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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜【第2部スタート】  作者: 綿野草空希
12 出撃!! マルチロールファイター!!

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12.2 千の扉2 〜夏音side〜

 今日の学食で、芹園とイチャイチャしている由比里を見ていて、なんか無性に腹が立った。


 ムカついて外に飛び出すと、あいつが後を追ってきた。


 ……その時、由比里が手を挙げて走り寄ってくる姿を見た時……あたしは不覚にも、ドキリとしてしまったのだ……


 「……あんなスカした笑顔なんかにっ!? いや、アレは間違いだっ! そうに決まってる……」


 ボスッ! ボスッ! ボスッ! と、クマぽっちゃんの丸いお腹を連打する。


 「……由比里は馬鹿だ。怪しいダイエットまでして、イケメンになって女にモテようだなんて……本当に馬鹿だ」

 モテるようになって、男がその先に考えることは……その先なんて、馬鹿オヤジを見てよく分かっている。


 簡単に言えば、色々な女とエッチなことがしたい、それだけなのだ。


 あいつ等イケメンの目的なんて、しょせんそれだけなのだ。


 お猿なのだ。


 おモンキーなのだ。


 「あんだそりゃ!? あんで愛してる一人じゃ、満足出来ないんだっ!?」

 由比里がそんなお猿だったなんて……ガッカリだ。


 「確かにカッコ良くなったさ。ああ、イケメンだねっ。でもソレがどうしたよ?」

 由比里は元々、目がクッキリしていて可愛い顔立ちをしているのは知っていたし、痩せたら確かに、ああいうイケメンになるだろうことも、想像がついた。


 でも、由比里はあのままで良かったんだ。


 プニプニしていて、ポチャッとした顔は愛嬌があって、優しくて思いやりがあって、ドジですぐに膝を痛くして、変な四字熟語を使って、いつも平和そうにナポリタンを頬張ほおばっている……


 そんな由比里のままが、良かったのに……


 目をつむって、ムギュっとクマぽっちゃんを抱き締めると、まぶたの裏に、太った由比里の笑顔と、イケメンになった由比里の笑顔が同時に浮かび、消えた……


 ……昼休み、手を挙げて走り寄ってくる由比里に不覚にも胸が高まってしまったあたしは、意味もなく、逃げるように走り出してしまった……


 あの後、走ったら気持ちが落ち着いて、屋上で涼んだら、今度は江の島にアイス最中を食べに行こうと誘われて……


 それでまたドキリとしてしまって、なんかムキになって冷たく言ったら、由比里は桜花狙いみたいなことを言い出して……それで今度はムカッとして……


 「……おい。あにしてるんだよ? あたしは……」

 由比里だって、そこまで妙な下心があったわけではなく、本当に友達として、あたしと桜花を誘ったのかもしれないのに……


 (これじゃあまるで、由比里のことを意識しているみたいじゃないのか? 騒いでいたクラスの女子や、芹園を馬鹿に出来ないぞ)


 「……ぐぬぬぬぬぬ……あたしは顔で男を選んだりしないぞっ。由比里はただのお友達っ。それ以上でもそれ以下でもないっ! はいっ、お終いっ!」


 なんだか由比里のことばかり考えてしまったのは、きっと異常なほどの激変ぶりに、強い衝撃を受けて、変に頭に残ってしまっただけだろう。


 (大丈夫。あたしはイケメンを好きにならないし、明日になれば由比里はちゃんと、ただの友達に思えているはずだ)

 しつこいくらいに、何度も自身に言い聞かせてから、ポイっとクマぽっちゃんを投げ捨てる。


 「よしっ! ……さってと、シャワーでも浴びるかなぁ~……と、その前にお弁当でも買いに行くかぁ」


ブブブブブブブブブ……

 その時、制服の中のスマホが震えた。


 「あんだぁ?」

 転がりながら、メッセを確認する。


 内容は……


 「はあぁぁぁ~~~、夕飯まだだってのに、面倒臭いなあぁぁぁ~~~~……」

 あたしは盛大に溜息をついた。


 「…………でもまあ、怪人でも思いっ切りぶん殴って、一つスッキリするのも悪くないかっ」

 ちょっと正義の味方としては不純な動機だなぁと自嘲ジチョーしつつも、ベッドから跳ね起きる。


 「よしっ! 行きますかっ!」

 ピョンと部屋を出て、階段を駆け下りる。


 「ちょっと桜花の家で、ご飯食べてくるっ!」

 玄関で靴を履きながら、居間に向かって叫ぶ。


 そーいえば桜花は今日、母親の命日で[お墓参りに行く]と、急いで帰って行った。

 こんな日に出撃とか、大丈夫なんだろうか?


 靴を履き終えても、母さんからの返事は特にない。


 あたしは気にせず、家を飛び出す。


 もう家の前の路地は暗く、辺りに人影はなかった。


 あたしは制服のまま路地を走りながらスマホを取り出して、アプリの中から[ドラゴニック・アクセレレーター]と表示されたアイコンを選んでタップした。


 「Starting ready for Dragonic Engine……」

 スマホから機械音声が流れる。

 「……Waiting……」


 「……All right.Are you ready?」


 「OK!! アクセル・オンッ!!」

 あたしはスマホに向かって、そう答えた。


シュウゥゥイイイィィィンンンンンンンーーーーー……

 スマホから奇妙な起動音が鳴る。


 近所の本行寺、本龍寺、少し離れた龍口寺の裏山や森、近くを流れる神戸川、アスファルトの下を走る龍脈、さらには近所の植木まで、腰越の其処彼処そこかしこから大量の光の粒子が発生した。


 光の粒子が、路地を駆け抜けるあたしの周りに集まる。


シュルルルルルルルルルゥゥゥーーーー……

 集まった光の粒子は、金色に輝く二重螺旋の帯となって体にまとわりつき、やがて竜巻のように高速で回転を始めた。


ギュンッ

 あたしはそのまま、疾走する一筋の光弾になって、江ノ電の走る表通りへ飛び出していった……

第12章 「出撃!! マルチロールファイター!!」終了


 読書、お疲れ様でした。この章はこれで終了となります。

 次は第13章 「魔法少女ピュア・シャイニング参上!」(5話)になります。


 いよいよ戦闘になります。


 乞うご期待!! 



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