7.2 怪人君の空2
ちょっとだけ、場所紹介
江ノ電江ノ島駅と小田急片瀬江ノ島駅の位置関係
名前の似たこの二つの駅は、意外と離れた立派です。
乗換えには[すばな通り]を徒歩移動で、3〜4分はかかります。
あれからDr.ヘッドランドより返信があって、BIPに着いたら、いったん戦闘員服に着替えてから、個人研究室に来いとのことだった。
外に出ると、日差しは昼より大分柔らかくなっていた。
椎名君、一宮君は一度家に帰るとのことで、坂の下の踏切で二人と別れる。
二人の記憶が戻ったら怪人化のことを説明したいので、一緒にBIPに行く約束をした。
いつものように、小田急線片瀬江ノ島駅前での待ち合わせだ。
一人、駅に向かい歩き始めると、知らない女生徒どころか、台湾人観光客の女性まで振り返り、ジッと僕の顔を見て、頬を染めたりする。
(あぁ、イケメンってこんな世界なんだなぁ……)
もちろん、数人に一人のペースだが、歩いてるだけで注目されるのは、なんとも不思議な気持ちだった。
(芸能人にでもなった気分だけど、こんなことに浮かれてもしょうがない)
振り向いて欲しいのはあの人、青浜さんだけだ。
パッとスマホで時計を確認すると、まだ時間に余裕がある。
(腹が減っては軍は出来ぬ、だ。フィリッポさんのところに寄って食事をして行こう)
ナポリタンで一発、気合を入れるぞっ!
江ノ電小動高校前駅の改札を抜けると、ちょうど藤沢行きの電車が着いたので、早足で乗り込む。
踏切目当てで降りる乗客が多いので、江ノ電の車内は、いくつか空席があった。
まだ体温の残る空いた席に座る。
ストン……
ほぼ同時に、隣に女生徒が座った。
……何気に顔を見ると、その女生徒は天紫野会長だった。
「あっ、天紫野会長。この前はどうもです」
突然現れたゲーム[オタク候補者]に、嬉しくなって、すかさず声をかけて頭を下げた。
「はい? ……えっ!? お父様!?」
天紫野会長はこちらを向くなり驚き、素っ頓狂な声を上げた。
「ほへ? お父様?」
天紫野会長のお父さんが、この電車に乗っているのかな?
辺りをキョロキョロと見渡す。
「あ……いいえ、何でもないわ……」
天紫野会長は少し恥ずかしそうに顔を赤らめて呟いた。
「ごめんなさい、気にしないで。それで貴方は確か……」
僕の顔をジッと見つめる。
(あ、痩せたし顔が変わったから、分からないよね)
「ええと、痩せて分かりづらいかもしれませんけど、僕は由比……」
「ええ、由比里是陽でしょ? ちゃんと名前は覚えているわ」
「えっ!?」
驚いたことに、天紫野会長は僕の正体を一発で言い当てた。
こんな人は初めてだ。
龍巳さんも早かったけれど、天紫野会長はそれ以上で、しかもノーヒントだというのに。
「よく分かりましたねっ!?」
「確かにずいぶんと痩せたようだけど分かるわよ。目が同じだもの」
さも当然といった様子で答える。
「それにしても貴方、その急激な痩せようはどうかしたの? なにか病気にでも……」
少し眉を顰めて聞いてくる。
「あっいや、ただのダイエットです。ご心配なく」
手をぶんぶんと振って否定する。
「ちょっと流行ってるダイエット法を試したら、こうなりまして……大変だったけど、体調に問題はないです」
「そう、良かったわ。私、ダイエットをしたことがないから分からなかったけれど、そこまで急激に痩せられるものなのね。知らなかったわ」
天紫野会長はなるほど、といった感じでウンウンと頷いた。
(お嬢様のせいか、この辺はちょっと浮世離れしているよね……まあ、納得してくれたのは、ありがたいけど……)
鋭いのか鈍いのか、よく分からないお人だ。
電車が海から離れて腰越駅に近づく……
車窓を過ぎ去る、手の届きそうな民家の裏窓に軽く目をやる……
「……それで……天紫野会長は、今日も江ノ島でお仕事ですか?」
「ええっ、そうなのっ」
何気ない話を振られた天紫野会長は、パッと明るい表情で声を弾ませた。
「実は、任されている事業が少し難しい時期に入っていたの。だけど、今朝、とても良いニュースが入ってね、挽回の目が出て来たのよ」
「それでこの後、現場を見て周ってから、少し陣頭指揮を取る予定になっているのよ。楽しみだわ」
「ほう、それは良かったですね」
よく分からないが、天紫野会長がとても嬉しそうなので、つられて僕も笑顔になる。
電車は腰越駅に止まった。
「ありがとう。それで貴方は、今日はどちらに?」
「あっ、僕は前回と同じ友達とバイトに行くために、小田急線の片瀬江ノ島駅で待ち合わせです。なので僕も江ノ電の江ノ島駅で降ります」
「そう。それなら、途中まで一緒に参りましょう」
「ええ、ですね。そうしましょう……」
(前回もそうだけど、こういうのを誘うのに躊躇いがない人なんだなぁ……)
おそらく、本人に下心とか、二心がまったくないから平気なのだろう。
腰越駅から走り出した江ノ電が、路面電車区間に入る。
(あ……青浜さんの家は確かこの辺だって、前に言ってたなぁ……)
つい、どれかな? と目で探してしまう。
が、青浜さんが以前、[通り沿いではない]と言っていたので、車窓からは見えないだろう。
「……ところでバイトというのは……どういったものをされているの?」
天紫野会長が、なぜか恐る恐るといった感じで聞いてきた。
「えと、バイトは江ノ島のお土産べ……」
と、言いかけて止まる。
(あっ! BIPダミー会社の、有限会社お土産べんてんてんの名は出さない方が良いかな?)
天紫野会長の実家は、江ノ島でいくつもの事業に携わっている実業家だ。
そして、本人も仕事をしているので江ノ島の会社関係にはかなり詳しい……いや、恐らくトップクラスの江ノ島情報通だろう。
(もしかしたら、有限会社お土産べんてんてんは怪しい会社だ、なんて情報も持っているかもしれないな)
「江ノ島お土産……の、亀のぬいぐるみを作ってます。片瀬に小さな工場があってそこで……」
念のため、適当なバイト先をでっち上げる。
「あら、うちの外注先かしら?」
天紫野会長が首を傾げた。
「外注? ……あ、ホテルのお土産ですね。えぇと、ホテルはどこだったかなぁ?」
適当なでっち上げなので、曖昧に答える。
「あ、いえ……ええと、それじゃあ、新江ノ島水族館とかに置いてるやつかしら? 凄く可愛いわよね、あのカメさん」
天紫野会長はなぜか一瞬言い淀んでから、笑顔になって聞いて来た。
「あー、そんな感じのやつを作ってます。アレって人気ありますからねぇ」
(天紫野会長もそういうの好きなんだなぁ。お嬢様でもこの辺は普通だね。なんか安心した)
つい微笑ましく見てしまう。
「……それに比べ……ウチの……ンボルマークのカメ……人気がない……(ボソボソ)……あんなに可愛い……どうしてかしら? ……」
僕の視線をよそに、天紫野会長は仕事の話しだろうか? よく聞こえないが、なにかブツブツと呟いている。
電車が江ノ島電鉄江ノ島駅に到着した。
(あっ、しまった……学校に自転車置いて来ちゃった……)
二人で江ノ電の改札を抜けた時ふと、今朝は自転車で来たことを思い出した。
(自転車で通学するのは稀だからすっかり忘れちゃったよ。でもまあ、明日の下校時に乗って帰ればいいか……)
一人、脳内で解決した。
小説家になろうのアクセス解析(KASASAGI)について、色々と調べてみると、どうもこの小説のPVは全て検索クローラーが動いただけで、読者は0…という、ショックな結論に、行き着いてしまいました。
これ[なろうあるある]だそうですね。
なので、心機一転、思い切ってタイトルを変えてみました!
もしも、もしも、今まで読んでいた方がいたら、急なタイトル変更、ごめんなさいっ。
すみませんっ。
元のタイトルには、私自身、思い入れがあったのですが、これも、誰かに読んでもらうためには必要なことだと、決断しました。
これからまた、新たな気持ちで執筆に励みますので、どうか、応援よろしくお願いします。




