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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜  作者: 綿野草空希


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5.2 愛しい彼女とすれ違い2

ちょっとだけ、登場人物紹介

龍巳桜花 夏音の幼馴染で、意外と駄洒落が好き

青浜夏音 桜花の幼馴染で、駄洒落はスルーする

 「はあぁぁ~、へえぇぇ~、ほおぉぉ~……」


 一転して興味を覚えた青浜さんが、僕の周りをクルクルと歩きながら上から下まで観察する。


 「う~~~ん、確かに顔に少し面影があるけどさぁ……ちょっと急激すぎるだろぅコレ」


 かなり怪しんでいらっしゃる。


 「あのね、見た目には分かりずらかったけど、ちょっと前からダイエットしてて、結構、体重が落ちていたんだよ?」


 「それで、最後の追い込み的に学校を休んで、食事制限と運動を……」


 そんな補足説明を青浜さんにしていると……


「おはよう。一宮君、椎名君」


 長い黒髪を風でサラサラとなびかせて、坂道を上って来た龍巳さんが、朝の挨拶を友人二人にした。


 「おはよう、で、ごござる」

「おは……です。サ、サイドチェスト!」


 友人の一人は挨拶と、もう一人はボディビルダーのようなポージングを返した。


 「……あれ? 夏音ちゃん、どうかしたの?」


 まだ僕の周りクルクル回っている青浜さんを不審に思ったのか、首を傾げて聞いた。


 「おうっ桜花っ、大変だ。由比里が激ヤセして変になったっ!」


 ピタリと止まり、ビシリと僕の顔を指差す。


 「このスカし面が由比里らしい。ほら、口元にケチャップがついてるし」


 「えっ!? ……あ、確かに口元のケチャップは由比里君だね。顔立ちも同じだし。おはよう、由比里君」


 龍巳さんはそれほど、驚いた様子もなく、笑顔で挨拶してきた。


 「あ、おはよう、龍巳さん」


 「いやいやいやいやっ、普通に挨拶交わしてないで、もっと驚けよっ。不自然じゃないか? この変わり方はさっ。たくっ、あいっ変わらず桜花はのほほ~んとしてるなぁ」


 呆れながらも続ける。


 「何かさ、YouTubeを真似してダイエットしたら、こんなんになったんだって言ってるんだよ」


 青浜さんは、まだ少し引っかかっているようだ。


 ちなみに、中肉中背はまだポージングを続けているが、そっちには引っかからないようだ。


 「YouTubeのダイエット? 由比里君、あまり不確かな情報で無茶すると体に毒だよ? ほどほどにしてね」


 龍巳さんが心配そうな顔を向けてくる。


 「それと……はい、これで口元拭いてね」


 和風柄の綺麗なハンカチとポケットティッシュを差し出してきた。


 (あぁ、何時も優しいよなぁ、龍巳さんは……しかし、さすがにこのハンカチは汚せないよね……)


 「ありがとう。ティッシュを一枚、貰うね」


 ティッシュに手を伸ばす。


 「わととと……」


 坂道の途中で、片手で自転車を押さえることになったので、軽くバランスを崩す。


 「ふふっ、持っててあげるね」


 龍巳さんが僕の自転車を押さえてくれた。


 (あぁ、本当に優しい……)


 龍巳さんはこういう優しい人だ。


 だから痺れる憧れる。


 ついデレデレとだらしない笑顔を浮かべなが口元を拭く。


 「むっ……」


 強い視線を感じたので顔をそちらに向けると、青浜さんが腰に手を当てたまま、まるで観察するようにジッとこちらを見ていた。


 (あれ? 青浜さんの様子が……まだ変?)


 青浜さんは姉御肌と言うか面倒見が良い人なので、こんな時は龍巳さんより先に自転車を押さえてくれるような人だ。


 以前も僕が重い荷物を持ってフラついている時に、駆け寄って来て笑顔で手伝ってくれたことがある。


 しかし今はただジト目で見ているだけだった。


 「フロント・ダブル・バイセップス!」


 そして今、椎名君はポージングを変えたが、そっちはジト目でさえ見ない。


 口を拭き終わりティッシュをポケットに仕舞うと、青浜さんがツカツカと僕の直前まで来た。


 大きな瞳で真っ直ぐに僕の目を見る。


 「桜花にデレデレして……それに髪に整髪料なんてつけて……なるほど、ね」


 青浜さんは、はぁ~、と大きく溜息をついた。


 「由比里ってさ、無茶なダイエットをしてまで女にモテたかったんだな」


 素っ気ない口調だが、しっかり意思の篭った断言だった。


 「えっ!? いい、いやっ、別にそんなことはなくって……」


 その指摘は外れているのだが、よこしまな気持ちが無かった訳ではないので、ドキリとして口篭る。


 「あーはいはい、別にいいよ、言い訳とかしなくても。痩せて良かったな」


 僕の言い訳を遮るように、ヒラヒラと手を振る。


 「……結局、男なんか……あのアホ親父と同じだ……」

 

 良く聞き取れなかったが、何かを呟くと興味ないといった感じで、そっぽを向いた。


 「夏音ー、桜花ー、おはよー」


 その時、横を通りかかった二人組の女子生徒が、ちょっと遠慮がちに挨拶した。


 クラスメイトの桐山さんと摘花さんだ。


 「おーっ、春華、順子おはよー。おい桜花、行こうぜっ!」


 青浜さんは、見つけた女子にシュタッと手を上げて、僕を振り向くことなく、二人のところに走って行ってしまう。


 「それじゃあ、また教室で」


 当然、龍巳さんも僕ら三人に笑顔でそう言うと、クラスの女子の方へ行ってしまった。


 青浜さんのリュックについている[くまぽっちゃん]のキーホルダーは、今日はそっぽを向いていた……


 「……ねえねえっ! 凄くカッコイイ人と話して……あの人誰……」


 「なん……由比里がダイ……」


 「嘘おおおぉぉぉ!? あのキモ……由比里く…………」


 桐山さんと摘花さんはチラチラとこちらを振り返るも、青浜さんと龍巳さんは振り返る事なく、四人で校門をくぐって、行ってしまった。


ぽつーーーーーん……


 (あれぇぇ??? 想像していた反応と全然違ったぞぉ……)


 二人が一瞬で一目惚れしてくるのは、さすがに思っていなかったけど、もう少し、良い雰囲気になることを期待していた。


 (……もしかして、思ったほど、この顔は格好良くはないのだろうか?)


 辺りを見回す。


 「……ヤバいっ、めっちゃカッコよくない?」


 「……あんな人いたっけ……」


 「……凄いイケメン……」


 登校中の他の女子たちが、こちらを見て色々と話している。


 彼女たちの視線は、明らかに好意的なものだ。


 やはりこの顔は、世間一般では[イケメン]と評価されるものなのだろう。


 (うーむ……確かに二人とも元々、顔の良い男に騒ぐタイプではないけど、ここまで手応えがないとはなぁ……)


 龍巳さんは平常通りで、青浜さんに至っては前より冷たくなったような……


 「はっはっはっ、さすがの青浜殿も、由比里殿の激変ぶりには、随分と戸惑っている様子で御座ったな。はっはっはっ」


 なんだか、とても嬉しそうに一宮君が笑う。


 「いや、青浜嬢は俺のポージングのキレにトキメキを覚えて、戸惑っていたのだろう。ふふっ、これは恋の始まりかもしれんぞ……体を鍛え始めた甲斐があったな」


 ただの中肉中背の椎名君が、会心の笑みを浮かべた。


 「えっ!? 椎名君、今の会話のどこで、そう思ったの!?」


 一体、この友人の頭の中では、どんな脳内補正が起きたのだろうか?


 僕と一宮君は驚愕の表情で、中肉中背を見つめた……

…………

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