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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜  作者: 綿野草空希


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1.3 Computer Children2

ちょっとだけ、アイテム紹介 [くまぽっちゃん]

ひと昔前に流行った、クマのキャラクター。

「ぷくぷく」が口癖。

ぽちゃりしていて、なで肩。

 校門まであと少しだ……


 「オッスっ」

 その時突然、後ろから声をかけられ、背中をポポンと軽く叩かれた。


 パッと素早く振り向いた……つもり。


 と、そこには初夏の潮風にショートカットの髪を揺らす、綺麗に日焼けした女子が、笑みを浮かべて立っていた。


 瞬間、胸が高鳴る。


 「おっおはよう、青浜さん……」

 軽く言葉をつまらせながらも、挨拶を返す。


 この人は同じクラスの女子の、青浜夏音あおはまなつねさんだ。


 「由比里、一宮、椎名おはよう」

 そう言いつつ、黒目がちの大きな瞳をくりくりと動かして、僕らオタク三人を見渡しながら、前にぴょぴょんと飛び出した。


 その際、スカートが少し翻り、すらりと伸びた、日焼けした健康的な足が目に入り、さらに胸がドキリと鳴った。


 「おはよう……でござるぅ……」

 「おは……です」

 友人二人は、先ほどまでの饒舌じょうぜつさとは打って変わって、シドロモドロになりながら、なんとか挨拶を返した。


 とたんに口ごもってしまったのは、僕らがオタで、女子に免疫がないせいもあるが、この青浜さんは、校内美女ランキング(非公式)でトップ5に入る程の、スポーティ美人だという事実も大きい。


 運動神経抜群の青浜さんは、女子サッカー部のエース・ストライカーで、アンダー世代の日本代表に選ばれた経験もある、凄い人だ。


 得意なのはサッカーだけではなく、どんなスポーツでもハイレベルにこなす所から[マルチロールファイター]の異名を持っている。


 青浜さんは明るく気さくで、同性異性問わずに人気者なのに、大抵の女子が敬遠けいえんするオタクな僕らにも、普通に声をかけて接してくれる、素晴らしい人だ。


 「おうっ。三人共相変わらず、朝から不健康そうだなー……特に由比里、またお腹が出たんじゃないのか?」

 青浜さんはそう言って、僕のすぐそばに立った。


 間近まじかで見ると、サラサラの短めの黒髪の間から、耳の先がぴこんと出ているのが、なんか可愛らしかった。


 「このお腹は問題だなっ。少しは運動して痩せた方がいいぞっ! ていっていっ!」

 スポーツ万能、マルチロールファイターの青浜さんが、僕のお腹をポコポコとチョップをしてくる。


 もちろん、全く力を入れてないようで、痛くはない。


 「ふふっ……ゆっ・由比里殿はそろそろ、0.1トンの大台を突破しそうな、な、らしいで、御座るよ」

 横で見ている一宮君が、ギコちなくも余計な報告をする。


 「なっ、マジか!? とうとう100キロが見えたのかっ!?」

 青浜さんが外見によく似合った、明るく張りのある声で、驚きの声を上げると、大きな瞳をキョロキョロと動かして、僕の全身を眺める。


 僕は恥ずかしくなり身を縮ませる……顔が熱を帯びて、フッと眼鏡が曇る。


 制服も湿る。


 「おーーーーーーい、桜花っ、事件だっ! 由比里が100キロ超えそうだってさっ!」

 青浜さんが僕たちの後方に目を向け、楽しそうに手を振って声をかける。


 声につられて、僕らもそちらを振り向く。


 と、そこには和風美人といった清楚なたたずまいの、黒髪の乙女が、静々(しずしず)と坂を上って来るのが見て取れた。

 和風美人は、するりと僕らの前に立つ。


 「由比里君、一宮君、椎名君、おはよう」

 穏やかだが、透き通ったりんとした声で挨拶した。


 こちらも同じクラスの女子、龍巳桜花たつみおうかさんだ。


 潮風に流される長く艶やかな黒髪を、軽く手で押さえながら微笑んでいる。


 校内美女ランキング(非公式)ではトップ5に入る美人……いやNo.1との呼び声が高い人で、整った顔に、切れ長の涼しげな眼をしていて、すっと小鼻が通っている。


 龍巳さんの家は、腰越商店街にある老舗の和菓子屋さん(江ノ電もなかで有名な店ではない)で、時々、和服で接客している。


 さらに、市の弓道会に所属している(小動高校には弓道部が無いため)ので、和風のイメージが強い人だ。


 青浜さんも腰越商店街のそばに家があるそうで、二人は幼馴染になるそうだ。


 「おっおはよう、龍巳さん……」

 「おはよう……でござるぅ……」

 「おは……です」


 僕ら三人は、まるで先ほどのデジャヴのように、顔を赤くして目を泳がせながら、なんとか挨拶をする。


 「たっ龍巳さんも一緒だったんだね……」

 緊張しつつも話しかけてみる。


 「うん、下までは一緒だったのだけど、坂になったら夏音ちゃんが急に走り出したの。坂道をダーっとダーシュ」

 龍巳さんが、青浜さんを見て笑う。


 「あっははっ、あたし、坂道見ると、ついダッシュしたくなるんだよなっ」

 青浜さんが、龍巳さんの口から飛び出した、アレな駄洒落を完全スルーして笑い流し、軽い足取りで歩き出す。


 僕らも釣られて歩き出す。


 「て、それより、由比里100キロ超えの話だよっ!」

 青浜さんが僕のお腹を、ビシリと指差す。


 「ダイエットのために、次からあたしと坂道ダッシュするかっ?」


 「遠慮しておきます……膝が痛くなるから……」

 そう僕が答えると、青浜さんは[根性が足らんっ!]などと言って、またお腹を叩いてくる。


 それを見て、龍巳さんや椎名君達が笑う。


 「夏音ぇー、桜花ぁー、おはよー」

 五人で歩いていると、少し前を歩いていたクラスの女子達(桐山さんと摘花さん)が、こちらに気がつき、二人に声をかける。


 ……もちろん、僕らには挨拶なしだった。


 「おーう、はよー」

 青浜さんは女子たちにシュタッと手を上げると、弾かれた様に、そちらに走って行ってしまった。


 「それじゃあ、また教室でね」

 龍巳さんは笑顔で僕らにそう言うと、青浜さんに続いて小走りで前方に行ってしまった。


 「……ふう~、嬉しいけどちょっと緊張するね」

 汗を拭きながら、二人に話しかける。


 「うむ、我々は女子との接触が、極端に少ない生涯を送っているからな、戸惑うのも致し方なし、だろう」

 先ほどは、ほぼ喋らなかった椎名君が、同意する。


 「で、御座るなぁ。しかもお二方は、校内でも指折りの美形、嬉しいが肝が冷えるで御座るよ」

 一宮君も肯く。


 「美形なのに、拙者共をゴミ扱いせずに、気さくに話しかけてくれる稀有な女子……拙者共にとってはまさに天使……いや天女様で御座るなぁ」

 一宮君が、少し前をクラスメイトと歩く龍巳さん、青浜さんの背中を拝む。


 「うむ、世の女子共は青浜嬢、龍巳嬢を大いに見習うべきだ」

 椎名君も背中を拝んだ。


 「だねぇ……」

 僕も拝む。


 青浜さんが背負っている、通学用リュックについている、ぽっちゃりとしたクマのキーホルダーが、こちらを見ていた。


 正直に告白すると、僕は青浜さん、龍巳さんに淡い恋心を抱いている。


 そしておそらく、椎名君や一宮君も、同じだと思う。


 もちろん、向こうは僕らに恋愛感情なんて抱いて無いことは、女子に免疫のない僕らでも分かる。


 なので、告白どころか、アプローチをかけることさえしない。


 この気持ちは表に出ることも、報われることもなく、卒業後に、いつか消えていくのだろう……


 それでも僕ら三人は、顔を火照らせながら、今日も饒舌じょうぜつに二人を褒め称える。


 そうして、青浜さんと龍巳さんの、近くて遠い、眩しい背中を、目を細めながら眺めて、昇降口に入り教室を目指した……

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