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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜  作者: 綿野草空希


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7.4 怪人君の空4

ちょっとだけ、登場人物紹介

本所撫子ほんじょなでしこ


腰越にある、家族経営のお好み焼き屋[本所]の一人娘。

祖父、祖母、母との四人暮らしで、母子家庭。

父親は不明?

現在、大学一年生で龍巳桜花、青浜夏音とは仲良し。

踵落としの他に、ローリングソバットや首刈りキックなどの足技が得意。

 「はーい、毎度ありー。また来てねー」

 気さくにシュタッ! と手を振る本所さんに見送られて[Orizzonte]を出る。


 絶品ナポリタンを食べて気力十分になった僕は、駅前で友人二人を待った。


 しばらくすると、友人二人がやって来たのだが……


 「……椎名君。そのブカブカのランニングシャツはなに? 戦前の夏休み少年を意識してる?」

 やたらサイズが大きい、白のランニングシャツを着た椎名君に尋ねる。


 今の椎名君の服装からは、それしか連想出来なかったのだ。


 「そんなもの意識するかっ。これはマッチョの必須アイテム[タンクトップ]だっ! モスト・マスキュラー!」

 虫取り網が似合いそうな、ブカブカランニングの中肉中背が、反論&ポージングをした。


 小田急片瀬江ノ島駅の、竜宮城を模した駅舎の前で、ボディビルダーのようなポージングをとる、昔の夏休み少年風の中肉中背の姿は、とてもシュールだった。


 「そうね。それマッチョだったら、似合ってたかもね」

 ただの中肉中背には、ビタイチ似合わないけど。


 「ま、まあ、由比里殿。熱が冷めるまで、今しばらくの辛抱で御座るよ……」

 いたって地味な服装の一宮君が、呆れ顔で僕にささやいた。


 「う、うん、そうだね……じゃあ、椎名君が通行の迷惑だから、もう行こうか?」

 気を取り直して、友人たちをうながし、江の島に向けて歩き出す。


 国道134号線まで出て、片瀬橋を渡り、右に曲がって江の島を目指す。


 長い長い[江ノ島弁天橋]を渡る道中で、天紫野会長にゲームを貸す約束をしたことなどを、二人に報告する。


 が、ここでもすれ違う女の子が、ジッとこちらを見てくる。


 さすがに僕はこの視線には慣れてきたが、友人二人は納得いかない様子で、顔をしかめた。


 (いや、僕だってブカブカタンクトップとなんかは一緒に歩きたくないよ)

 顔をしかめたいのは、こっちの方です。


パタタタタタッ……カシャ!


 江ノ島弁天橋の上で突然、さっきすれ違った若い女の子二人組みが戻って来て、僕にスマホを向けて写真を撮った。


 「「きゃあぁぁぁーーっ!」」

 女の子二人組は楽しそうに、黄色い悲鳴を上げて走り去る。


 「「「………………………………」」」

 彼女らの行動に呆気に取られ、どうリアクションすれば良いのか分からない僕らは、ポツネンとたたずむ。


 橋の上で、三人の間に、酷く気まずい空気が流れた。


 「くそっ! なんなんだっ、これはっ! いちっ! にっ! さんっ! しっ!……」


 その場でタンクトップが、怒りのスクワットを開始する。


 僕はすぐ[華麗に他人のふりをして置いて行こうっ]と、親指を立てて、一宮君に提案した。


 だが、優しい一宮君は、なんとかタンクトップをなだめ、再び、三人で歩き出した。


 江の島から日帰り客がどんどんと帰って、人気ひとけが減っていく。


 これが海開きの後だと、夜でも若者がたむろして、磯焼きで有名な[貝作]前のオープンスペースでは、大勢の人が酒盛りを楽しむ姿が見られる。


 が、今はその時期の賑わいからはほど遠く、江の島は少し寂し気だった。


 帰路に向かう観光客の間をって、三人で[青銅の鳥居]を潜る……と、友人二人がピタリと立ち止まり、ほうけた。


 そして、棒立ちのまま、時々ピクンッ! ビクンッ! と気持ち悪く震える。


 (ああ、怪電波を受けてる最中さいちゅうって、こんな様子なんだ……)

 もう、鳥居の怪電波の影響を受けない僕は、ちょっと離れて、冷静に二人を観察する。


 「「……………………シマァーーー!!」」 

 数秒後、二人が高らかに奇声を上げて、BIPの瓢箪ひょうたんポーズを取った。


 (うわぁ、はたから見ると、コレって恥ずかしいなぁ……)


 実にオタクらしい、灰黒系の服を着た低身長の一宮君と、似合わないタンクトップを着た中肉中背の椎名君が、瓢箪ひょうたんポーズで奇声を上げる姿は、奇怪そのものだった。


 (情報漏えいを防ぐ目的の記憶消去だけど、これじゃあ、逆に目立って仕方ない気がするよ……)

 BIPの[青銅の鳥居]の運用法に、軽い疑問を持つ。


 「「シマァーーー!! シマァーーー!! シマァーーー……??? ……」」

 何度かシャウトした友人二人が、僕を見て、同時に首をかしげた

 

 「「…………??? …………あああっ!? もしかしてっ!!」」

 突然二人が叫び、つかみかかるように、僕に駆け寄る。


 「ゆゆゆゆ由比里殿っ!! その変わりようはっ、なにか組織と関係があるので御座るかっ!?」

 「同志よっ、同志よっ、説明を求むっ!!」

 組織の記憶が戻った二人が、僕の変化とBIPの関連性に気がついたようで、血相を変えて取りすがる。


 「ああ、うん。そうなんだ。ほら、一週間前の月曜日に、僕だけ呼ばれたでしょ? アレで……」

 僕は周りの観光客に聞き取られないように、声を潜めて、二人に説明を始めた……


……………………


 「……全く……道理でおかしいと思ったのだ……」

 「で、御座るなぁ……確かに超科学でなければ、有り得ない変化で御座った……」

 弁財天仲見世通りを歩きながら、友人二人が苦い顔で言った。


 僕は二人に


 [細胞注射による怪人化を受けて一週間も寝込んだこと]

 [今朝、ようやく変化に気がついて、Dr.に診てもらったこと]

 [怪人化に成功して、触手能力と治癒能力を得たこと]

 [身体能力が上がって痩せたこと]

 [怪人なので、鳥居で記憶を失わないこと]


 これらを丁寧に説明した。


 すると、二人は納得し、だいぶ落ち着きを取り戻したように見えた。


 もちろん、機密に関わる部分は慎重に言葉を選び、Dr.ヘッドランドの正体が神城岬先生であることなどは、きちんと隠した。


 (あ……いいな……)

 僕は話しながら、ふと視界に入った光景に気を取られた。


 弁財天仲見世通りでは、今日も[紀の國屋本店]の前で、アイス最中を食べているカップルがいたのだ。


 しかもお互いのアイスをシェアしている。


 (羨ましいなぁ……僕も青浜さんと二人であんなことがしたかったなぁ……)

 昼の撃沈を思い出した。


 そして、友人二人が、その撃沈を知っていることも、思い出した。


 「……昼の屋上で、紀の國屋本店のアイス最中に五人で行こうと誘わなかったのは、一宮君と椎名君が記憶を失ってたからなんだよ」

 さらに続ける。


 「ほら、鳥居の下で瓢箪ポーズを取るのを、青浜さんたちに見られたら良くないでしょ?」

 本当はビタイチ、そんなことは考えていなかったが、丁度良いと思い、言い訳に利用する。


 「むむっ! そうで御座ったか……あれは由比里殿の気遣いだったとは……拙者共はなんと愚かな勘違いを……」

 「ああ、早合点だったな……すまないことをした」

 二人が頭を下げた。


にや……

 (チョロい……)


 今の言い訳で、今後、彼らの妨害工作が軽くなるなら、安いものだ。

 思わず口角が吊り上る。


 三人で、有限会社お土産べんてんてんのドアからアジト内に入る。


 「まあ、なら江の島以外に誘えばいいんじゃないか? と思った俺の正論はさて置き、同志には是非とも、教えてもらいたいことがあるっ!」


 「拙者もっ! 屋上で青浜殿と二人きりの機会まで作っておいてよくも抜け抜けとっ! と、心の中で思っている拙者も、一つ聞きたいことがあるで御座るっ!」

 思いのほか、チョロくなかった友人たちだった。


 「…………あにさ」

 僕は、青浜さん風に聞き返す。


 「その顔も注射の影響かっ!?」

 「怪人化で男前になるで御座るかっ!?」

 アジト内に入った安心感からか、二人はかなり強い口調で聞いてきた。


 「えぇと……細胞提供者が美形だから、怪人化注射の影響でイケメンになった可能性は高いってDr.ヘッ……」


 「くっそぉおおぉぉぉ!!! やっぱりそうかっ!! 注射かっ! 注射でイケメンになれるんだなっ!? 此畜生こんちくしょうっ!!」

 「いいい一本幾らで御座るかっ!? イケメン注射は幾ら払えば、打ってもらえるで御座候らえば候っ!?」

 二人が僕に掴みかかって、質問してる。


 「ちょっ、落ち着いてっ、二人ともっ! あれはイケメンになるための注射じゃなくてね……」


 「うっさいっ! この似非えせイケメンめっ! 教えろっ! どうすればその注射を打てるのか教えろっ!」

 「ええいぃぃ! この紛い物めっ! 白状せんと成敗仕せいばいつかまつるぞっ!」

 完全にイッちゃった目をした二人が、僕の首をギリギリと絞めながら、問いつめてくる。


 「ぐえぇぇ……だから誰でも打てる物じゃないんだってばさぁ……」


シルシルシルシルシルシル……


 仕方がないので二人に、Dr.ヘッドランドから聞いた零型BIP細胞開発の経緯を、詳しく説明した。


 ……触手を伸ばして、ね。

 評価ありがとうございますっ!

初評価っ、しかも10点っ!

入れて下さった読者様、本当にありがとうっ!


 もう、嬉し過ぎます。

ずっと、誰もいない場所で、ひたすら壁打ちしている気分だったので、誰か人が読んでくれてると知った瞬間は、最高に嬉しかったです。


 ありがとうっ。


 ラストのハッピーエンドまでは相当長く続きますが、この評価を励みに、コツコツと最後まで投稿を完投したいと思います。

 頑張りますので、これからも、よろしくお願いします。


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