15.2 エロティック・セブン EROTIC SEVEN10
ブルーの足元に偽拳が落ちた。
(来たっ! チャンスだっ!)
ようやく、絶好の位置に偽拳が到達して、内心ほくそ笑む。
シュルルルルル!!
ブルーの足元に落ちた偽拳を解いて、指触手を、純白のブーツに包まれた左足首目がけて、一気に伸ばす。
シュルル!! シルルルルル……シルシルシル……
足首を掴むと、そのままグルグルと何重にも巻きつく。
シルルルルル……
念入りに、絡みつく。
ガクンッ!
「ほへっ!?」
左足を掴まれ、蹈鞴を踏んだブルーが、自身の足首に目を落とす。
「……うわわぁぁ、あにか絡んでるっ!!」
触手を見つけたブルーが、叫び声を上げた。
「うわぁぁあぁっ!! これ触手だったのかぁ!? 気持ち悪っ!?」
ブンッ! ブンッ! ブンッ!
慌て、半ばパニック状態で、左足を振って外そうとする。
ビョ~ン ビョ~ン ビョ~ン……
が、伸縮性にとんだ触手は、伸び縮みするだけで決して外れない。
シュルルルルル!! シルシルシル……
ブルーがパニクっている間に、左手も伸ばし、軸足になっている右足首にも、触手を絡める。
「あうっ!?」
両足を絡め取られたブルーが、少し間の抜けな声を上げてバランスを崩し、両手をパタパタと振りながら、ぽてんっと尻餅を突いた。
「シッ・マッ!」
そのままブルーをグググっと強引に持ち上げて、宙に浮かせ、無防備な状態にする。
ブルーは人としては軽い方だろうが、怪人化で身体能力が上がっていても、さすがに指触手で持ち上げるには重過ぎる。
指がプルプルと震える。
「わっ!? わっ!? わっ!?」
ブルーは空中で足を伸ばしたまま屈伸したように体を折って、両手で足首の触手を乱暴に掴み、なんとかバランスを保つ。
うん、体柔らかいね。
「良くやったわっ、ナポリタンっ! 予定通りそのままホールドして、絞め落としなっささいっ!」
自身の作戦が成功した総統閣下が、少し上擦った興奮気味の声で、命令を下す。
「シッ・マッ!」
(ううぅぅ、重いよぅ……)
大きく後退した時に掴んだので、3メートルほどの距離がある。
わずかな距離だが、人間を指触手で持ち上げたまま引き寄せるには、かなりキツイ。
(……どうでもいいけど、総統閣下、さっき最後に噛んだよね?)
ブルーを引き寄せながら、余計なことを考える。
まあ、恐ろしくて、口には出せないが……
「おい、さっき噛んだよな?」
傍若無人なお姉さんが、容赦なく突っ込んだ。
「もう少しよっ、ナポリタンっ!!」
総統閣下がスルーする。
シル……シルル……
「可愛いぃ、Signorina(お嬢さん)、抱きぃ、シーメテ……ちゅぅーしてあげまショー」
つらいのを悟られぬように軽口を吐き、口を蛸のように窄めて、徐々に引き寄せる。
(悪いけど命令通り、このまま抱きよせて、触手で締め上げちゃおう。失神させるだけだから許してね、ブルー)
これも青浜さんとの、薔薇色で桃色の未来のためなのだ。
「うわわわぁぁぁ!!! 止めろっ変態外国人っ!! ファーストキスがお前なんて、死んでも嫌だぁぁーーーーっ!!」
徐々に近づくブルーが、顔をそむけて一際パニくる。
「ブルーっ!! ……弭槍っ!」
ヒュンッ
その瞬間、ピンクが文字通り飛んで、間に入った。
手に持っている白弓の形が微妙に変化していて、先に槍の刃のような物がついていた。
ピュンッ!
それを迷いなく、触手に振り下ろした。
ザクッ!
ピンクの弭槍が、ブルーの足を拘束していた指触手を、中間辺りでスッパリと切断する。
ドスッ……
ブルーが落下して尻餅をついた。
「痛っ!!」
「痛っ!!」
触手を切られた僕と、尻餅を突いたブルーが仲良くハモる。
「うわぁぁ、触手キモいっ!! あにか微妙に紫色に光ってるし、コレ、毒とか無いよなっ!?」
ブルーが慌てて、足首に千切れ残った触手を、乱雑に外す。
ビュン!
ピンクは僕とブルーの間に立つと、牽制とばかりに弭槍を振る。
タタンッ……
仕方なくバックステップで後ろに跳ぶ。
もちろん、触手の切断面は、すでに塞がっている。
僕が距離をとると、ピンクは素早く白弓をワッペンに戻して、ブルーの足に巻きついた触手の取り外しを手伝った。
(……まずは僕に、弭槍を振り下ろせばいいのに……)
ピンクは、僕の両手が塞がっているのに、まずはブルーを助けるために触手を切断した。
(その後に本体を狙ったって、無駄だろうに)
順番が逆なら、倒せる大チャンスだったはずだ。
この行動はピンクの美点かもしれないが、戦闘では明らかな弱点だ。
(しかし弭槍って。この人は仙石権兵衛秀久かよ?)
シュルルルルル!!
某戦国武将のようなレアな武器を扱うピンクにプチ驚きつつ、触手を外す二人に向けて、新たな触手を伸ばす。
もう、隠す必要はない。
堂々と、二人を捕まえにいく。
「うえぇえぇ!? また来たっ!!」
ピョピョン
千切れ残った触手を外し終えたブルーが、新たな触手に気がつき、大きく飛びのく。
「うっ……」
ピョン
ピンクも顔を顰めて、遠くに逃げた。
「何だよっ、ソレっ! 伸びるパンチじゃなかったのかよっ! 嘘つきエロイタリア人っ! 卑怯者っ!」
触手から距離をとって安心したのか、ブルーが口角泡を飛ばして、見事な逆ギレを見せた。
「まさかあれは触手だったなんて……私たち、完全に騙されたみたいだね……」
ピンクがガックリと肩を落として嘆いた。
「チッ……」
シルシルシルシル……
二人に逃げられたが、ポイ捨てされた千切れ残った触手が勿体無いので、拾って回収する。
「おおいっ!? ソレ、切られても、また伸びるのかよっっ!?」
ブルーが気味悪がりながら叫ぶ。
僕は無視して、考える。
(コレ、くっつきそうな気がするんだよね……)
本能なのか、なんとなくそう思ったので、拾った触手を指先に近づける……
シュン……
すると、一瞬、紫色に光って、簡単に結合した。
(おっ、やっぱりくっついたっ)
中々のエコだ。
(てか、千切れた触手を結合して動かせるなら、罠にするとか、色々な使い道が出てくるぞ)
「おえぇえぇえぇっ!! くっついたぞっ!! あにアレっ、最悪だっ!!」
結合を見ていたブルーがドン引きした。
第15章 「総統閣下の知略」
終了まで、あと2話




