18.4 よろしくジャンヌ・ダルク7
ぱっ
ピンクが、アイマスクの奥の目を見開いた。
ビシシィィ!!
「打別二山っ、足引沖風!!」
僕が立ち上がったのと同時に、ピンクがステッキを振り下ろした。
グバッ!
大龍が口を大きく開ける。
(ひっ!?)
鋭い牙が並んだ凶悪な口内がよく見え、思わず心臓が縮みあがる。
「ギ吟ヰギオォオォオォオンンンンンーーーーー!!!!」
瞬間、大龍が咆哮した。
「うぐおっ!?!?」
耳を劈く大音量を全身に浴びた。
パタタタ……パタタ……
黒マントが小さくはためく。
(この距離じゃあ、絶対避けられないっ!! どんな攻撃か分からないけど、なんとか受け流すしかないなっ)
魔方陣が完成した時点で、もうピンクを攻撃しても無駄だろう。
なら、受ける以外、選択肢は残っていない。
シルルルルル!!
(触伸臂の壁でガードだっ!!)
全ての触伸臂を前面に大きく展開して、畳一枚くらいの壁を作る。
即興で思いついた、最大の防御体勢だ。
ブオオオオォオォォォォオオザギザォオオオォォォーーーーーー!!
緑に輝く大龍は、口から大量の息を吐いた。
バチバヂバヂバヂバアジヂヂヂバヂドヂチ!!
触伸臂の壁に、暴風が叩きつけられる。
ゴオォオオオォォオオォォオオオォォオーーーーーーー!!
バダバダバタバタバダバダ……
空でも飛んでるかのように、黒マントが後ろに流される。
グドゴオォオオォォオオオォォオーーーーーーー!!
「痛たたたたたたたたたァァァァっ!!」
触伸臂の壁の表面が、暴風で削り取られ、激しい痛みに襲われる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォオオオオオオオオオーーーーーーー!!
「うおぉおぉおぉおぉーーー!?!?」
治癒したそばから削られるので、痛みが断続的に続く。
ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーー!!
ビッ……ブチンッ!
「がはっ!?」
触伸臂の一本が千切れ飛んだ。
シュゴゴビュブブブブブオオオオオオオーーーーーーーー!!
じゃり……じゃりり……
体が後ろに、どんどんと押されていく。
「ギ吟ヰギオォオォオォオンンンンンーーーーー!!!!」
大龍が顎を震わせ咆哮しながら、最後の一息を吐く。
ゴドヰンゴゴオオオオオオオオーーーー!!!!!!!!!!
ブチンッ! ブチンッ! ブチンッ!
触伸臂が次々と千切れ飛んでいく。
ゴオオオオオオオオオオオーーーー!!
「おおぉおぉぉおおぉぉおーーーー!?!?」
ぶわっ!!
突風で、体が浮き上がった。
(マズいっ!!)
と、思うが、一度浮いてしまえば、もう抗う術はない。
「うわぁあぁああぁあーーーー……」
ビュンンンンンンンーーーー……
錐揉み状態で、後方に飛ばされる。
オオオオオオーーーー……
最後の一息が終わり、風が弱まる。
「ぁぁぁーーー……あがっ!?」
ドンッ! パインッ! ゴロゴロゴロゴロ……
弱まれば当然、落下して地面に叩きつけられる。
ォォォォォーーーー……
地面に伏せながら、微風を感じる。
[カラー1プッシュ将軍]で染められた金髪が、サラサラと揺れた……
「はっ……ははははっ、やったっ! やったぞっ! 堪え切ったっ! ははははははっ」
上半身を持ち上げながら、嬉しくて笑い出す。
ビービービービー……
[機能19%]
アイモニターに表示された数値は最悪だが、今は耐え切ったことを喜びたい。
「くくくくくくっ、ピュア・シャイニングの魔法なんて、こんなもんだっ。見た目は派手だけど、大したことないじゃないかっ」
立ち上がりながら、なおも笑う。
(まったく……こけおどしもいいところだ。この程度の相手に苦戦するなんて、今までの怪人さんたちも情けないなぁ)
ピュア・シャイニングの二人を見る。
ピンクとブルーは並んで立って、ジッとこちらを見ていた。
(ふふんっ! 僕のタフさに、打つ手を無くして、茫然としているのかな?)
さて、じゃあ接近して、その表情を茫然から絶望に変えてあげようか。
自信満々で踏み出す……が
ぐんっ!!
(んっ? なんだ?)
歩こうとしたのに、なぜか動けない。
(なんだぁ~~??)
何気なく下を見る。
フォン……フォン……フォン……
地面には、僕を中心にゆっくりと回転する、緑に輝く魔方陣があった。
「…………え?」
(なんで、こんな所に、魔方陣があるの?)
首を傾げながら、さらに自分の足を見る……
手。
手。
手、があった。
巨大な、手。
緑色の鱗に覆われた巨大な、手。
手の指先には歪に曲がった、鉤爪。
魔方陣から生えた巨大な龍の緑色の手が、僕の足を、しっかりと掴んでいた……
「……ウアァアアァァアアァァアアァァァァァァアアアアァァッ!?!?!?!?!?」
あまりの不気味さに恐怖して、叫び声を上げた。
「うわぁあぁああぁあっ!! なんだっ、これっ!? なんだっ、これっ!? なんだよっ!! これええええぇぇぇっ!?」
叫びながらジタバタと暴れる。
が、龍に掴まれた足はビクともしない。
「うわぁあぁあぁっ!? くそっ! 離せよっ! 離せっ!」
それでも必死に、足を引き抜こうと、もがく。
龍の手か、それとも前足と呼ぶのかは分からないが、こんな不気味なモノに、いつまでも掴まれていたくはない。
(なんでだっ!? いったい、なんでこうなった!? なぜだっ!?)
もがきながら、頭をフル回転させる。
コレもピンクの魔法なのだろう。
だが、ピンクは新たな魔法を詠んだりはしてないはずだっ。
もう一度、魔方陣をよく見る……
中程度の魔方陣には、先ほどピンクが詠んだのと同じ文句の
あしひきの 江の山二つ ひきあいて 打ちて別るる 沖のたつ風
と、しっかり刻まれていた。
(なんでだっ!? なんでさっきの風魔法の魔方陣がここにあるっ!?)
そしてなぜ、龍が僕の足を掴んでいるんだっ!?
必死に意味を考える。
[あしひきの]は、確か[足引き]とも書く、山や峰にかかる枕詞だったはず。
[山二つ]は、江の島の景勝地、険しい断崖の絶景[山二ツ]のことだろう。
それと今回ピンクは、足引沖風という魔法の前に、打別二山と、つけ加えていたな……
「いやでも、こんなのおかし…………はっ!! 待てっ!! 足引きのっ!? 山二つっ!? 打ちて別るるっ!?」
魔方陣に刻まれた和歌を読み返して、気がつく。
(まさかっ、[打ちて別るる]って、撃ち出した瞬間に、足引と沖風の二つに分裂するってことかっ!?)
いやっ、それだけじゃない[ひきあいて]も、[引き相手]ってことじゃないのか!?
ゾッ……
気がつき、嫌な汗が流れる。
「つまりっ、これはっ!! 一つ目の暴風で吹き飛ばし、二つ目の[足引きトラップ]に嵌める、二段階セットの複合魔法だっ!! くそっ!!」
龍の縛めから逃れようと、もがくっ。
ひさかたのーーーー……
してやられたっ。
(ピュア・シャイニングの魔法は、こんなことまで出来るのかっ!?)
だから気合いの入った新作なのに、中規模だったんだっ。
大規模魔法を二つに分けたから、一つ一つは中規模だったのだっ。
天つ乙女のーーーー……
第18章 「古の大魔法 戦闘和歌(歌合せ)」
終了まで、あと2話
【戦闘和歌の解説はこちら!】
新江の島縁起 戦闘和歌集
https://ncode.syosetu.com/n7071ml/
足引沖風の解説も、公開されてます




