16.3 エロティック・セブン EROTIC SEVEN15
シルシルシルシル……
シルシルシルシル……
(おおおおっ!? 本当に生えたっ!! てかっ、太っ!!)
わきの下やわき腹から生えた触手は、まるで腕のように太く、力強いものだった。
マントの下で動かし、感覚で数えると、片方三本、左右計六本の太い触手が生えていた。
モゾモゾモゾ……
(うんっ。本能的に違和感なく動かせるぞっ。まるで腕が六本増えた気分だ)
とにかく、コレはかなり使えそうだ。
「はっ!? ブルーっ!?」
突然、他方から声が上がった。
ブルーが足を掴まれていることに気がついたピンクが、カラー1将軍と鍔迫り合いをしながら、心配して声を上げたようだ。
「おいっ!! よそ見とは、随分と余裕だなっ!!」
バチンッ
すかさず、カラー1将軍が一発入れる。
「きゃあっ!!」
攻撃を喰らったピンクが悲鳴を上げる。
「痛っ……ブルーっ!!」
それでもピンクはブルーを心配する。
相棒の危機に、今にも反転してこちらに向かって来そうな雰囲気だ。
「いやっ大丈夫だっ! 自分のことに集中してろっ!!」
だがブルーはしっかりと応えて、ピンクを押しとどめた。
むんずっ
そして雑巾を絞るように揃えた順手の形で、指触手を掴んだ。
「うおおおおぉぉぉーーー……」
ブルーが雄叫びを上げて力を溜める。
「シャイニングゥゥゥ・ハンドパワァーーー!!」
超適当なかけ声と共に、指触手を握ったまま捻じるように、両手を左右に開いた。
ぶちぶちぶちぶちぶちっ!!
ブルーの馬鹿力で、8本の細い指触手は無残にも、弾けるように捻じ切られてしまった。
(痛てっ!!)
一瞬、痛みが走り、捻じ切られた指触手から少量の血が飛び散る。
タタンッ!
タタンッ!
縛めが外れた瞬間、お互いに攻撃を放棄し、大きく飛び退いて、安全な距離を取った。
「あぁーっ、キモっ!!」
ブルーが足に絡み残った触手を、乱雑に引き剥がして、ポイと投げ捨てる。
そして千切れた触手をブーツで踏みつけ、ドヤ顔で胸を張った。
「あぁーーーーっはっはっはっはぁーーーー! イタリア触手敗れたりっっ!」
ブルーが高笑いする。
「もう、あたしにその触手は通用しないぜっ!」
ビシシシッ!! っと親指を下に向けてポーズを決める。
わあああああああぁぁぁぁぁーーーー!!
ピュア・シャイニング親衛隊と一般観光客から歓声が上がる。
パシャリ! パシャリ! パシャリ!
ビシッ! と、ポーズを取るブルーに盛んにフラッシュが焚かれる。
スマホの電子的なシャッター音がうるさい。
(おー、盛り上がってる盛り上がってる。コッチに奥の手が出来たことも知らずに)
でも、不意打ちをするには、好都合な流れだ。
もぞもぞもぞ……
腕のように太い新たな触手を、マントの下で何度も動かす。
「……まるで腕みたい、か……六本増えた、計八本の腕……」
そんなことを小声で呟いた時、ふいに、頭をよぎる。
(あ、江の島には八臂の弁財天像があったな)
八臂の弁財天像とは、江の島の辺津宮にある重要文化財の、八本の腕の像だ。
八本の腕にそれぞれ、宝珠、剣、戟、鉤、輪宝、羂索(縄)、弓、矢を持つ、戦いの女神だ。
(うん、八本腕の戦いの神様、カッコイイじゃんっ)
せっかくだから、あやかろう。
確か、たくさんの腕を持つ仏像は、本物の腕は本手と呼ばれ、その他の腕は伸臂と呼ばれるはずだ。
(よし、新たな触手は触手臂……いや触伸臂と名づけよう)
杞憂だろうが、後で総統閣下に変な名前をつけられても困るので、自分で命名する。
(……いや、絶対、杞憂じゃないな……)
僕は確信する。
パシャリ! パシャリ! パシャリ!
「おー、どーもどーも」
お気楽ブルーが、ピュア・シャイニング親衛隊や一般観光客に手を振ってる。
(ふん、今はお調子にのってろ。さて、六本それぞれの触伸臂の名前はどうするか……そーいえばDr.は、前総統閣下の能力を無限触手って呼んでたな……)
そこで僕のオタク脳が暴発した。
(よしっ! 本物の腕の下にある触伸臂は、剣のような直接的な攻撃をイメージして、無限伸剣にしようっ)
そしてその下、中間にある触伸臂は、弓矢をイメージして、無限魔弓だっ!
で、一番下の触伸臂は、敵を捕まえて縛る羂索をイメージして、無限緊縛で決まりだろっ!
(くうぅぅぅぅうぅぅぅーーーーっ!! カッコイイーーーー!!)
じーーーーーん……
怪人名はヘッポコなネーミングだったけど、ソレを払拭するほどの、最高にイカす名前になったっ。
自分のネーミングセンスの良さに、一人、感心する。
(……著作権とか取るべきだろうか?)
新たな悩みが、一つ増えた。
ちなみに、一瞬、名前にイタリア語を入れようか迷ったが、ソッチはサッパリ分からないので、アッサリ断念した。
「さあって、じゃあそろそろ、このイタリア野郎をブチのめして、シラスの餌にしてフィニッシュだなっ。お腹空いたし」
お調子ブルーが、肩をグルグルと回しながら、そう宣言した。
(くくくっ……調子にのっちゃって。今から最高にカッコイイ名前の触伸臂を味あわせてあげるよ)
あと、お腹が空いたのは僕も同感。
(さてと、上手く騙さなきゃね)
最大の威力を発揮するために、不意打ちで使ってやる。
「……ソッ、ソレハドーーーデショウ! ショクシューならイクラーーデモハエマーースヨゥ!」
狼狽えた演技をして、ぴよんん~~と指触手を伸ばして威嚇する。
「ふっ! 往生際の悪いやつだなっ。そんなショボイ触手の攻撃力じゃあ、このあたしは倒せないんだよっ」
ブルーは少し呆れたように、鼻で笑った。
「今から実力差ってヤツを見せてやるから、死にたくないならさっさと降参して、尻尾巻いてイタリアに帰りっ、なっ!」
ダンッ!
自信満々のブルーは地面を蹴って、弾かれたように突っ込んで来た……
第16章 「真の覚醒」
終了まで、あと1話




