14.3 エロティック・セブン EROTIC SEVEN8
「いけっ! ナポリタンっ!!」
「シマーーーー!!」
号令一下、興奮状態でピュア・シャイニングに向かって走り出した。
ギュンッ
地面を蹴り、前傾姿勢で風を切る。
体中の細胞が、僕の意思とは無関係に躍動する。
「くっ! ピンクっ、こいつは手強そうだぞっ!」
目前のブルーが腰を落として構え直す。
「うんっ、珍しく名前から能力を推し量ることが出来ないし、気をつけて戦おう、ブルー」
続けてピンクもなんとか戦闘態勢に入った。
広場外側、協力会員やピュア・シャイニング親衛隊たちから「わああぁぁ」と歓声が上がった。
その少し内側の戦闘員たちは「シマーーー!シマーーー!」と一斉に奇声を上げ始める。
シュッ シュッシュッ バシュッ シュッ!
「シマッ! シマッ! シマッ! シマッ! シマッ!」
二人の間合いに入ると、まずはパンチとキックの連打をブルーに浴びせる。
[ド]がつくほどの格闘素人だが、身体能力が尋常ではなく高いので、非常識なスピードとパワーの攻撃になっている。
「チッ!」
ブルーは軽く舌打ちして攻撃を捌き、跳びのく。
バシュッ シュッシュッシュッシュッシュッ バシュッ!
「シマッマッマッマッマッ! シマッ!」
ブルーを追わずに続けてピンクにも連打を放つ。
「くっ!」
ピンクは攻撃を捌きつつ、様子見といった感じで慎重に後退していく。
ビシッ!
「うりゃ!」
ピンクへの攻撃を続けていると、ブルーが横槍に蹴りを放ってきた。
こちらも様子見といった風で、踏み込みが浅く、軽く捌けた。
ビシッ ビッ ビッ
続けてピンクも後退を止めて、ジャブを数発放つ。
二人が阿吽の呼吸で牽制攻撃を仕掛けるので、一転、こちらは防戦に回り、ジリリと後退していく。
軽い攻防を経て、興奮状態が少しガス抜きされた、僕は攻撃を受け流しながら考える。
(さて、どこで触手を使おうかな?)
二人の様子から、おそらく僕が触手を使う情報は、まだ得ていないように感じた。
「シマッ!」
とりあえず、いったん仕切り直そうと、後ろに大きくジャンプして距離を取る。
と、二人は追撃して来なかった。
「ふうぅ~……あーんだっ、こいつ、大したことないなっ。見かけ倒しだ」
ブルーが拍子抜けしたように言う。
「まあさ、カニ男よりは強いけどさぁ、攻撃のキレなら断然、さっきのザコたちの方が上だったな?」
余裕で僕から目を離して、ピンクに話しかける。
「コレ、もう一気に片づけちゃおうぜっ」
ピンクに視線を向けたまま、コレを指差す。
「確かにそこまで強くはないけれど……でもなにか、怪人固有の特殊能力があるはずだから、油断は禁物だよ、ブルー」
ピンクは半分同意しつつも、慎重な態度を崩さない。
「どの道、特殊能力があっても無くても、倒すだけだろっ! なら攻撃あるのみだっ!」
ブルーがダンッ! と力強く地面を蹴って突進して来た。
ドシュン! バシュン! ズバババババババババ……
「おりゃ! てりゃ! うりゃりゃりゃりゃ……」
サッパリと開き直ったブルーは、ガッツリと深く踏み込んでキックとパンチの連打を浴びせかけてくる。
両手両足をフルに使って、なんとか攻撃を捌いていく。
ヒュン
「破っ!」
阿吽の呼吸で、ブルーの攻撃と攻撃の間にピンクが割り込んで来た。
こちらもしっかりと踏み込んだ、相手を倒すための攻撃だった。
ビチッ! ガンッ! ゴスッ!
「がっ!? ぐぅ!」
連携の取れた二人の攻撃に即刻防戦一方になり、有効打ではないが、二人の攻撃が当たり始める。
マントの下のパワースーツが、ヒットの度に幾度も硬化して、鈍い音を立てた。
体に衝撃が伝わる。
(くそっ! 単純な接近戦だとピュア・シャイニングの方に分があるみたいだなっ! このままだとジリ貧だから触手を使っちゃおうっ)
僕は相手の攻撃の間隙を突いて、指触手を使うために両手を前に突き出して開く……
ポンッ
アイモニターに小隊専用回線と表示される。
「ナポリタン、聞こえているわね? 作戦を授けるから、今は触手を使わずにそのまま聞きなさい」
絶妙なタイミングで総統閣下からの指示が入った。
「シマ」
僕は無線に耳を傾けた……
……………………
ピュンッ! ピュンッ! ビシッ! ピュンッ! ドヒュン!
ブルーとピンク、二人のよく締まった細い腕と足が、江の島の夜風を切る。
ブルーの首筋の汗が街灯の明かりに反射して、キラキラと輝く。
それが妙に艶かしく感じて、目を奪われ……
……ている余裕もなくなった。
ヒュンッ! バババッ! バシッ!
ボゴッ! ガゴッ! ドゴンッ!
重い有効打が入り始めて、幾度もスーツが硬化して鈍い音を立てる。
その度に内側まで強い衝撃が伝わり、体に痛みが走るが、治癒能力のお陰で瞬時に再生し、その痛みは消え去る。
(さあ、総統閣下の指示を実行しよう。まずは……)
まずは、指無し型の強化グローブをコッソリと脱ぐ。
ブンッ!
「シマッ!」
脱ぎながらバレないように、あまり効果的ではない蹴りを、ダミーで放つ。
「へっ! 遅いっ!」
鼻で笑ったブルーに避けられて、反撃を食らう。
ドスッ! ガンッ!
「ぐっ……ふっ……」
瞬間的な痛みを堪えながら、ピュア・シャイニングに見えないように五指の触手を短く伸ばして、拳のような形の一束に纏める。
それを先ほど脱いだ指無し型の強化グローブに、しっかりと収める……
と、指触手で作った、偽の拳の完成だ。
完成した偽の拳をチラリと盗み見て、出来栄えを確認する。
(……うん、いいぞっ。指触手の束が、ちゃんと人の拳に見えるぞっ)
ぴょん! ぴょん! ぴょん!
僕はバックステップを軽快に踏んで、一気にピュア・シャイニングから距離を取った。
(さあ、反撃だっ! 覚悟しろっ、ピュア・シャイニング!)
ぐぐぐっと力を溜める。
(このまま分散させずに、触手を伸ばすっ!)
攻撃を続けるために、無防備に距離を詰めようとしてくる二人に目がけて、力を込めて、拳状になった両手の指触手を伸ばした。
ビュヨヨヨヨンンンンッ!!
第14章 「今晩の主役はナポリタン(晩御飯の話じゃないよ)」終了
読書、お疲れ様でした。この章はこれで終了となります。
次は第15章 「総統閣下の知略」(4話)になります。
第1部は20章で完結します。




