18.6 よろしくジャンヌ・ダルク9
Another side 中央作戦司令室
「「「………………………」」」
中央作戦司令室は、悲愴な静寂に包まれていた。
「それならっ!! 無限大蛇っ!!」
ズザザザザザザザザザ!!
モニターには、怪人ナポリタンが無限触感アルデンテンを、蛇のように地面を走らせる様子が映し出されている。
「くっ!」
総統は手を握り締め、食い入るようにモニターを見つめていた。
「………………………」
Dr.ヘッドランドは、指先の煙草が全て灰になり、落ちているのも気がつかずに、モニターを睨んでいた。
「「「………………………」」」
CPオフィサーたちも、仕事を忘れて、怪人ナポリタンとシャイニング・ブルーの攻防に見入る。
ブッブチンッ! ブチンッ!
「あがぁぁああぁーー!!」
モニターの中の怪人ナポリタンが、苦痛の声をあげた。
「「「ああぁぁぁぁ……」」」
シャイニング・ブルーが、怪人ナポリタンの無限触感アルデンテンを千切り、投げ捨てた瞬間、CPオフィサーたちが一斉に溜息をついた。
バンッ!
その時、総統が堪らず立ち上がった。
「お願いっ! 光瑠お姉さっ……」
ドシュンンンンッーーー……
「うおおぉおおぉぉおぉーーーー!! 紺瑠璃のウィップーーーー!!」
総統が呼びかけるより一瞬早く、観戦者の人垣の後ろを密かに移動していたカラー1将軍が、広場の中へ飛び出していた……
……………………
是陽side
ドシュンンンンッーーー……
「うおおぉおおぉぉおぉーーーー!! 紺瑠璃のウィップーーーー!!」
(来たっ!!)
待ちに待った、頼もしい声を聴き、閉じかけた目を開く。
ピンクに向かって突進するカラー1将軍の姿が、視界に入った。
「あぁ、やっぱりまだ、早かったか……半分くらいしか、充填出来てない……」
僕は、カラー1将軍をよく見て、肩を落とす。
カラー1将軍の必殺の鞭、紺瑠璃のウィップの輝きが、最大値よりはるかに低いのが、遠目にもハッキリと分かったからだ。
タタンッ!
カラー1将軍がピンクに向かって、大きく跳躍する。
「そんな所に隠れていたかっ!! だがっ、そろそろ出て来ると思ってたぜっ!!」
ビュンッ
ブルーが、カラー1将軍を迎撃するために、跳躍した。
カラー1将軍がピンクに近づく前に、二人は空中で激突する。
「シャイニング・くまクマhookーっ!!」
「左単拳頭っ!!」
ドガガガンッ!!
互いが、互いの腹部を狙い、拳を振るった。
しん…………
一瞬、時が止まったように、二人が静止する。
「……へへっ! パンチがスローだぜっ、エロ将軍っ」
笑ったのはブルーだった。
「だいたい、やることが毎回、見え見えなんだよっ」
そう言って勝ち誇った。
「……………………」
カラー1将軍は黙っている。
それもそのはず、同時に放ったはずの拳は、ブルーのパンチだけが腹部にめり込み、カラー1将軍の拳は、むなしく空を切っていたからだ。
「……ふんっ、それはこっちの台詞だ、能天気小娘が。この私が、貴様の行動すら読めないとでも思うか?」
ブルーのボディブローがめり込んだはずのカラー1将軍が、鼻でせせら笑った。
次の瞬間、
「痛ってえぇええぇぇええぇぇーーーー!!」
ブルーが自身の右手を押さえて叫んだ。
「相手をよく見て戦うんだな。暗いからといって、コレを見逃すのは、自業自得でしかないぞ?」
ジャララ……
カラー1将軍が、自身の腹部を指差す。
そこには、どこから拾ってきたのか、建築現場で使うような、頑丈なスチール製のチェーンが巻きつけられていた。
硬化するスーツは殴り慣れてるブルーでも、本気でスチールを殴れば痛いだろう。
「右単膝当っ」
ドスンッ!
カラー1将軍の右膝蹴りが炸裂する。
「がはぁあぁぁあぁぁーーー!!」
膝蹴りを喰らったブルーが、吹き飛ばされた。
スタタン
カラー1将軍が軽やかに着地し、ピンクを見やる。
ステッキを掲げたままのピンクとカラー1将軍が、一瞬、見つめ合う……
ビュンンンン!!
「紺瑠璃のウィップゥゥゥーーーーっ!!」
カラー1将軍が、空気を切り裂くように、鞭を振るう。
「やあっ!!」
タタンッ!
ピンクが全ての攻撃を放棄して、逃げる。
チュン……ビカッ!!
鞭の先端がピンクのいた位置に達すると、瑠璃紺色の怪しい輝きが、爆ぜた。
ドガアアァァァーーーーンン!!
爆発音が、大亀ヶ岡広場に轟く。
「きゃあああぁぁぁーーーー……」
ピンクが悲鳴を上げた。
「「「ぎゃあぁぁーーー!! ピンクたんっ!!」」」
ピュア・シャイニング親衛隊からも、悲鳴が上がった。
(いや、爆発が小さい……これでは浅い……)
やはり、あの充填量では、必殺の攻撃にはならなかったようだ。
ビュュゥゥゥーーーー!!
着弾点から爆風が広がる。
ふわっ……
「あっ……」
突然、下半身が軽くなる。
見ると、緑の魔方陣も、龍の手も、光の粒子になって霧散していた。
ふわ……
不意に、僕の肩に、一粒の光の粒子が落ちた。
ふわわわわわわ……
見上げると、光の大魔方陣は霧散し、光の粒子が粉雪のように、降り落ちてきていた。
(あぁ、綺麗だなぁ……)
初夏の江の島に夜空に降る、季節外れの粉雪は、幻想的で美しかった。
その粒子も地上に届く前に、全て跡形もなく消える……
カラー1将軍が、投げ捨てられた僕の触伸臂を拾いに行く。
ガシッ
「よっこいし……し……ふんっ!」
カラー1将軍は、なにか言いかけて止めると、無造作に二本の触伸臂を掴んで、こちらに跳躍した。
タタンッ
ずるずるずる……
触伸臂が長いので、思いっ切り、引きずっている。
(今、絶対「よっこいしょ」って、言いかけたよね?)
タタンッ!
密かに思いつつも、すぐに合流するべく、跳躍する。
「助かりましたっ。ありがとうございますっ」
合流したカラー1将軍にお礼を述べる。
「ふぅ~。動けないピンクを仕留めるつもりだったが、フルに充填するには時間が足りなかったな。ほれ、C.P.A.Cだ」
カラー1将軍は、僕に千切れた触伸臂を渡しながら言った。
「すみません、もう少し時間を稼ぎたかったのですが……。あと、ソレは触伸臂、または無限緊縛です」
謝罪しながらも、主張はしておく。
「いや、あの魔法和歌《歌合せ》を、よく一人で耐え切った。まさかピンクがあれほどの詠み手だとはな。予想外だった」
カラー1将軍は、僕の主張はスルーして、労ってくれた。
……モワワァァ……
爆煙が風に流され消える……
「……くっそぉ……あと一歩だったのに……」
「……そう簡単には……勝たせてもらえないね……」
煙が晴れると、ピュア・シャイニングの二人が、立って話しているのが見えた。
「「「わあぁあぁあぁああぁあぁーーーー!!」」」
「「「あぁぁあぁぁ………………」
ピュア・シャイニング親衛隊から安堵の歓声が、協力会員からは溜息が上がった。
「おい、見てみろ、ナポリタン」
カラー1将軍が、顎をしゃくって、ピュア・シャイニングの二人をよく見るように促した。
視線の先では、紺瑠璃のウィップで傷を負ったピンクと、自爆した手と、膝蹴りを受けた腹部を負傷したブルーが、治癒を始めていた。
「……ナポリタン、気がついたか? やっと小娘たちの治癒速度が遅くなってきたぞ……」
将軍がそっと囁きかけてきた。
「えっ!?」
指摘されて、ピュア・シャイニングを細部まで観察する……
と、確かに指摘通り、二人の怪我の治りが、遅く見えた。
飛び回る小龍も数が少なく、とてもか細かった。
「おそらく、度重なる治癒と強力な魔法攻撃を使ったせいで、保有する魔力量が減ってきているのだろう。つまり、さっきのような強力な魔法攻撃は、この後、易々とは使えないということだな」
カラー1将軍が、経験からくる推測を教えてくれる。
「ふぅ~……ようやく、ここまで漕ぎつけたか……。この状態に持ってくるのが、勝利の方程式ってやつだ。覚えておけ」
「はいっ」
ピュア・シャイニングの限界が見えてきて、勇気が湧いてくる。
「しかし、魔法攻撃が厄介なことに変わりはない。ここからは、あともう一押しだっ。魔法を使う準備をさせないためにも、一気に戦闘を仕かけるぞっ!」
「シマッ!」
ダダダダダッ!!
僕とカラー1将軍は頷き合うと、ピュア・シャイニングに向けて走り出した……
第18章 「古の大魔法 戦闘和歌(歌合せ)」終了
読書、お疲れ様でした。この章はこれで終了となります。
次は第19章 「カラー1将軍の覚醒」(3話)になります。
第1部は20章……あと、2章で完結します。




