15.1 エロティック・セブン EROTIC SEVEN9
(このまま分散させずに触手を伸ばすっ!)
攻撃を続けるために、無防備に距離を詰めようとしてくる二人に目がけて、力を込めて、拳状になった両手の指触手を伸ばした。
ビュヨヨヨヨンンンンッ!!
「ほへっ!?」
「えっ!?」
ノーモーションで放たれた、腕のリーチ以上に伸びてくる偽拳に、二人が一瞬呆気に取られた表情を浮かべた。
ドスッ! ドスッ!
「がはっ!?」
「うぐっ!?」
不意を突かれたブルーとピンクの腹部に、偽拳がカウンター気味にクリーンヒットした。
(よしっ! さらにもう一発だっ!)
シルル……ビュンンンンッ!!
すぐに触手を手元に戻し、すかさずにもう一度、偽拳を放つ。
タタンッ!!
だが二人は、苦悶の表情を浮かべつつも、素早く後ろに跳んで距離を取った。
スタ……
「痛ってえぇぇ!! 何っ今のっ!? 腕が伸びたぞっ!?」
ブルーが上下のコスチュームの間から僅かに覗く、可愛らしいおへその辺りを擦りながら、驚きの声を上げた。
「うっうぅ……これが怪人ナポリタンさんの……能力? ……」
ピンクも僅かに見える綺麗な腹部を手で押さえながら、驚愕の表情で呟く。
シルシルシルシル……
(ぶっつけ本番でも上手く当たったけど……二人とも思ったよりダメージが軽いな……)
空振りに終わった二発目の偽拳を戻しながら考える。
(やっぱり、指の延長なだけに、どうもパワー不足みたいだ。伸びる速度も大したことないし……)
これでは決定打にはなりそうにない。
まぁ、はなからコレは決定打ではなく、この後の攻撃の布石だからいいんだけどさ。
「へんっ! あーーーんだっ。つまりこいつの能力は某海賊漫画の猿真似かっ! 威力も大したことなし、下らないパクリ外国怪人だなっ」
すでに痛みは消えたのか、ブルーはそう言ってせせら笑う。
「うん。海外でも日本の漫画は人気があるからね、きっと影響されたんだね」
ピンクも余裕のある返事を返した。
能力を知ったこと、そしてその威力がイマイチだったことで、二人はかなりほっとしたようだ。
「さてと、能力が分かったらもう問題ネッシングだな。今度はこっちが日本の伝統文化[やられたら倍返し]を教えてやるよ、パクリ外人」
ブルーがビシリッ! と親指を下に向けて、喉をかき切るポーズを見せた。
(ふふっ、騙されてる騙されてる。ここまでは総統閣下の作戦通りだぞ)
偽拳を見せたことで、怪人ナポリタンの能力が、伸びるパンチだと勘違いさせることに成功したようだ。
(総統閣下の仰る通り、勝つためには手の内は少しでも隠さないとね)
ブルーが口走った[ネッシング]とは何だろう? と軽く疑問を感じつつも、総統閣下の知略に感心する。
「「「♪ピュアなハートを~みんなを守る勇気に染めて~……」」」
外野のピュア・シャイニング親衛隊たちが、応援歌と呼ぶにはポップ過ぎる曲を、野太い声で歌い始めた。
この曲は昔のご当地アイドル時代の代表曲で、最近は全く聴くことがなくなったが、子供の頃は海の家などで、よく流れていたので覚えている。
♪ポポン・チンチーン・ポンポン・チーン……
曲に合わせて打楽器も鳴る。
「♪……でも、本当は貴方にだけ奉げたい~ピュア・マイハート~……」
彼らは桃色と水色に光る蛍光ペンライトを振って、激しく、一心不乱にオタ芸を踊り始めた。
「いくぞっ!」
ビュン!
ブルーがピュア・シャイニング親衛隊の野太い歌声を背に、風を切って飛びかかってくる。
「シマッ!」
ビョ~~ン!
その行動を受けて、ブルーの間合いに入らないように、バックステップで3、4メートル程距離を取り、ジャブのように偽拳のパンチを伸ばして牽制する。
「えいっ!」
ヒュン
ワンテンポ遅れてピンクも襲いかかって来た。
ビョッビョヨョ~~ン!
接近戦では僕に分がないとすでに学んだので、こちらにもジャブを放ちつつ逃げ、常に微妙な距離をキープする。
ビョン……タタッ……ビョ~~ン!
そのまま二人を相手に、逃げて距離をとる、消極的な闘い方を通す。
「コイツっ! メンドイ外人だなっ!!」
焦れたブルーが、不用意に距離をつめてくる。
「甘イデーーースっ!!」
ビュヨヨヨヨンンンンッ!!
瞬間、外人キャラを思い出し、カウンターで偽拳と片言を放つ。
ビシッ!
「痛でっ!!」
カウンターが見事に鎖骨の下辺りにヒットした。
ブルーの表情が歪み、動きが鈍る。
「ブルーっ!?」
それを見たピンクがより慎重に……慎重すぎる動きで、有効打のない闘い方を続ける。
ヒュン! ヒュン! ……ピシッ! シュッシュッ! ……タタンッ……じゃりりっ……
互いに消極的な動きに終始し、ジリジリとした攻防が過ぎていく。
「チッ! 全然っ近づけないっ! こいつの戦闘の間合いって微妙でやりづらいなっ!」
そう吐き捨てたブルーが攻撃を止め、て大きく後ろにジャンプして後退した。
そしてすかさずブーツのボタンを押して、軽やかにステップを踏み、足元に小型の魔方陣を何個も発現させた。
長距離から、得意の飛び道具の光球を蹴るつもりなのだろう。
「それはサセマーーーセンっ!」
ビュヨヨヨヨンンンンッ!!
消極的なピンクをパンチで牽制しつつ、一気にブルーとの距離をつめて、中距離まで近づき、偽拳を顔面目がけて伸ばす。
バチンッ!
光球を蹴ろうとしていたブルーが、すんでのところで顔を背け、肩にパンチがヒットする。
「痛ってぇなぁ! 何度も何度もヘボパンチを当てやがってっ、ムカつくっ!!」
ドギュュンンッ!!
ブルーは光球を蹴るのを諦めて、こちらに向かって弾丸のような飛び蹴りを放つ。
「ソンナーーーノ、当たりマセーーンヨォ?」
ひらり……
マントを翻して、ブルーの飛び蹴りを華麗に避ける。
タタンッ
そして当然、バックステップで微妙な中距離を保とうとする。
「逃がすかっ!!」
ビュン!
が、ブルーは着地後、離れまいと遮二無二喰らいついてくる。
「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁぁぁーーーー!!」
ドシュシュ! シュ! シュ! シュ! シュ!
矢鱈滅多にキックとパンチのラッシュを繰り出す。
「ブルー……」
離れた場所で、いつの間にか白弓を出現させて構えているピンクが、ブルーに当たるのを嫌って、光の矢を放てずにいる。
白弓を戻して近づくべきなのか、この場から射かける隙を待つべきなのか、迷っているようだ。
ブルーの迫力ある追尾は、一発もらえばかなりダメージが大きそうだ。
「シマァーーー!!」
ビュヨヨヨヨンンンンッ!!
適切な距離まで離れようと、後ろに大きく跳び退きながら偽拳を伸ばした。
「くどいっ!!」
バチンッ!
無我夢中で追うブルーが、右偽拳のパンチを不用意に手で叩き落とす。
ブルーの足元に偽拳が落ちた。
(来たっ! チャンスだっ!)
ようやく、絶好の位置に偽拳が到達して、内心ほくそ笑む。
第15章 「総統閣下の知略」
終了まで、あと3話




