13.4 エロティック・セブン EROTIC SEVEN4
「ナポリタン、親衛隊はな、貴様に小娘たちの戦い方や特徴を見せるために、総統閣下が直々に呼び出したのだ」
「感心ばかりしていないで、小娘たちの動きを、しっかりと観察しろ」
呆けたように見入っていたら、カラー1将軍にそう注意された。
「はいっ」
返事をして、気持ちを入れ直し、ピュア・シャイニングを見つめる。
(そうだよっ、あの人間の域を超えた親衛隊員の攻撃を、格闘技素人の動きで全て受け流してしまうピュア・シャイニングこそ、本当に恐ろしいんだっ)
僕はこの後、こんなとんでもない相手と戦うんだ。
「恐らく親衛隊員に対しては、純然な魔法攻撃は出してこないだろうけれども、簡単なの飛び道具くらいはそろそろ使うはずだ。よく見とけよ?」
カラー1将軍がそう予測し、解説してくれた。
「こんにゃろっ!!」
ビュンッ!!
ブルーが武道家風の親衛隊員の連撃の間隙を縫って、蹴りを放つ。
だが、焦って大振りになったそれは予測されていたのか、いとも簡単に避けられてしまう。
「シマッ!!」
その瞬間、今まで様子を伺うように動いていた別の親衛隊員が、横から突然、地を這う超低空のタックルで、ブルーの蹴りを放ったあとの軸足を狙った。
「うわわあぁあぁ!?」
超低空タックルがブルーの足首に届く寸前、ブルーはまるで新体操選手のように体をしなやかに反らした。
クリンッ
ブルーは後ろに手を着くと、ブリッジから素早く倒立して地面から足を抜き、横からの超低空タックルを回避する。
クルンッ クルンッ クルンッ……
ブルーはそのまま倒立からバック転をすると、その勢いのままクルクルと連続でバク転を続けて、あっという間に、間合いの遥か外側まで退避する。
ふわっ……スタッ
最後はバク宙で華麗に一回転してから、柔らかく着地した。
……一瞬遅れて、乱れた青色の髪がふわりと落ち着く。
(おおっ!? 凄い動きだなっ! 敵ながらちょっと美しいぞっ!)
ブルーのまるで猫科の動物のような、しなやかで野生的な動きについ、見惚れてしまう。
「きゃっ!?」
可愛らしい声が聞こえたのでそちらを見ると、ボクサータイプとは別の親衛隊員がピンクの細い手首を、純白のグローブの上から左手でガッチリと掴んでいた。
(おおおっ!? あのピンクを捕えたっ!?)
僕は息を呑む。
左手を掴んだ親衛隊員は、そのまま摺り足で間合いをつめると、右手を肩口に伸ばした。
(この人は柔道家なのかっ!?)
一流の柔道家に掴れたら最後、逃れる術はない。
さすがのピンクも、もう終わりだろう。
スルル……
その瞬間、なんとピンクは、純白のグローブをスルリと手から抜き去って、手首の縛めを解いてしまった。
シュン……
虚しく親衛隊員の手に残った純白のグローブは、光の粒子となって霧散する。
霧散した光の粒子はピンクの手首に再集結して、再構築。
忽ち新たな純白のグローブになった。
タンッ
ピンクは地面を一蹴してそのまま後方に数メートル近くジャンプして飛び退く。
タンッ タンッ
ピンクは連続してジャンプを繰り返し、ブルーの傍らにフワリと着地した。
(こっちはまるで、掴もうとする人の手からすり抜けて舞う、桜の花弁だなぁ……)
掴みどころのないピンクの行動にも、感心する。
「おいピンクっ! こいつらモブキャラのクセにやたらと強いぞっ!?」
「うん、手強いねっ、ブルー。多分この人たち、普通の戦闘員さんじゃないよっ」
「接近するとヤバイから、メンドイけどアレ使うか?」
「うんっ。そうしよう」
二人はそう話し合うと、ピンクは腰のベルトに着いていた掌ほどのハート型のワッペン? を掴み、外して前方に突き出した。
ピカッ!!
ハート型のワッペンが強い光を放つと、瞬く間に、白磁のような滑らかな輝きを放つ、白弓に変化した。
右手には煌めく魔方陣が現れて、明らかに非物質的な光の粒子で出来た矢が、数本形成された。
ピンクは背筋をピンっと伸ばして、淀みのない動作で、矢を射る構えをとる。
「大矢数っ!」
ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!……
白弓を手にしたピンクの掛け声と共に、何本もの光の矢が親衛隊員たちに向けて一斉に放たれる。
弓道の一手のような正射必中ではなく、名前の通り機先を制すが如くの弾幕で、近づこうとしていた親衛隊員たちの足を止めた。
「ポチッ! となっ」
一方、傍らでは、ブルーがしゃがみ込みブーツの側面についているサッカーボールを模した小さなボタンを押した。
そして立ち上がると、その場で軽やかにステップを踏んだ。
すると足元にも煌めく魔方陣がいくつも現れて、そこに非物質的な光のボールが出現した。
「シューートッ!!」
ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!……
ブルーが光のボールを矢継ぎ早に蹴る。
ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!
無数の光のボールが高速で飛来し、親衛隊員たちを襲った。
ブルーは一見、無造作に蹴っているように見えるが、インサイド、インステップ、インフロント、アウトフロント、トウキックと多種多彩な蹴り方をして球筋を変え、上手に親衛隊員達を翻弄していく。
ピュア・シャイニングの二人がかりの遠距離攻撃に、親衛隊員たちは回避に専念せざるを得なくなり、全く近づくことが出来なくなってしまった。
彼らの得意であり、唯一の間合いである近接格闘戦が出来なくなった親衛隊員たちは、成す術なく、劣勢に立たされる。
第13章 「魔法少女ピュア・シャイニング参上!」
終了まで、あと1話




