16.1 エロティック・セブン EROTIC SEVEN13
「じゃ、殺ってくるな」
タンッ
ブルーがピンクに軽くそう告げると、突然、地面を蹴った。
ドシュン!
全くダメージを感じさせない勢いで、ブルーが突っ込んで来た。
ドガガガガガッ!!
「うぐっ!? ガハッ!?」
軽く迷いや思考に囚われていたせいで、一気に間合いをつめられてしまい、ブルーの遮二無二の攻撃を、数発、モロに受けてしまう。
ボゴンッ! ボゴンッ!
パワースーツが硬化して、鈍い音を立てる。
ズンッ ズンッ
衝撃が硬化したパワースーツと皮膚、筋肉を突き抜けて内臓まで達する。
「ウェェエェ……」
シュン……
鋭い痛みと重だるい吐き気を感じたが、治癒能力のお陰ですぐに消え去る。
タタンッ パシンッ
慌てて気を引き締めて、体勢を立て直し、攻撃を捌く。
(気をつけようと思っていたそばからコレだよ。情けないなぁ)
「えいっ、やぁ!」
ヒュン
ピンクはブルーとは違う判断をしたようで、僕には目もくれずに、再充填を始めた将軍の方へ向かっていった。
「チッ、小娘がっ。小癪なっ」
ビシシィィ!
将軍は再充填を断念して、鞭を振るってピンクに応戦する。
さすがはDr.ヘッドランドが[超ベテラン]と評したカラー1将軍だけあって、ピンクのラッシュを巧みにかわして、反撃の鞭を肉薄させる。
ピシンッ! ピシンッ! ……ガガガカガッ! ダンッ! バシッ! ビシッ! ……びよよょょ~~ん……
二箇所で一対一の激しい攻防が続く。
僕と将軍は中距離型、ブルーは近距離型で、ピンクは……今は近距離で戦いを挑んできているが、これが一番得意といった感じには見受けられない。
「「「♪ピュアなパワーで~悪い怪人ねじり潰してぇ~……」」」
場外のピュア・シャイニング親衛隊がより一層大きな声で歌う。
♪ポポン・チンチーン・ポンポン・チーン……
小鼓とトライアングルが鳴り狂う。
「♪……でも、本当は貴方だけをねじりたい~ピュア・マイハート~……」
桃色と水色に光る蛍光ペンライトが乱舞する。
ピュア・シャイニング親衛隊の汗が、江の島の夜空に飛び散る。
協力会員が「ナポリタンッ」「カラー1将軍っ!」と祈るように叫ぶ。
戦闘員が「シマッーーー!!」と奇声を上げながらポーズを取り、意味もなく飛び跳ね、側転し、走り回る。
大亀ヶ岡広場が、一種異様な興奮状態に包まれる。
「くっ、ナポリタン……」
総統閣下がそう一言呟くと押し黙ってしまった。
追加の命令は、まだない。
ドガンッッ! ドガンッッ! ドスンッッ! ……パンッ! ダダダダダダダッダンッ! ……びよよょょ~~ん……
そのまま戦闘が続く……
……そう、総統閣下から授けられた作戦は、ここまでだったのだ。
必殺のあの奇襲で仕留め切るのが、総統閣下の作戦だった。
そして沈黙してしまったということは、もう作戦は無い……
つまり、指揮官に出来ることは、もう無いということなのだろう。
ガシンッ びよよょょ~~ん バンッ ピシッ びょん びよよん びよ~~ん
(……ならさ、ここからは現場の自分たちで、なんとかするしかないよね)
ルーキーの癖に、偉そうにヌカすなと笑われそうだが、怪人戦闘とは元々、戦う個人の力量と判断が、勝敗を分けるものだと僕は考えている。
なので、いつまでも総統閣下の指示待ちでは、駄目だ。
(……でも、どうする?)
正直、指触手はパワー不足だし両手しか使えないので、相手が一人だけでも心許ない攻撃力だ。
ダダンッ! ガシッ! ヒュン・ピシンッ! シルシルシル……ガツッン! ドンッ! ……びよよょょ~~ん……
二箇所、一対一の攻防は、互いが有利な間合いの取り合いに終始してしまい、優劣がつかない均衡状態に陥る。
(確かDr.は、触手は全身から生やすことが可能だと言ってたよね?)
たくさんの触手があれば、絶対に有利だ。
均衡を破るためにも、何とか体から生やしたい。
もぞもぞもぞ……
(どこか、生えそうな所はないかな?)
体の彼方此方に力を入れてみる。
もぞもぞもぞ……
戦いながらマントの下で体をくねらせて、試行錯誤を続ける……
……するとわき腹の辺りが、妙にムズムズとするのを感じた。
(ここ……なのか?)
怪人の本能が、どうもこの辺りから、触手が生えると訴えている気がした。
んっと体の側面に気持ちを集中して力を入れると、わきの下、わき腹周辺の数箇所が、モコモコと盛り上がる感覚があった。
……のだが、パワースーツが邪魔でそれ以上伸びなかった。
(むうぅ……困ったなぁ……)
どうやってコレを外に出そうか、考えを巡らす。
「へっ! 隙ありっ!」
鮮やかな青色のショートカットがふわりと揺れて、ブルーがスッと、懐に潜り込んだ。
ドゴゴンンンンッ!!
瞬間、腹部に強烈な衝撃が走った。
「ぐがあぁぁ!! っっっふっ!!」
新たな触手を生やすことに気を取られすぎて、ブルーのボディーブローをモロに喰らってしまった。
硬化したパワースーツ越しに、内臓が抉られた。
ドシュンンンンッーーー……
逃げる海老のような九の字の姿で、手足を力なく伸ばしたまま、後ろに吹き飛ばされた。
シュン……
(うっ! ヤバい。ナポリタンが口から出そう……)
瞬時に治癒したのはいいが、胃の中が逆流してしまう。
怪人ナポリタンが、口から触手状にナポリタンをリバースしたら、それはもう地獄絵図だろう。
なんとか飲込み、堪える。
ドガンッ! バンッ! バインッ ゴロン ゴロン ズザザザザ……
アスファルトに打ちつけられ、何度かバウンドしたあと、無様に転がる。
パワースーツが硬化しても、体のあちこちが打ちつけられて、痛い。
それでも、すぐに治癒したので、必死に、早く起き上がる。
サク……
「痛て……」
伸びてる触手に痛みを感じた。
見ると、爆風で飛んだ小さなアスファルト片が、触手に刺さっていた。
(なんだ、アスファルト片か……)
抜こうと、別の指触手を伸ばす……
「止めだぁぁぁ!! シャイニング・ボレーーシューーート!!」
その瞬間、ブルーの元気な叫び声が耳に入った。
第16章 「真の覚醒」
終了まで、あと3話




