、記憶、記憶……


 「「「シマァーーーー!!」」」

 三人で再度、シャウトする。


 グワングワンと頭の中がうねり狂い、忘れていた大量の記憶が[青銅の鳥居]から怪電波となって、僕らの脳に次々と流れ込んでくる。


 「「「シマァーーーー!!」」


 そうだっ!

 思い出したっ!


 バイト先のお土産工場は隠れ蓑、僕たちは偉大な悪の組織、[Brideブライド inイン purpleパープル]のアルバイト戦闘員だったのだ!


 説明しようっ! (僕のナレーション口調を想像してねっ)


 [Brideブライド inイン purpleパープル]とは、江の島の地下から世界征服を目指す、地域密着型の悪の秘密結社なのであーる。


 半世紀以上前……6、70年前から続くこの業界では老舗の秘密結社で、昨年から三代目の若い総統閣下が指揮をられているのだっ。


 江の島の入り口にある[青銅の鳥居]は、組織の機密保持のための怪電波を発信している。


 この怪電波は、アルバイト戦闘員の退出時の記憶の一時消去と、入場時の記憶回復を行っていて、青銅の鳥居はいわば、組織のゲートとして使用されているのだっ。


 ちなみに時給は1200円で、6時間以上の勤務ではまかないがつくのであーる。

 あーる……。

 あーる……。


 [青銅の鳥居]の下で記憶を取り戻して、誇り高く瓢箪のポーズを取る僕たちを、観光客が奇異な目で眺め通り過ぎていく。


 走馬灯のように、色々と思い出す。


 このアルバイト先を見つけたのは、椎名君だった。


 彼が憧れるダ・カーポの[杉並]というキャラは、作中で怪しげな秘密組織に所属している設定なのだ。


 なので椎名君は、いつか自分も、実際の秘密組織に身を置いてみたいと、常々考えていたそうだ。


 そんなある時、江の島のとあるお土産工場が、Bride in purpleに繋がっているとの眉唾まゆつばな情報を入手し、それを信じて片っ端から江の島内のアルバイト募集に応募しまくった。


 そして去年の夏、その執念が実り、本当にBride in purpleに繋がるアルバイト先……[蛸せんべい]製造工場の[有限会社お土産べんてんてん]を引き当ててしまったのだ。


 そして歓喜した椎名君は、親友の僕と一宮君をぜひ仲間にしたいと、組織の上司にかけ合い、彼の紹介で僕らも秘密結社ブライド・イン・パープル……通称、BIPビー・アイ・ピーに入ったのだ。


 もちろん、その時も外では記憶を消されているので、椎名君はなぜ自分が必死になって、僕らをお土産工場に紹介しようとしているのか、自分で不思議がっていた。


 今では僕と一宮君も、この刺激的な悪の世界でのバイトを、楽しんでやっている……高校生としてはかなり時給も良いしね。


 ちなみに賄いは、江ノ島名物の[シラス]や[ワカメ]を使ったオニギリや、シーフードカレーなどが多い。


 思い出した僕らは顔を見合わせて強く頷き合うと、アジトに繋がる秘密の入り口に向かって歩き出した。


 (さっき自分がBIPのメンバーであることを忘れて、天紫野会長に「悪の秘密結社はカッコいい」なんて言っちゃったよ)


 ……まるで自画自賛じゃないか。恥ずかしいなぁ……


 一人密かに赤面する。

 続きを読みたいと思った方はブクマを、

面白いと思った方は星評価を、

忘れずに押してくださいね。


 押すと、作者が短歌を詠じます。

……作中で。

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