16.2 エロティック・セブン EROTIC SEVEN14
「止めだぁぁぁ!! シャイニング・ボレーーシューーート!!」
その瞬間、ブルーの元気な叫び声が耳に入った。
「へ?」
視線を上げる。
ブルーが放物線を描かず、ミサイルが如く真っ直ぐに、飛んできていた。
ヒューーーーーーーーーーーーーンッ!!
とっくに追撃の跳び蹴りを放っていたようで、すでにブルーのブーツの裏が、目前にまで迫っていた。
(あ、もう無理だ……)
かなりの速度で飛んでくるソレを、避けることは出来ないと、瞬時に悟った。
ギュンッ
もう、喰らう……
と、その刹那、[肉を切らせて骨を絶つ]との言葉が頭に浮かんだ。
(そうだっ! どうせ避けられないなら、喰らいながら捕まえてやるっ!)
腹を括って、治癒能力を最大限に活用すると決めた。
ヒューーーーーーーーーーーーーン……
瞬時に前屈みで腰を落として、足を踏ん張り、ブルーの飛び蹴りを正面から待ち受けた。
(ううっ、でも怖いよぅ……)
ボガゴオォオォオォオンンンンッッッ!!!!
ブルーの右足が、上腹部に突き刺さる。
硬化したパワースーツなど関係なく、体に衝撃が走る。
「うがあぁああぁぁぁぁっっっーーーーーーー!?!?」
発狂しそうな激痛に襲われた。
バキンッ! バキンッ!
肋骨の数本が音を立てて折れた。
「があぁあぁあぁーーーーー……」
バシッ
激痛に耐えながら、ブルーのブーツをしっかりと両手で掴む。
シュン……
肋骨が再生し、瞬時に痛みが消え去った。
ズザザザザーーーーーー……
体が勢いに押されて、掴んだブーツが上腹部に喰い込んだまま、三メートルほど地面を滑る。
ジャリ!
ようやく強化ブーツの底が、アスファルトをしっかりと掴んだ。
「おうえぇぇぇ……」
ちょっとだけ、ナポリタンが胃から口の中に出た。
いや、クレームブリュレかもしれない……
グイイイィィィ
「ゴクン……つっ、ツカマーーーエ、マシターーーヨゥ! Ho! 綺麗ナー足デーースねェ! HA! HA! HAーーーー!」
口の中のなにかを飲み込んでから、無理して不敵に笑う。
なんか英語圏の笑い方のような気もするが、どうせ細かなことなんて、ブルーは気にしないだろう。
「なっ!? お前っ、あんで平気なんだっ!? どれだけ丈夫なんだよっ!?」
おそらく、再生するのは触手だけだと思っているのだろう。
ブルーは左足だけを着地させると、驚愕し、狼狽えた。
わあぁあぁあぁあああぁぁーーーーーー!!
「うおおおぉぉぉーーー!! ナポリタン凄げぇーーー!!」
「ブルーたんっ、もう一押しだよーー!! 頑張れーーー!!」
熱い展開に、両サポーターから歓声が上がる。
「ぐっ! くそっ! 離せっ!」
ブルーが軸足で片足立ちのまま、掴まれた右足をブンブンと振る。
「HA! HA! HA! HAーーーー! ゲンキィィーーでゴザルネェーー!」
上体が左右に振り回されるが、それでも決して離さない。
そして触手を伸ばす……
(あ……触手に刺さったままのアスファルト片が……)
「チッ! それならっ……おらあぁぁあっ!!」
引いて駄目なら押してみろ、と言わんばかりに、掴まれた右足を押し込むように腹に打ち込んできた。
ドスンッ!!
片足立ちなのでそこまで威力はないが、それでも一メートほど後ろに飛ばされる。
が……
シルシルシル……
「アーララぁ~、もう、ショクシューはカランデマーーースヨゥ?」
当然、掴んだまま指触手を伸ばして、右足に這わせていたのだ。
体と手の平は離れてしまったが、10本の指触手はグルグルと右足首に巻きついている。
二人の間は、運命の触手の糸で結ばれた。
「くそっ、またコレかよっ!」
ブルーは性懲りもなく、また足をぶんぶんと振る。
「ソレ、ムーーダデーースヨゥ?」
それで外れないのは実証済みだ。
小馬鹿にするように忠告しつつ、考える。
(さて、このままもう一度、絞めを目指すか?)
チラリとピンクの方を見る。
シュンッ シュシュン バシッ ガンッ ビシシィィ……
ピンクはカラー1将軍との戦闘に気を取られて、こちらの異変に気がついてない。
(……いや、それでもすぐに気がついて、ピンクが助けに来るだろう)
絞め落としを狙っても、どうせ失敗する。
それならこの隙に、わきの下の触手をなんとかするべきだ。
僕は、新しい触手を生やすのに、専念すると決めた。
シルシルシルシル……
ブルーに気がつかれないように、二本だけ触手を戻す。
その中の一本はアスファルト片が刺さった触手だ。
「近づいたら、もう一度蹴ってやるっ!」
ブルーが片足立ちで、捕らえられてる右足を威嚇するように上下させる。
「Ho! 乱暴ナSignorina(お嬢さん)デーース……」
ワザと軽く戸惑ったような声を上げて、近づかないで時間を稼ぐ。
(そして、この刺さってるアスファルト片を……)
刺さっているアスファルト片を二本の指触手で掴んで抜き、持ち直す。
カチリ……
その後すぐに、二本の指触手でベルトのバックルに触れ、パワースーツのスイッチを切った。
これでスーツは硬化しない。
そして小さなアスファルト片を落とさないよう、精神を集中させて右わきに刺していく……
ぷすっ……
(痛て……)
パワースーツを通り抜け、体に突き刺さる。
突き刺したまま、ゆっくりと下に引いていく……
ビリリリリリィィィ……
体に傷をつけながら、パワースーツの超科学特殊繊維が大きく破けた。
すぐに左わきに触手を動かし、同じようにアスファルト片を突き刺した。
ビリリリリリィィィ……
スーツの左側も大きく裂けた。
カチリ……
アスファルト片を捨てて、バックルを押して、スーツのスイッチを入れる。
ビービービー……
とたんに警告音が鳴り、アイモニターに、スーツの機能低下の警告が表示される。
黄色い文字で46%と表示された。
「……何か、あんた、変な音してない? それに何で体をくねらせているの? ……もしかして変態?」
片足立ちのブルーが、ジト目で訝しがる。
(ほっとけっ!)
僕は心の中で突っ込みながら、両わきに力を込めた……
シルシルシルシル……
シルシルシルシル……
(おおおおっ!? 本当に生えたっ!! てかっ、太っ!!)
わきの下やわき腹から生えた触手は、まるで腕のように太く、力強いものだった。
マントの下で動かし、感覚で数えると、片方三本、左右計六本の太い触手が生えていた。
第16章 「真の覚醒」
終了まで、あと2話




