19.1 よろしくジャンヌ・ダルク10
ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ!
「うおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉーーーー!!」
カラー1将軍が咆哮しながら、スチール製のチェーンを振り回す。
「きゃっっ!?」
攻撃のために近づこうとしたピンクが悲鳴を上げ、後退した。
「おらおらおらおらおらおらぁぁぁぁあぁぁーーーー!!」
そんなピンクを、カラー1将軍が頭上でチェーンを回しながら、追い回す。
(えぇえぇ~~、カラー1将軍の戦い方ってこんなんだっけ? もっとスマートな感じだったはずだよね? ……あのチェーン、気に入ったのかしら?)
やたらにチェーンを振り回すカラー1将軍に、ドン引きする。
(コスチュームのせいもあって、まるで昭和の悪役レスラーみたいに見えるよ……)
まぁ、悪の組織だから[悪役]は問題ないけど、[昭和]っぽさが、ちょっとね……
([辻堂さんの純愛ロード]を彷彿とさせるようなチェーン使いなら、格好良かったのになぁ……)
ちなみに、コレはギャルゲーの話です。
「おいっ! よそ見とは随分と余裕だなっ! イタリア人っ」
タンッ タタンッ タタタンッ
一瞬のわき見すら見逃さずに、ブルーがジグザグにステップを踏んで、間合いをつめてくる。
(くっ!? 速いっ!!)
ジグザグステップは、不意打ちの六弾斉射への対策なのだろう。
狙いが定まらず、触伸臂が放てない。
タタンッ
仕方なく、触伸臂での攻撃を諦め、バックステップで距離を離しにかかる。
「へへっ! 動きが鈍いぜっ! 疲れたならっ、もうイタリアに帰ったらどうだっ!」
タンッ! タンッ! シュタタンッ!
ブルーは余裕で僕の動きを見切り、どんどんと距離をつめてくる。
(チッ! こっちの事情も知らずに言ってくれるよっ、お気楽ブルーっ)
ブルーの軽口にはつき合わず、心の中で悪態をつく。
動きが鈍いのは、当たり前だ。
ビービービービー
警告音が鳴りっぱなしで、うるさい。
[機能7%]
アイモニターには、非情な数字が表示されている。
戦闘を再開してすぐ、パワーアシストが効かなくなった。
パワースーツのアシストがなくなれば、当然、動きが鈍くなる。
(と、いうか、運動神経が抜群に良い[ただの全身タイツを着た人間]が戦っているようなものだよね)
触伸臂と治癒能力がなければ、もうとっくに敗北していただろう。
「もらったあぁぁあぁっ!!」
ドビュン!
至近距離まで近づいたブルーが、中段蹴りを放った。
「ぐがっ!?」
ドカンッ!
ブルーの蹴りをモロに喰らった。
ドシュンンンンッーーー……バダンッ! ズザザザザ……
数メートル蹴り飛ばされ、地面を転がる。
(ちくしょう……)
追撃をされる前に、早く立ち上がろうとする……が、
「あーあー、もう諦めろって。正直、もう相手になってないぜ」
ブルーは追撃せずに、軽く肩を竦めて言った。
(馬鹿にしてくれるっ!!)
シルル……
怒りに任せて、触伸臂を伸ばそうとした時、
ピロロ~~ン
軽い音がして、アイモニターの表示が変わった。
[機能不能]
とうとう、完全に壊れてしまったようだ。
(まぁ、どっちにしても、同じことだけどさ……)
ちょっと前からもう、まったく機能していなかったのだ、変わらない。
ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ!
「どうしたっ、小娘っ、かかってこいっ!!」
カラー1将軍がチェーンを回して、ピンクを挑発している。
そう言われたピンクは、近づけず、逆に離れることも出来ずに、困惑している。
「チッ! あっちは苦戦してるな……」
ブルーは余裕で、二人の戦に目をやる。
ピン・ポン・パン・ポ~ン
突然、場違いな音が、骨伝導を通して聞こえた。
「この度は、一七式普通科強化服丙をご利用いただき、ありがとうございます」
無機質な機械音声が、聴こえてきた。
(なにこれ?)
カラー1将軍たちに目をやりながら、首を捻る。
「現在、一七式普通科強化服丙が、機能しておりません。正しくご利用出来るよう、使用上の注意をお伝えします」
なんか、強制的にガイダンスが流れ始めた。
「アレは遠距離の方が良さそうだな……とうっ!」
タタンッ
ブルーはカラー1将軍を見ながら呟くと、跳躍して、僕から大きく距離をとった。
「あっ……」
ブルーの[お前なんて眼中にない]といわんばかりの行動に、ホッとするような、腹が立つような、複雑な気持ちになる。
スタンッ
「よしっ。援護射撃だ。ポチッとな」
ポチ……タタタンッ
ブルーがブーツのボタンを押して、華麗にステップを踏む。
「一七式普通科強化服丙を、手順通り着用しましたか?」
まだ、ガイダンスが続く。
「一七式普通科強化服丙を、裏返しに着用していませんか? 上下逆に着用していませんか?」
無機質に質問してくる。
(いやいや、上下逆ってどうやって着るんだよ、おっかないなぁ)
ブルーの行動を見ながら、脳内でガイダンスに突っ込む。
「シューート!!」
ボンッ ボンッ ボンッ ボンッ
ブルーが光のボールを、次々に蹴る。
ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ
光のボールが、カラー1将軍に向かって飛んでいく。
「一七式普通科強化服丙を、Upside downしてませんか?」
(なんで英語で言い直した!?)
しかも無機質なのに、妙に英語の発音が良いのが腹立つ。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
「うわははははははっーー!! 効かんっ!! 効かんぞっ!!」
カラー1将軍は、グルグルと回すチェーンで、全ての光のボールを弾き飛ばしてしまう。
(えっ? なんかチェーンが、薄っすら紺瑠璃色を帯び始めてない?)
ただのスチール製チェーンが、若干、怪しく輝いている。
もう得物を、[紺瑠璃のチェーン]に改名しそうな勢いだ。
「うわっ、あんだよ、アレ。おっかないなぁ……」
かぽーん
ブルーがドン引きして、佇んでいる。
「バッテリーはキチンと、所定の位置に差し込まれていますか?」
なおも、ガイダンスは続く。
これ、なによ? いつまで続くの?
「+と-を間違えてませんか?」
無機質に聞いてくる。
(あれ? 確かあのバッテリーには、+とか-は、なかったはずだけど……)
「Upside downしてませんか?」
(なんでまた、英語で言い直す!? そもそも、使い方が間違ってるしっ!!)
確かそーゆー時は[なんちゃらWay up]とかいうはずだ。
まぁ、英語は苦手だから知らないけど……
「大矢数っ!!」
ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ
ピンクもカラー1将軍から距離をとって、無数の矢を放った。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
「わははははははははっ!! 無駄っ! 無駄っ! 無駄ぁぁぁぁーーー!!」
カラー1将軍は、矢も全て、チェーンで弾き飛ばしてしまう。
(うわぁ~~、なんか無双状態になってるよ。もう、カラー1将軍だけで、勝てるんじゃないのか?)
なんか変な方向に覚醒を果たしたカラー1将軍を、眺めて思う。
「バッテリーと間違えて、スマートフォンを差し込んでいませんか?」
音声ガイダンスが一向に終わらない。
「バッテリーと間違えて、筆箱を差し込んでいませんか? お弁当箱を間違えて差し込んではいませんか?」
そんな人は、いません。
「筆箱の+と-を間違えてませんか?」
筆箱の+と-ってなんだよ、おっかないなぁ。
「筆箱をUpside downしてませんか?」
いや、逆さを直しても、筆箱じゃ動かないし。
「お弁当箱のお箸を、忘れていませんか?」
もう、全く関係ないです。いい加減にしてください。
「机の中に予備の割り箸はありますか? 帰ってからお母さんに文句を言っては駄目ですよ? 毎日、お弁当を作るお母さんの気持ち……」
ポポンッ
「あのっ、すみませんっ! このガイダンスっ、どうにかなりませんかっ! 止めて欲しいんですけどっ!」
堪らず、通信で中央作戦司令室に呼びかける。
「無理だ、止まらん」
なぜかDr.ヘッドランドが、通信で答えた。
「それはスーツの仕様だ。全ての案内が終わるまで、切ることは出来ない」
「仕様って……こんな変なもの、いったい誰が作ったんです?」
呆れながら、聞く。
「もちろん、私だ」
Dr.ヘッドランドが堂々と答えた。
(あぁ、やっぱり貴女でしたか……)
そうだよね、こんなことをするのは、この人しかいない。
「なんで、こんな無駄なことをするんですかね?」
ムカついたので、嫌味ったらしく、聞く。
「無論、スーツを壊したヤツへの嫌がらせだな」
Dr.ヘッドランドはキッパリと言い切った。
うん、貴女はこういう無駄なことに、全力を傾ける人でした。
この人は、悪い意味で天才だ。
ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ! ブンッ!
「わははははははははっ!! 小娘どもはいねぇがぁぁぁぁーーー!!」
昭和の悪役レスラーから、なまはげに昇華したカラー1将軍を見ながら、僕は肩を落とし、ため息をついた……
第19章 「カラー1将軍の覚醒?」
終了まで、あと2話
【登場キャラたちのコメディです。こっちも見てね!】
【1分コメディ】江の島裏通り〜アレな高校生と悪と正義の不毛な日常〜
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