18.1 よろしくジャンヌ・ダルク4
ビシシィィ!!
「走垂龍激!!」
ピンクが、疾走する僕に向かって、ステッキを振り下ろした。
「ギ吟ギヰギオオォオオォオォオンンンンンンンーーーーー!!!!」
瞬間、巨龍が咆哮した。
ビビビビリビビビリビリ
江の島の空気が震える。
ドバッザザザザアアアアアァァアアァァァアァーーーーーー!!
青き巨龍の口から、大量の輝く水が、発射された。
それは激流と呼ぶのがふさわしい、圧倒的で暴力的な水流だった。
暴力的な水の塊が迫って来る。
「うおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉーーーー!!」
叫びながら駆ける。
スーツの機能は、すでに40%ちょっとまで低下しているが、まだパワーアシスト機能は問題無く動いている。
ダダダダダダダッ!!
人の限界をはるかに超えた速度で疾走する。
ドドドドドザザアアアアアァァアアァァァアァーーーーーー!!
地響きを立てながら、激流が襲ってくる。
(なんとか本流だけでも避けないとっ!! 死ぬっ!!)
ダンッ!!
激流が目前に迫る中、ヘッドスライディングのように、超低空でジャンプした。
ザッバアァアァアァアァアァンンンンーーーーー!!!!
直後、激流が弾け、水弾となって飛び散った。
ガゴッ! ドゴッバギッ! ドゴッ! ザアンンーーーー!!
何とか本流の直撃は避けたが、それでも僕の側面を、水弾が襲う。
「があぁあぁあぁーーーーー……」
ドガンッ! ガギンッ! ドスンッ!
とても水が当たったとは思えないような音がした。
「ぐおぉおぉおぉおぉおぉっ!?」
バギッ ゴキッ
最悪なことに、スーツの側面は破けている。
「がっ!? ぐはっ!?」
ほぼ生身の体に高圧の水弾が当たり、何本かの肋骨が音を立てて粉砕された。
ガガリザザザザ……
顎やお腹を打ちつけながら、地面を滑ると、顔やら胸やらお腹が、泥だらけになった。
石走る~~~~……
シュン……
それでも瞬時に体が治癒され、痛みが綺麗に消え去った。
垂水の上の~~~~……
ふわっ……
巨龍から放たれた激流は、実際の水にはならず、光の粒子になって、江の島の夜空に霧散した。
さ蕨の~~~~……
ダンッ!
戦闘中に、いつまでも寝転がってはいられない。
手で地面を叩き、足で地面を蹴って、体勢を立て直す。
萌え出づる春に~~~~……
「べっ! べっ! くっ、くそっ!」
僕は口に入った泥を吐き出し、よろけながらも、急いで立ち上がった。
なりにけるかな~~~~……
「おんりゃぁーーーーーっ!!」
と、視界の外からブルーの声が聞こえた。
声の方に振り向くと、ブルーのブーツの裏が見えた。
(くっ! やっぱり来たかっ……)
やはり、お気楽ブルーでも、この好機を見逃すほど、抜けてはいなかったようだ。
完全に無防備な状態の僕を狙って、間髪入れずに、ブルーがミサイルのような跳び蹴りを放っていたらしい。
(ブーツの裏を見慣れるなんて、最悪だな……)
すっかり見覚えた感のあるブーツの裏に、ゲンナリとした。
ドカカンッ!!
避けることも、ガードすることも叶わず、モロに喰らってしまう。
「ぐげえぇえぇえぇっ!?!?」
ドガバギンッ!
今度はスーツが生きてる場所に当たったお蔭で、硬化して身を守ってくれたが、それでも衝撃が体内まで伝わり、内臓が震えた。
ドシュンンンンッーーー……
無様に蹴り飛ばされる。
「「「わああぁあぁあぁーーーー!!」」」
ピュア・シャイニング親衛隊からは歓声が、協力会員からは悲鳴が上がった。
ドバンッ! バインッ! ゴゴロッ! ズザザザザ……
また翻筋斗打って、地面をバウンドし転がるが、
シュン……
当然、傷が出来るそばから、その傷は紫色の輝きを放ちながら、修復されていく。
ガギリ……
顔を打ちつけ、カーニバルマスクが外れかかった。
「……くそっ……何度も何度も……」
手で、ずれたカーニバルマスクを直しつつ、今度は周囲を警戒しながら起き上がる。
ビービービービー
[機能37%]
警告音がなり、アイモニターにスーツの機能低下が表示された。
キョロキョロ……
顔を振って、ブルーを探す……が、周りに姿は無かった。
(はっ!! まさかっ、このパターンはっ!?)
気がつき、慌ててピンクを探す。
と、先ほどと寸分違わない場所にピンクが立っていた。
しかも、先ほどと同じようにブルーが傍らに立ち、頭上には魔方陣が出来上がっていた。
(いや、違う……今度のは小さいぞ……)
一見して違いが分かった。
石走る 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかな
と刻まれたその魔方陣は、先ほどの大魔方陣の四分の一程度の大きさだった。
ぬうぅうぅうぅぅ……
その魔方陣から、これまた四分の一程度に小さくなった龍の頭が現れた。
青き龍が、ガバリと口を開く。
「走垂出春!!」
ピンクが僕に向かって、容赦なくステッキを振り下ろした。
「吟ギオオォオォオォオンンーーーーー!!」
瞬間、青き龍が鳴いた。
バッザザアアァアアァァアァーーーーーー!!
青き龍の口から、輝く水が発射される。
が、前回ほどの、圧倒的な激流ではなかった。
ダダダダダダダッ!!
(これなら何とか避けられそうだっ!!)
僕はまた、真横に向かって走りながらそう思った……
……………………
Another side 中央作戦司令室(通称 指揮所)
ざわざわざわざわ……
中央作戦司令室が騒めきに包まれている。
その騒めきは、決して明るいものではなかった。
「あれが戦闘和歌……」
唖然とした表情で、総統が呟いた。
それもそのはず、去年から指揮を取り始めた現総統にとって、これが初めて実際に目にする戦闘和歌だったからだ。
「まぁ情けねぇ話だが、戦闘和歌は数年ぶりだ。弁天様が驚くのも、無理はねぇな」
スギヤマン将軍が若い総統を慮るように話しかけた。
「確か[ぴんく]は、三年くらい前の[でびゅう]したての頃に、試しみてぇに何度か詠んでたなぁ。それ以来だがぁ、ここまでの詠み手だったとはなぁ……」
スギヤマン将軍は自身の顎を擦りながら、驚きを吐露した。
「将軍、二発目に使った歌は、確か有名な和歌ですよね? 名歌なのに、なぜ小さいのですか?」
総統が、スギヤマン将軍に質問した。
「あぁ、他人の作った和歌じゃあ、それがどんだけ名歌でも威力が小せぇんだ。対して自作の……それも即興的な歌ほど、威力がでかくなる寸法みてぇだぜ」
「そうですか。……ナポリタっ……」
総統はこのことを伝えるために、怪人ナポリタンに呼びかけようとして、途中で止めた。
なぜならモニターには、今、必死に戦闘和歌を回避しよう走り回る怪人ナポリタンの姿が映し出されていたからだった……
第18章 「古の大魔法 戦闘和歌(歌合せ)」
終了まで、あと5話




