15.3 エロティック・セブン EROTIC SEVEN11
「Ho! ソンナーーニ、気味悪ガナイデ、クダサーーイ」
シュルルルルル!!
開き直って、走り近づきながら、ブルーに触手を伸ばす。
「わわっ! キモっ! ……って、この触手っ、どこまで伸びるんだよっ!?」
ブルーは攻撃を放棄して、ぴょんぴょんと逃げ回る。
シュルルルルル!!
どこまでも執拗に、ブルーを触手で追い回す。
シュタンッ
ブルーに気を取られていると、ピンクが一人、大きく離れた。
タンッと綺麗に着地すると、間髪入れずに白弓を出現させる。
「大矢数っ!」
ピュン! ピュン! ピュン! ピュン! ピュン!……
ブルーが逃げるなら、距離が離れて同士討ちにはならないと判断したようで、ピンクは躊躇せずに、矢を放った。
何本もの矢が、弾幕のように向かってくる。
「グルグルグーーールッ!」
ブオォオォオォオォン
ブルーを諦め、咄嗟に触手を体の前で大きく広げて、扇風機のように回転させる。
パチッバチッバチッパチッバチッバチッ……
放たれた光の矢が触手に当たって、全て払い落ちる。
「痛テテテテェーー!」
触手が何本か、千切れてしまった。
シュン……
でも、すぐに拾って繋げる。
その間にブルーは、ピンクのそばまで、這這の体で逃げ戻った。
「あーキモかったっ。それにしてもあの触手、馬鹿みたいに再生能力が高いな。メンドイぞ」
だいぶ冷静になったのか、ブルーがそう分析した。
「うん。アレだと遠距離攻撃も無駄みたいだよね。どうしようか?」
「結局、接近して本体を叩くしかないかな? 触手はキモいけどさ」
二人はアレコレと話し合う。
ポンッ
アイモニターに小隊専用回線と表示された。
「ナポリタン、時間稼ぎは願ったり叶ったりだけど、話し合いが続くと本命に気がつかれるかもしれないわ。不利な二対一でも攻撃しなさい」
総統閣下がそう、命令した。
「了解です、シマァー」
密やかに返事をする。
「Ho! Signorina(お嬢さん)、ナイショバナーーシなら、ワターシもマーーゼテ、クダサーーイ!」
そして、まだ話し合う二人に大声で呼びかけ、距離をつめて、触手で襲いかかる。
シルシルシルシルシル!!
指触手を派手に伸ばしてみせる。
「へっ! ちょっとキモいけど、ネタバレしたからもう平気だっ。今度こそ叩きのめしてやるよっ!」
「貴方の触手が悪事に使われては困りますっ! なのでここで倒して、イタリアに帰っていただきますっ!」
二人も気持ちを新たに向かってきた……
バシッ! ビシッ! ドンッ……シルシル! パシンッ! ガッ……ビヨョョ~~~ン……
二対一の攻防を続ける。
触手を束ねてパンチにしたり、解いて掴みかかったりと、今までとは違う戦い方をする。
伸ばし方もストレートではなく、カーブさせて死角を突いたり、両手両指の一本一本を別方向に伸ばしたり、網のように広げてみたりと、考えられる限りの工夫を凝らす。
ピュア・シャイニングは今までに色々な怪人と闘ってきた経験が蓄積されているのだろう、変則的な僕の攻撃にも、なんとか対応して反撃を繰り出してくる。
三人での激しい攻防が、しばし続く。
近接でも遠距離でもない、僕にとって一番有利な中距離の間合いを心がけて、魔法少女二人と渡り合う。
「ナポーーーーリターン!」
チャッ! チャッ! チャッ! チャッ!
「ナポーーーーリターン!」
チャッ! チャッ! チャッ! チャッ! ……
僕が健闘していると感じたのか、協力会員たちが即興のチャントを、声を合わせて歌い出す。
「ナポリタン、充填が完了したわ。次の作戦通りにフードエリアに誘導して」
総統閣下から通信が入る。
「シマッ」
(ついにアレの充填が終わったっ!)
この嬉しい報せに、ドクンッと心臓が跳ねるも、なんとか抑えて、小声で返事をする。
「今度は噛まなかったな」
Dr.が場違いな呟きを入れた。
もう貴女は黙ってて下さい。
でも、ちょっと冷静に戻った。
タタンッ ピョン シュシュッ ビョ~~ン……
僕はすぐに、大亀ヶ岡広場のアスファルトで舗装されたエリアへ、後退を始める。
ジャリ……
後ろに出した右足のブーツ底が、アスファルトの地面を掴む。
そこは、数件のお店があり、昼間なら観光客がオープンテラスで各種ジェラートやカフェ・ラ・テなどを楽しむ場所だが、もちろん今は、人気がない。
そのままフードエリアに進入する。
バババッ バシンッ タタタンッ ピョン タンッ ビョ~~ン……
……ふと、ここもいつか、青浜さんと二人で行ってみたいなぁ、と考えてしまう……
「へへっ!!」
ドシュン! シュッ! シュッ! シュシュッ!
僕の後退スピードが増したことを、ブルーは自身の攻撃が効いていると勘違いし、嵩にかかって攻め立ててくる。
(ふふふっ。さっきのは総統閣下の奥の手じゃないんだよ。今度のが本命だからね)
偽拳からの拘束絞め落としはサブの作戦で、時間稼ぎの要素を含んでいた。
本命の作戦は、次なのだ。
だいたい、わざわざ二対一で戦うなんて、おかしいと思わない?
総統閣下の知略に感服し、心強く思い、勇気を持って作戦を敢行する。
フードエリアは静かで、人っ子一人いない。
いや、そこにただ一人、目的の人物が自販機の陰、死角に潜んでいるのを確認した。
(いたな。上手く誘導しなくちゃ……)
ドンッ! ガスッ! ビチンッ!
触手を心持短くして、ワザと攻撃を浅く喰らい続ける。
好機と騙された二人の攻撃が、さらに加速する。
ドシュン バババババッ ヒュンッ ビシシシシシッ バシッ
激しさが増し、暴風の如くの連打が乱れ飛ぶ。
「がっ!? ぐっ……」
攻撃を浴びつつ、そのまま自販機のそばを通過した……
「狙いはあまりつかん。まぁ、死にたくなければ、せいぜい必死で避けろよ? ナポリタン」
すると間髪入れずに、通信でカラー1将軍の声が耳に入る。
再度、横目で死角に隠れるカラー1将軍の姿を確認する。
普段は深く静かな瑠璃色を湛えている紺瑠璃のウィップが、紫がかった紺色の強烈な輝きを放っているのが見えた。
どう見ても、異常な輝きだ。
将軍は前後に足を開くと、スッと腰を落とした……
ダダンッ!!
僕とカラー1将軍が同時に跳ぶ。
(本命の作戦を喰らえっ!!)
僕は一切の攻防を放棄し、力の限り地面を蹴って飛び退いて、二人から大きく距離を取る。
ビュンッ!!
「紺瑠璃のウィップゥゥゥーーーー!!」
寸刻後、ピュア・シャイニングの死角から飛び出した将軍の鞭が、空間を切り裂いて伸びる。
チュン……ビカァァッ!!
先端がピュア・シャイニングの近くに到達すると、瑠璃紺色の怪しい輝きが、強烈に爆ぜた。
ドガアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンン!!
大爆音が大亀ヶ岡広場に轟く。
「「きゃあああぁぁぁーーーーーーーーー……」」
ピンクとブルーの悲鳴が重なった……
第15章 「総統閣下の知略」
終了まで、あと1話




