15.4 エロティック・セブン EROTIC SEVEN12
ビュンッ!!
「紺瑠璃のウィップゥゥゥーーーー!!」
寸刻後、ピュア・シャイニングの死角から飛び出した将軍の鞭が、空間を切り裂いて伸びる。
「…かんっ!! 避け……のじゃ!!」
微かに、ピュア・シャイニングの方から男性の声が聞こえた気がした……
チュン……ビカァァッ!!
先端がピュア・シャイニングの近くに到達すると、瑠璃紺色の怪しい輝きが、強烈に爆ぜた。
ドガアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンン!!
大爆音が大亀ヶ岡広場に轟いた。
「「きゃあああぁぁぁーーーー……」」
ピンクとブルーの悲鳴が重なる。
ドビュュュュュウウウウウウゥゥゥーーーーーーーー!!
アスファルトの地面がビリビリと震え、爆風がテーブルや椅子を吹き飛ばす。
「ぐうぅぅ……」
離れた地点に着地した僕は、黒マントで顔を覆って爆風に耐える。
ウウゥゥゥーーーーー………モワワァァ……
爆風が過ぎ去ると、すぐに爆煙と土煙が辺り一面に広がり、全ての者の視界を覆った。
シュン……
煙の向こうで、紺瑠璃色の光が放散して、紺瑠璃のウィップが静かに、ただの鞭に戻るのだけは分かった。
ざわざわざわざわ……
遠く安全な場所で観戦している協力会員、一般観光客からざわめきが起こる。
そしてピュア・シャイニング親衛隊は固唾を呑んで、二人の無事を祈っていた……
……………………
(うわぁ~、初めて間近で見たけれど、やっぱりおっかないなぁ……)
煙に霞む爆心地を見ながら、しみじみと思う。
BIPに所属しているなら誰もが知っている、カラー1将軍の一撃必殺の武器が、[紺瑠璃のウィップ]だ。
数分かけてじっくりと将軍自身が持つ何かの[力]を鞭に流し込み貯めると、鞭全体がラピス・ラズリのように怪しく輝きだす。
そのフル充填状態で鞭を振るうと、先端から一気に瑠璃紺色の力が放たれて、大爆発を起こすのだ。
これに直撃すれば生身の人間なら即死、魔法少女でも一撃で戦闘不能になる。
実際、過去に将軍は幾人もの魔法少女を戦闘不能にして、戦意喪失で引退(戦意を失うと、変身出来なくなるらしい)に追い込んだと、伝えられている。
(直撃してもあの二人なら死にはしないと思うけど……若い女の子だし、怪我させるのは罪悪感で心が痛むよぅ……)
頭に、二人が傷だらけで倒れている姿が浮かび、胸が締めつけられる。
(特にブルーのそんな姿は見たくないな……)
怪人としてこの奇襲が成功していて欲しい気持ちと、人間として二人が無事であって欲しい気持ちが入り乱れる。
サラサラサラサラ……
不安定な気持ちで注視していると、やがて潮風で煙がゆっくりと流されて、晴れていく。
煙の中にいるピュア・シャイニングの二人は…………
「はぁ・ハァ・痛ってぇなぁ……耳がきーんってするよ……はぁ・ハァ……」
「はぁ・ハァ・はぁ・ハァ……今のは……危なかったね……」
…………二人とも爆心地から少し離れた地点に、自身の足で立っていた……
なんとか瑠璃紺色の爆発の、直撃は避けたようだ。
「チッ! 外れたか……」
カラー1将軍が、悔しそうに舌打ちした。
わああああぁぁぁあぁ!!
ピュア・シャイニング親衛隊と、一般観光客から安堵の歓声が上がる。
(ふうぅぅ~、二人とも無事だったかぁ……)
思わずホッとしてしまう。
(しかし、破壊力はBIPで一番と言われるだけはあるな)
直撃は避けたが、爆風をモロに浴びた二人は、純白の衣装が煤で汚れて、所々破けていた。
色彩鮮やかな美しい髪は乱れ、白く綺麗な手足の数箇所には、小さな切り傷が出来て、無惨にも血が滲んでいる。
爆心地……さっき僕らが戦っていた場所に目をやると、アスファルトには直径1メートルほどのクレーターが出来上がっていた。
単発だが、やはり洒落にならない破壊力だ。
(噂では総統閣下が、これ以上の破壊をもたらす技を持っているらしいけど、それは誰も見たことないし……)
確か[紫の霧]って名前だったかな?
「じっちゃんに避けろって言われなきゃ……ヤバかったな……痛っっ……」
「うん、そうだね……おじいちゃん、ありがとう…………あ、うん、今は長官さんね」
シュルゥゥゥーー……
ブルーとピンクがそう話していると、二人の周りに光が集まりだす。
「将軍さんの……存在をすっかり忘れてたね……。あの鞭が一番危ないってよく知っていたはずなのに……」
「戦闘に……参加しないで……姿が見えなくなったと思ったら、こんな所に隠れてやがって……ふぅぅ~……触手を隠していたイタリア人といい、本当に卑怯な奴等だな」
シュンンンンンーーーー……
痛みを堪えてそう話す二人の衣装の破れた部分に光の粒子が集まる。
シュン……シュシュン……
見る見るうちに、衣装が再構築されていく。
ヒュンッ ヒュヒュン ヒュン……
出血した切り傷の周りには、光の粒子が細い帯状になって飛び回り、忽ち怪我を治癒していく。
(あの光の粒子は怪我まで治すのかっ!? しかも帯状の先端の形が、小さな龍の頭に見えるんだけど……何なんだろう? アレは)
シュルルルン……
二人の周りを飛び回る[輝く小龍]が霧散すると、すっかり綺麗なピュア・シャイニングに戻っていた。
(おいおいおい、嘘だろ? 僕と同等の治癒能力まであるのかよ……)
呆気にとられて、ボンヤリと見つめる。
(高い戦闘力に治癒能力……こんなのを見せられると、数百人を有するBIPという組織に、たった二人で立ち向かえるのがよく分かるよ)
正直、想像以上に彼女たちは、出鱈目な存在だったようだ。
(罪悪感や甘い気持ちを捨てないと、やられるのは僕の方だな。気をつけないと……)
まぁ、完全に捨て切れるかは、あまり自信ないけど……
「……さてと。もう奴等もいい加減ネタ切れだろう。そろそろ終わらせようぜ」
ブルーが自身の回復を確かめるように、手の平をグー・パーとさせながら断言した。
「あの鞭の弱点は単発だってのは有名だしなっ、再充填する前にさっさとこっちのイタリア人をぶっ倒して、エロ将軍一人にしちまえば後は楽勝だろっ」
そう言って、ブルーが僕を見る。
「じゃ、殺ってくるな」
タンッ
ブルーがピンクに軽くそう告げると、突然、地面を蹴った。
ドシュン!
全くダメージを感じさせない勢いで、ブルーが突っ込んで来た……
第15章 「総統閣下の知略」終了
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次は第16章 「真の覚醒」(4話)になります。
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