13.2 エロティック・セブン EROTIC SEVEN2
ちょっとだけ登場人物紹介 シャイニング・レッド
一年ほど前に引退した、元リーダー。
[踵落としのレッド]の異名を持つ、武闘派。
踵落としの他に、ローリングソバットや首刈りキックなどの足技全般が得意。
気さくで、サッパリした性格なので、怪人が謝ると、意外と許してくれるらしい。
BIPの撮影小隊がパチンッと音を立て、照明を焚く。
逆光の中に、ケッタイなポーズを取った二人の女性のシルエットが浮かび上がった。
と、同時に、カメラを持った撮影小隊の戦闘員と、二人の[ピュア・シャイニング親衛隊]と書かれた鉢巻をした、オタクっぽいお兄さんが、照明の中心の外側まで走り寄った。
アニメ風にデフォルメされた、ピンクとブルーが描かれているTシャツを着たピュア・シャイニング親衛隊は、なぜか小鼓とトライアングルを手にしている。
満を持して、シャイニング・ピンクとシャイニング・ブルーの名告が始まった。
ポポンッ!
「往昔の 世の五頭龍が 折も越えし 恋し越えを やむにやまれずのり越えて 横に見やるは龍口やま」
「むかーしむかしに五頭龍が、越え越え腰越……乗り越えて、横にあるよね龍口寺」
シルエット越しに、ピンクとブルーが声を合わせ? て名告文句を吐く。
ポポポンッ!
「洲鼻を通る一陣の 疾風なりては華舞い散らし 華の雫で二輪挿し み弁天 はしきやしよと 辿り着いたる江の島で 仰ぎ見るのは 三竿浮かぶ 明けの黒月」
「すばな通りを突っ走り……花屋で花を蹴っ飛ばし? ……みそ弁天橋から、月まで蹴飛ばせホトトギス」
(なぜホトトギスを蹴る?)
ピンクとブルーの名告文句に微妙? なズレを感じる。
ポポポンッ!
「浮かぶ有明追いやりて……輝き出るは相模の灘の……闇を祓いし……天つをとめ……」
「浮かぶ……にゃむにゃむ・むにゃ……灘っ……にゃむにゃむにゃ……天つ乙女……」
ポポンッ! ポンッ! ポンッ!
「…………ねえブルー、もしかしてまた、名告文句を忘れちゃったの?」
「おうっ、サッパリな。てか、最初から覚えてない」
シルエットの中でいいねっ!と親指を立てた。
「これ古臭いし、意味が分からないし、やめようぜっ。で、メンドイから、とりあえず怪人殴っちゃおうっ!」
チーーン……
「それは駄目だよっ、これは初代のピュア・シャイニングが使った名告文句だって、おじいちゃんも言ってたし……」
「でもさぁ、レッドがリーダーだった頃なんて、コレを完全に端折ってたじゃん? レッドなんて怪人を見つけたら即、真正面から問答無用で[踵落とし]を、脳天にズドンってやってたじゃんか」
「まあ、確かに……」
「あたしら二人になってからも、何だかんだでやらないことが多いしさっ。名告文句なんて、いらないってっ」
「それはブルーが、いつも忘れるから……」
「じゃあさっ、この前考えたアッチの名告文句を使おうぜっ。アレならあたし覚えてるからさっ。なっ?」
「うん……」
「おーーい、じっちゃんもそれで良いよなっ? ……えっ? ……あぁ、はいはい、[じっちゃん]じゃなくて[長官]ね。あいよ、通信終わり。……たく、メンドイじっちゃんだなぁ……」
「じゃあ、ピンク。打ち合わせしようぜ。まずは……」
逆光の中に、ケッタイな会話を続ける二人の女性のシルエットが、浮かび続ける……
「………………カラー1将軍。今、襲いかかっちゃ駄目なんですか?」
堪らず、質問する。
「腹立たしいが小娘たちの名告文句が終わるまでは駄目だ。ここで待つのが、悪の秘密結社の業界団体の決まり事だしな」
「なにより、この部分は動画配信の見せ場になるからな。……小娘たちの名告文句が有るか無いかで、再生回数に大きく関わるらしい」
将軍は、鞭の柄をギリギリと握り締めながら、悔しそうに吐露される。
「働くのって、大変なんですね……」
じっとしていると初夏なのに、けっこう体が冷えてくる。
ぶっちゃけ、早くももう、怪人になったことを後悔した。
「あと、名告文句に合わせる楽器が、小鼓とトライアングルって、どうなんですか?」
どんなセンスのチョイスだ?
「あれな。以前はトランペットと太鼓だったんだが、段々、野球の応援みたいになってきてな」
カラー1将軍が、意外とよく、雑談に応じてくれる。
「最終的には小娘たちのファンが[かっ飛ばせー、ピュア・シャイニング]って合いの手を入れ始めたから、さすがに[コレは違うだろう]ってことで止めて、今の楽器に変えたみたいだな」
「そうですか。まぁ、かっ飛ばされる怪人からしたら、その応援は、たまったもんじゃないですしね。良かったです……」
僕は楽器のチョイスに納得した。
「よしっ! じゃあいくぞっ!」
シルエットの中から声がかかった。
カラー1将軍と雑談していると、やっと、ピュア・シャイニングの準備が整ったようだ……
仕切り直して、シャイニング・ピンクとシャイニング・ブルーの名告文句が始まる。
「「……せーーーのっ」」
ポポンッ!
「「地域の平和を守るためっ!」」
ポポポンッ!
「「観光資源を守るためっ!」」
ポポンッ! ポンッ! ポンッ!
「「漁業資源を守るためっ!」」
ポポンッ!
「「悪はすり潰してシラスの餌にっ!」」
パチンッと音を立て、逆光の照明が消える。
チーーンッ!
「「青い相模湾に昇る正義の太陽、ピュア・シャイニング只今参上っ!」」
ケッタイなキメポーズをとった、魔法少女ピュア・シャイニングの姿が、露わになった。
「ええいぃぃ、現れおったなっ! ピュア・シャイニングよっ!!」
カラー1将軍が、さも驚いたふうに声を張り上げる。
(この人も頑張るよなぁ……)
なんだかぐだぐだな三者を、僕は脱力しながら眺めていた……
第13章 「魔法少女ピュア・シャイニング参上!」
終了まで、あと3話
【名告文句の補足】
古文で、たぶんこんな感じの意味です。
み弁天はしきやし→美しい弁天様、愛おしい
[三竿]は、読んで字の如く、三つの竿を縦に繋いだくらいに[高い]って、意味らしいッス。
たいして高くないじゃんね。
それから腰越は、古くは[子死越え]と表記されたそうです。
[恋し越え]はオリジナルの掛詞です。
掛詞とは、ぶっちゃければ駄洒落ッスね。
以上。




