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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜  作者: 綿野草空希


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6.2 BRAND NEW DAY GIRL2

ちょっとだけ、登場人物紹介

芹園都子 BRAND NEW DAYな子 無類の焼きうどん好き

一宮君 低身長な友人 無類のカレー好き

 四限目の授業が終わり、昼休みとなる。


 「いざ、学食へ参ろうかっ」


 「「応う」」


 いつもの一宮君のかけ声に反応して、スッと立ち上がる。


 昼休みの購買・学食が戦場なのは、ウチの学校も例外ではない。


 ここより、時との勝負である。


 クラス女子の、僕に対する[祭り]も、椎名君の奇行も、いったんお休みだ。


 余裕のある弁当組を残し、僕らを含めた購入組は、慌しく教室を出る。


 三人、早足で、学食へ向かう。


 ちなみに、憧れの二人の、昼の行動は異なる。


 自作の弁当を持って来る龍巳さんは、いつも通り、同じ弁当組の女子たちと、のんびり机を並べている。


 対して、購入組の青浜さんは、いつも通り、授業終了のチャイムの音と共に、一番で教室を飛び出していた。


 青浜さんのその後の行動は、購買でパンを買って教室に戻り、龍巳さんたちと一緒に食事をすることが多い。


 だが、時々、他の購入組の女子と、学食で昼食をとる姿も見かける。


 もちろん、今日の青浜さんがどちらの行動を取るかなど、僕の知るよしもない。


 「いやはや、由比里殿はモテモテで、羨ましい限りで御座るなぁ」


 廊下を早足で歩いていると、ふいに一宮君が、冷やかすように話し出した。


 [羨ましい]と言った彼の顔には、[全く羨ましくない]と、いった様子の、余裕の笑顔を浮かんでいた。


 「全くだな。十把一絡じっぱひとからげの女子たちとはいえ、ハーレムだからな。イケメンとは良いものだな。俺も一度は経験してみたいものだ」


 椎名君は、棘がある言葉を吐きながらも、その顔には余裕がある。


 結局、二人が休み時間に青浜さん、龍巳さんと話したのは、最初の一限目終わりだけだった。


 それでも、他の女子に囲まれて、それに参加出来なかった僕より、遥かにラッキーと思っている様子に見える。


 加えて、青浜さん、龍巳さんが、他の女子のように、僕を特別チヤホヤしないことも、彼らの余裕に繋がっているのだろう。


 僕は、なにも言い返せずに、黙って早足で歩く。


 「しかし、まさか由比里殿は痩せるとこんな風に変わるものとは……見ていると、拙者共とは住む世界が違う住人に思えてくるで御座るよ」


 「うむ。……もしかして同志由比里は、これを機に、ギャルゲーオタクを辞めて、パンピーになる腹づもりなんじゃないのか?」


 「ちょちょちょちょっ、止めてよっ! そんなつもりで痩せたわけじゃないってっ。僕はギャルゲーオタを辞めないよっ」


 友人たちの、聞き捨てならない疑念ぎねんを、即座そくざに否定する。


 「こんな顔になったのは、ただの偶然なんだってばっ。僕のギャルゲー愛は変わらないよっ」


 「うむ。なら良いがな」


 「で、御座るな」


 僕の必死の否定も、二人は淡白に応えただけだった。


 「むうぅ……」


 二人にBIPの記憶さえあれば、こんな疑念ぎねんは抱かれずに済むのに。


 二人の記憶が消去されている状態は、僕にとって、とても不便だった。


 学食に着き、券売機の列の最後尾に並ぶ。


 「俺は昼、プロテインだからな、先に行って、席を取っておいてやろう」


 懐からスチャッと、プロテインをシェイクする専用ボトルを取り出した椎名君は、そう言い残して列から離脱する。


パタタタ……スッ


 すると入れ替わるように、その空いた僕の隣に、スルリと一人の女子が滑り込んで来た。


 「あっ……」


 女子の顔を確認すると、その人は芹園さんだっだ。


 「あ、由比里くん……偶然だね?」


 肩が触れるくらいに、そばに並んだ芹園さんが、僕に微笑みかけてきた。


 「さっきはちゃんとお礼が言えなくて……その、改めて、助けてくれてありがとう」


 綺麗な瞳で、真っ直ぐ僕を見つめて、お礼をべた。


 (罵倒や文句じゃなくてお礼? ……それに由比里君って……)


 「……あ……うん。芹園さんに怪我がなくて、良かったよ」


 適当に返答しながら考える。


 (もしかして芹園さんも、僕がこのスカしたイケメンになったことで、態度を軟化させたのかな?)


 さっきは慌てていたので、自分の姿形が変化したことを失念して考えつかなかったが、芹園さんの態度を見ていると、その可能性が高い気がしてきた。


 一宮君、椎名君は[モテモテ][ハーレム]と評したが、実際には、女子の全員が手の平返しで、僕をチヤホヤしているわけではない。


 強い好意のこもった視線を送ってくるのは、体感では、女子全体の三分の一か、四分の一といったところだろう。


 これがアニメやゲームなどとは違う、リアルなイケメンの実像だった。


 もちろん、それ以外の女子の視線も、嫌悪的なものは皆無かいむになったが、彼女たちの視線は[好意]というより[好奇]に近かった。


(もしかすると、芹園さんもその三分の一の、手の平返し派の一人なのかもしれない)


 列がジリジリと進むなか、寄りそうように隣に立つ芹園さんを、チラリと横目で見る。


ぽっ……


 頬を赤らめた彼女と目が合い、慌てて二人同時に、目をそらせた。


 (って、いやいやいやっ! なに芹園さんと、ちょっと良い雰囲気になってるんだよっ! 違うだろっ!)


 ちなみに一宮君は、僕の後ろで、気配を完全に消している。


 「由比里くん、格好良くなってびっくりしちゃったわ……こんな短い間にダイエット成功するなんて凄いね。何か特別な方法でもあるの?」


 「えっ? うーん……特別っていうか……」


 (やっぱり、この話題は避けられないんだよなぁ……)


 「YouTubeの怪しげなダイエットを真似したら、なんか上手く痩せられたんだ。確か、シン・ナポリタン粥ダイエットっていう…………」


 もはやテンプレートと化した説明を繰り返す。


 「…………まぁ、今後はリバウンドしないよう、日々の食事に気をつけて、この体型を維持するよ」


 「へぇ、そうなんだ。それじゃあもう、特盛りナポリタンは止めるの?」


 「えっ!? ……うんっ。うんうんっ、そうだねっ。もう特盛りナポリタンなんて二度と食べないよっ。アレはカロリーの王様だからねっ!」


 (うわぁ、流れで変なことを言っちゃったよ……)


 「今日だって、ええとぉ……ヘルシーな山菜蕎麦でも食べようかなぁと思ってるんだ……」


 (ううぅ、本当は特盛りナポリタンをむさぼりたかったけど、仕方ない……)


 「……芹園さんは、なににするの? やっぱり焼きうどん、かな?」


 「えっ!? うん……ううんっ! 私も今日は、お蕎麦にしようかな」


 芹園さんは、いったん頷いてから、そう言い直した。


 「あの……やっぱり女の子が焼きうどん好きっておかしい……わよね?」


 芹園さんが、少し悲しそうに小首をかしげて、訊ねる。


 「焼うどん、子供の頃から好きだったけど、よく人から笑われて冷やかされるの……」


 「別に他人になに言われようが知ったことないわよっ! って、ずっと思って平気だったけど……」


 ちらり、と僕を見てから、顔を伏せた。


 「……やっぱり、私も焼きうどん、もう止めるわ……」


 芹園さんの話に、僕の胸が痛くなった。


 「いいやっ、全然っ、変じゃないよっ! 焼きうどん好きって、良いと思うよっ」


 僕は笑顔で親指を立てる。


 (その悲しい気持ちは、ナポリタンばかり食べて馬鹿にされ、笑われ続けた僕には、よぉぉぉぉーーーく分かるよっ!)


 芹園さんに共感し、彼女がとてもかわいそうに思えて、つい声に気持ちが入ってしまう。


 「止めることないよっ。女の子の焼きうどん好き、凄く可愛いと思うよっ」


 その時ちょうど、前がけて、僕の食券購入の番になった。


 (そうだ、山菜蕎麦って好きじゃないし、ここは僕も、焼きうどんを頼んじゃおうっ)


 思い立ち、券売機の焼きうどんのボタンを二回押す。


 そして出てきた食券の一枚を、芹園さんに手渡した。


 「はい、焼きうどんの食券。僕は芹園さんが焼きうどんを食べてても、絶対に馬鹿にしたりはしないって約束するよ。だから、安心して食べてね」


 励ますように、ニッコリと笑ってみせる。


 焼きうどんの食券を受け取った芹園さんは、ポンッと音がしそうなほどに、顔を赤くして、コクコクコクと小さく、何度も頷いた。


 (ふふっ、そんなに顔を赤くしてまで、焼きうどんを食べられるのが嬉しいんだねっ)


 芹園さんには、これからも堂々と、焼きうどんをむさぼってもらいたいものだ。


 焼きうどん好きだって良いじゃないかっ!


 ナポリタン好きだって良いじゃないかっ!


 偏食万歳っ!


 僕は脳内で、高らかに宣言した。


 …………そんな僕の後ろで、低身長の友人が、ニヤリといやらしく笑ったことに、この時は、気がつかなかった……

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