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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜  作者: 綿野草空希


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24/45

3.5 C調言葉に気をつけて5

 上陸した江ノ島にはまだ人影がなく、ひっそりとしていた。


 そのまま自転車で青銅の鳥居を潜り、弁財天仲見世通りを走り上る。


キキィィィーーー……


 まだシャッターの下りている、海苔羊羹のお店の傍に自転車を置いて、横の狭い路地の中へ入る。


 「717129……」


 暗証番号を打って、アジト内に入る。


 「幾ら早朝とはいえ、街中で触手の化け物に変わっていたら、大変な騒ぎになるところだったよ……」


 とりあえず、最悪の事態は避けられ、ほっとする。


 続けて網膜と指紋の認証を行い、無事、男子更衣室に入る。


 室内には誰も居らず、ひっそりとしていた。


 「よし、このまま行っちゃお」


 一秒でも早く、Dr.ヘッドランドに診て欲しいので、ロッカーに鞄だけ放り込んで、戦闘員服に着替えずに、更衣室を飛び出す。


 走って、個人研究室に向かう。


ドン! ドン! ドン!


 「Dr.ヘッドランドっ! 居ますかっ!? 僕っ……戦闘員8712号ですっ、開けて下さいっ!?」


 焦る気持ちで、強めにドアをノックしながら声をかける。


 (あ、よく考えたら、こんな早朝に、Dr.が研究室にいるのかな?)


 ノックしながら、ふと、そんな考えが頭に浮かぶ。


ドン! ドン! ドン!


 (普通に考えたら、今頃は、自宅で寝ている可能性の方が高いよな……)


ドン! ドン! ドン!


 それでも、焦りから、わらにもすがる気持ちで、ノックし続ける。


ドン! ドン! ドン!


 「Dr.ヘッドランドっ! 居ますかっ!? 緊急事態なんですっ! Dr.ヘッドラ……」


プシュー……


 「何だぁ~? 夜這いなら要らないから、よそに行けぇ~~……」


 自動ドアが開き、同時に中から返答があった。


 (やったっ! Dr.がいてくれたっ!)


 僕は喜び、部屋を覗き込む。


 室内は、雑多な機械が怪しく点滅するのみで、照明は落ちていた。


 薄暗い部屋の奥から、さらに声が続く。


 「連日の徹夜続きで、もう死にそうだ。迎撃するのも面倒だから、その辺の機械を適当に弄って、勝手に自爆死してくれ。じゃ、おやすみ……」


プシュー……


 ドアが閉まりかける。


 「ちょっと待ってっ! 夜這いじゃないんですっ! 僕、一週間前に来た、戦闘員8712号ですよっ!」


 「急に体に異変が起きたんですっ! 診てくれませんかっ!?」


 閉まりかけたドアを体で強引に押さえると、安全装置が働いたのか、ドアが戻った。


 「戦闘員87……知らんなぁ。まあいい。男が朝に、体に異変を起こすのは、自然なことだ。私に頼らず、自分で何とかしろ~~。じゃあな~~」


 「そうじゃなくてっ!! 僕っ、一週間前に[試作型触手細胞怪人初号]に成り損なった戦闘員ですよっ! 体が凄い変化を起こしたんですっ!」


 僕は、勝手に半歩、室内に侵入しながら、雑多な機械の向こう側に叫ぶ。


 「んん? …………ああ、そんなのいたなぁ。あの失敗作君が、今さら変化だと? ……分かった。入れ」


 許可が出たので、すぐに機械の細道に体を通す。


 少し開けた場所に抜けると、丁度、白衣のDr.ヘッドランドがベット(僕がこの前拘束された診察ベット)から、むくりと起き上がるところだった。


 「ふあぁぁぁ~~~~。で、失敗作にどんな変化が起きたって? ライト・オン」


 音声センサーでスイッチを入れたのか、室内に明かりが点いた。


 ベッドに座った白衣の女性が、眠そうな目でこちらを見上げてる……


 アイマスクのしていないその顔には、見覚えがあった。


「ええっ!? 神城岬先生!?」


 緊急事態を忘れて、驚き叫ぶ。


 神城岬先生……神城岬悠かみしろみさき ゆう先生は小動高校の養護教諭……つまり、平たく言えば、保健室の先生だ。


 20代後半の美人で、結構巨乳な先生なのだが、保健室で煙草を吸ったり、ヘンテコな機械を製作したり、訪れた生徒に人体実験を試みたりと、担任のランス先生の次に困った先生として有名だ。

 

 ちなみに、僕と椎名君、一宮君は、密かに先生を[傍若無人ぼうじゃくぶじんなお姉さん]と呼んでいる。


 まさかDr.ヘッドランドの正体が神城岬先生だったとは……世間の狭さに驚く。

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